[短編小説]マスクの奥から 1話

あらすじ

田中涼太の親友であるれんが、ある日突然自殺を図って亡くなった。涼太はれんが亡くなった真相を知るべく学校に行っていると、突然人のマスクが透けて見えるという能力を持った。
この能力が示す意味、そして続々と出てくる謎に対して涼太は挑んでいく。


本編


時代の変化によって様々な物事が変わっていき、本当は起きなかった事まで起き始めている。

いつの間にか桜が散っていた頃、中学からの唯一の友人であるれんが高校の屋上から飛び降り自殺を図り、その日のうちに亡くなった。
この2週間、高校のクラスには全然なじめなかったが、隣のクラスにいるれんのおかげで毎日学校に行けていた。れんは自分と違って社交的で常に人の事を思いやれる本当にいいやつだったから、中学の時、一人で休み時間を過ごしていたこんな自分でさえも話しかけてくれた。最初はいい迷惑だと思って、あまり受け入れていなかったが、しつこく話しかけられるうちに似ている部分を感じ始め、僕はれんに気を許すようになった。初めてできた友達だった。だから、悔しくてしょうがなかった。
なんで亡くなったのか。本当に自殺だったのか。何かあったのならなぜ俺に知らせなかったのか。ただただ悔しかった。

そんな暗闇と絶望の中、自分は真相が知りたいという一心で学校にだけは行った。
学校の奴らは、れんの死を聞いてショックを受け、1週間ほどは重たい空気が流れたが、そっからあとは、みんな前を向いて普通の学校生活を送っていた。
自分はというと、もともと内気な性格なうえにこんな事が起きたので、当然クラスになじめる訳もなく、れんに出会う前の時のように、また一人教室で本を読む日々だった。本の内容なんか頭に入らなかったが、こうしていないと平常心を保てなかった。

そんなある日、いつも通り休み時間に本を読んでいると、なにか目に違和感を覚えた。花粉のせいでコンタクトがごろごろしたのだと思ったが、何か様子がおかしい。本の文字がかすんで見える。
ちょっとすると、目が激痛に襲われ、思わず叫んでしまった。痛みは数秒で治まったが、叫んだせいでクラスメイト全員が僕を見ていた。この一瞬でクラスでの居場所がなくなったと悟ったが、この目の激痛の正体が判明したとき、そんなことはどうでもよくなった。クラスメイトの顔についているマスクが透けて見えていた。何が起きたのかさっぱり理解できないのだが、マスクで覆われているはずのクラスメイトの顔がはっきり見えた。
慌ててその場を離れ、トイレで自分の顔を確認した。すると、つけていたマスクが透けて見えていた。ここで、なんとなく事の成り行きを理解した。
だが、ひとつだけまだ腑に落ちないことがある。
あのクラスメイトの顔が見えた一瞬、何人かのマスクは透けていなかったこと。
決して全員の顔が見えるわけではなかったのだ。





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