[短編小説]マスクの奥から 2話


親友の死から1ヶ月が経とうとしていた。

桜の終息とともに、儚く散っていった。
そんな桜の木も緑でいっぱいになった頃、僕はマスクが透けて見えるという超能力を持った。ただ、見えるからといってもよくある少年ジャンプみたいなものではないので、使い方がいまいち分らない。なぜ自分にこの力が宿ったのかすら分らない。
とにかく分らないのだが、一つ特に気になったことがある。それは、全員マスクが透けて見えるというわけではないということ。

そんなある日、僕は同じクラスの女子生徒に話しかけた。たぶん、女子と話すのはコロナが流行ってからしてない。いや、流行る前もした覚えはない。そんななかでも話しかけたのには理由があった。

「あの、、、」
「ん、、田中くん?どした!?」
「いや、、ちょっと聞きたいことがあって。」

この女子生徒、名前は堀岡みつ、といって僕や、れんと同じ中学なのでお互い顔見知りである。中学の時から人気者で成績も優秀。なにげに話したことはなかったが、高校に入り同じクラスになって少し雰囲気が変わったような気がしていた。

「なになに!?」
「いやさー、ちょっと変な事聞くかもやねんけど、堀岡さんってなんでこのメンバーといつも一緒におるんー??」
「おお笑、いきなりやな」
「ごめんごめん、ちょっと気になって。」
「いやいや別に全然大丈夫やけど、田中くんと話したことなかったから最初の話題がこれかって笑」
「たしかに笑。無理に答えんくて全然OKやから。」
「んー、なんで気になったん??」
「、、、たぶん言っても信じてもらわへんとは思うんやけど、、」
「うん。」
「マスクが透けて見えてさ」
「え??」

初めて人にこの超能力のことを打ち明けた。
堀岡さんは当然、こいつ何を言ってるのかみたいな顔でこっちを見ている。

「それで、えっと、いつも堀岡さんの周りにいる人たちだけマスクが透けて見えへんくて。」
「なるほど。」

僕がこんなにも勇気をだして話しかけた理由がこれだった。この能力を使ってでも、マスクが透けて見えない人たちがいると言っていたが、その人たちが堀岡さんといつも一緒にいる友達だった。

「んーとね、まあいっか。」
「??」
「んー、、ちょっとびっくりしたんやけど、実は私もマスクが透けて見えるんよ。」
「うそー!?まじで!?」

この能力はてっきり自分だけが持っているものだと思っていた。

「私も、私だけが持ってるもんやと思ってた。れん君以外は。」
「れん以外!?」
「そう、れん君はこの能力持っててん。」
「え、れんはマスクが透けて見えてたって事?」
「うん、いつからマスクが透けてたんかは分らんけど。」

僕は、堀岡さんが発するひとつひとつの言葉にただただ驚いた。自分だけではなく堀岡さんとれんがこの能力を持っていたこと。この事実がもし本当であるなら、れんが亡くなった真相に近づくヒントになる。
今自分が見えている景色が、れんが死ぬ前に見ていた景色。
この能力を持つとみな亡くなっていくのか、、、いやちがうのか、
いろいろなことが脳裏をよぎった。
ただ、一つだけ確かな事がある。
それは、堀岡さんはマスクが透けない人たちの周りにわざといるということ。堀岡さんもこの能力を持っているなら、そういうことになる。

「んじゃあ、いつも堀岡さんの周りにいる人たちが、マスクが透けて見えない人って事は知ってたってことやんな。」
「そう、知ってていつも一緒におる。」
「それはなんでなんー??透けて見えない人たちのそばにおったらなんか起きるみたいなー?」
「、、、私一回さ、れん君に助けられたんよ。だから、私もれん君と同じようにちょっとでも力になったらいいかなって感じでそばにおる。」
「マスクが透けて見えない人は、なんか体が悪いみたいなー?」
「いや、そういうわけではなくて、、、私も完全に分かってる訳ではないんやけど、、この能力を使ってもマスクが透けて見えない人は、重度の精神疾患を持ってたり、人の目を気にしてマスクを外すことに強い抵抗がある人なんじゃないかなって。」

やっと、この能力の全貌が分ったような気がした。堀岡さんがこの能力の正体に気づいた理由は分からないが、この能力を使ってもマスクが透けて見えない人たちは、なにか問題を抱えている人たちなのだろう。
でも、れんはなぜ亡くなってしまったのか、その疑問だけは消えずにいる。




スキとフォローお願いします!!








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?