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『休憩室の片想い』

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「休憩室の片想い」


”そこに見えたのは、栗色で艶々の髪だった。”


静かな休憩室。

天井から吊るされたビニールカーテン越しに、

ぼんやりと見えるシルエット。

黒のスーツをパリッと着こなした、

細身の女性は、黙々と読書をしていた。


同じフロアで働きながらも、話した事は

片手程しかない。

けれど、仕事中、

遠くからでもすぐに分かる、姿勢の良さ。

ピンと伸びた背筋と、力強い歩。

周りの人が少しおっとりした雰囲気だからか、

目立つ方(かた)だな、と感じていた。


とにかく、

クールでカッコイイ。


年齢は50代前半だろう。

落ち着いた雰囲気と、動じなさを感じさせる顔つきが、

彼女のキャリアと年齢を物語る。

華やかな顔立ち、とは少し違うけど、

茶色の瞳とエキゾチックな雰囲気が、

ゴージャス感を漂わせる。

パンツスタイルでもタイトスカートでも、

そんなにカッコよく着こなせるなんて「ずるい」。

同性目線の心の声。


いつもは、前髪もまとめての、一つ結び。

スッキリとした印象だけど、

わずかに弛ませた感じが、”イマドキ”で、オシャレ。

・・・そう、いつもは。



昼食のヨーグルトをスプーンでかき混ぜて、

興味のないふりをする私。

だけど本当は凝視したいくらい、気になって仕方がなかった。


肩の下まで自然に下ろされた、栗色の艶々の髪。

柔らかそうで、何より・・・綺麗だった。

でもそれは髪の毛の事だけではない。

本に落としたまっすぐな眼差しや、

わずかな休憩時間でいつも読書をしている彼女の知性。

どこをとっても、美しくて、

憧れる。



「今日は髪、結んでないんですね。」

なんて、

そんな他愛ない一言で良いから。


声をかけるチャンスが、

また来ればいいな、と密かに想う、

休憩室の片想い。


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こんばんは、すーこ、です。

今日は、詩です


仕事中、モチベーションが下がりそうな時は、

小さなときめきがパワーをくれるものです。

関係の進展を望むような相手では、全くありません。

それでも、素敵な人なので、

会話してみたいなぁといつも思っています。


今宵はシンプルに、今日の出来事を詩にしてみました。


あまり詩的なものはアップしてこなかったので、

気恥ずかしい気もしますが、

書くのは好きです。


最後まで、お読みいただき、

ありがとうございました。

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