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人生は50から! 信長公、アフリカへ行く 六十四話「舜天公から秘宝の話を聞く」


登場人物紹介

織田信長おだのぶなが: みなさんご存知、尾張おわり生まれの第六天の魔王。この神話×歴史ファンタジー小説のなかでは、本能寺の変で天使に救ってもらう。一般人、一介の冒険商人「小田信春おだのぶはる」と名乗り一番のお気に入りだった黒人侍弥助やすけをアフリカへ送り届ける旅を始める。

弥助やすけ: 本能寺の変でも、最後まで戦い、信長を守ろうとした黒人侍。気は優しくて力持ち。明智勢に捕まったが放たれ、その後は故郷アフリカへ信長とともにつ。

ジョアン/ジョヴァンニ: 没落する故郷ヴェネツィアでの商売に見切りをつけ、アフリカは喜望峰回りの航路を確立し勃興するポルトガルの帆船に乗って、はるばる日本へやってきた十七才の少年。宣教師ルイス・フロイスの依頼によって信長をサポートすることに。愛称「蘭丸」の名で呼ばれる。

助左衛門すけざえもん: 堺の港で頭角を現し始めた商人。ジョアンと同い年。この物語では、大商人、今井宗久いまいそうきゅうの弟子。海外への強い憧れから、信長たちと旅を始める。のちの納屋なやまたは呂宋るそん助左衛門。

ゴブ太郎: ひとに化けて船に乗っているうちに、日本へ迷い込んできた妖精のゴブリン。信長に「ゴブ太郎」の名をもらい、ともに旅をすることに。

天使ナナシ: 本能寺で信長を救い、その後も旅を見守って同行する天使。

六十三話のあらすじ

住むところを燃やされたキジムナーと村人が、すぐにお互いを認めて暮らすことはとても難しく。キジムナーは村人の「ふりむん(バカ)!」の罵声を浴びて沖縄を離れることになりました。しかしそこへ村の子どもたちがやって来て、彼らの秘密の場所へと連れて行きます。そこには、キジムナーの木、ガジュマルの小さな苗が植えられていたのでした。子どもたちの善意に感謝をし、この地が豊かな森になるころには、気が向いたら戻ってくる、とキジムナーは言いました。一件落着をして、信長公一行は舜天しゅんてん公の待つ円覚寺えんかくじへと戻るのでした……。

六十四話

信長一行が、沖縄を治める第ニしょう氏の菩提寺である円覚寺へ戻ると、舜天が人懐っこい笑みでふたたび彼らを迎えた。一行が事の次第を伝えると、舜天はうなずいて納得した、と告げた。

『キジムナーにも、そんな理由があったとはよー。うちなー、子どもたちが木を育てて、その木が大きくなるころには、わん一族と那覇の者も、切った分だけ森を育てるようにしておく。うちなーんちゅの約束さー』と、真摯なまなざしになる。

「お願い申し上げまする、舜天殿」

信長一行は、舜天のその言葉にキジムナーの木ガジュマルの森が育つ未来を、託すこととして、一件落着となった。

「舜天はん、おおきに。ほんで、ちょっと聞きたいんやけど……虹の竜を呼び出すための、世界の12の秘宝について、何か知ってることはおまへんか?」と助左衛門。
『虹の竜を呼び出すための、世界の12の秘宝! ……聞いたことはあるさー』
「ほんまでっか!?」
『その宝とは分からないさー。けれど、沖縄の島から台湾のほうへ向かったところにある石垣島いしがきじまというところに大きな洞窟があって、そこに昔のひとがたからを隠したという言い伝えを聞いているさー』
「なんと……これは、脈がありそうじゃのう!」

信長が子どものように目を輝かせる。

「良かったですね、上様。 行ってみましょう、石垣島へ」
「そうだ、ノッブ! 楽しみだな」

ジョアンと弥助も喜んだ。

『キジムナーのことで世話になったから、いいものが見つかることを願っているさー』

「おお、かたじけのうござる、舜天殿」

信長は舜天のはからいに感謝をした。

「えらいおおきに、舜天はん。そんでもって、俺らのあきないのことも、出来ればすこし、お話ししてもええでっか」

助左衛門が商売の話に持っていく。

『おー、日の本の焼き物を扱っていると聞いているさー、うちなーの交易品とすこし交換してもいいよー』
「わあ! 舜天さま、ありがとうございます」とジョアン。交渉の成立に、ふたりの少年商人はとても喜んだ。

円覚寺での話を終え、すこしの焼き物を、食料と水と、交易品の大陸から渡ってきた絹や陶磁器に変えて、一行は船に積み込んだ。

『ノッブ! 出港の準備は出来ているヨ! キジムナーにも手伝ってもらったから、うんとおいしいお菓子が欲しいナ』

西洋キャラック帆船「濃姫号」の甲板からひょっこりとゴブ太郎が顔を出した。

『ははは、公には頼もしい小鬼こおにの仲間がいるさー。このお菓子をあげるさー』と、見送りに来た舜天が良い揚げ物の甘い香りがする、包みを見せる。

『いい匂いだネ! ねえねえ、これはなあに?』とゴブ太郎はするすると船から降りてきて、舜天と信長たちのところへやって来る。甘い香りの包みに興味深々だ。

『サーターアンダギー、沖縄のドーナッツさー。沖縄の人間一同を代表して、わんがキジムナーにびるよー。ワッサイビータン』

『キジムナー、舜天公がすまない、と詫びていますよ』

天使ナナシが、船の奥に隠れていたキジムナーを呼んだ。甲板から恐る恐る顔を出し、舜天を見るキジムナー。

『……おいらも、ごめんなさい』

キジムナーも小さな声で、そう言った。

『もぐもぐ、このサーターアンダギー、とってもおいしいヨ! キジムナー、いっしょに食べよウ!』

包みを開けて、さっそくサーターアンダギーを口にしたゴブ太郎が、キジムナーのぶんも持って船へと戻っていった。

「それでは、舜天殿。世話になり申した」

『那覇の港へは、いつでも来たらいいさー。石垣島で世界の12の秘宝のひとつが見つかることを、わんも願っているさー』

信長と舜天はしばしの別れの挨拶をし、一行は石垣島へと出港した。

(続く)

※ 石垣島に秘宝がある、というお話は、この島にとても大きな鍾乳洞があることにヒントを得たフィクションです。

※ サーターアンダギーは、現代の沖縄の名物お菓子のひとつです。この物語では、おみやげやお菓子などは時空をよく超えることがあります(笑)

次回予告

石垣島へと渡った信長公一行は、鍾乳洞の探検をすることに。

どうぞ、お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーよりきよひこさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。

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