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最新デバイスをただならぬ使い倒し方するエンジニアいたわ

こんにちは!採用担当の海(@umi_moriizaki)です!

実は先日のXR勉強会で、Psychic VR Labサーバーサイドエンジニアの@kotauchisunsunが、INMO Airインモ エアというARグラスのレビューを共有してくれたんですね。

それが思わず「そこまでする!??」と言ってしまいそうになる内容で面白すぎたので、今回noteでもどどんと紹介しちゃいます!!!

結論「探究心ってやっぱ大事」という話。

XR勉強会 LT資料(by kotauchisunsun)

XR勉強会全体の様子はこちら

kotauchisunsunについて

Psychic VR Labサーバーサイドエンジニア。本人曰く「色々やってるPythonista」で、TypeScriptやクリーンアーキテクチャにも造詣が深い。
FaceVTuberの作者でもあり、個人でVTuberの講演も行っている。Qiita「刺され!技術賞アワード」にて著書が大賞を受賞。

■著書「サンプルコードで学ぶVRMメタバース開発」「REST APIのための自動テストの実践 アジリティのためのテスト・アーキテクチャ
■SNS:TwitterQiita




こんにちは。kotauchisunsunです。
今日お伝えする内容は私の主業務とは全く関係ありません。完全に趣味です(笑)

皆さんは「INMO Airインモ  エア」というARグラスをご存知でしょうか?中国INMO Glasses社から発売されているARグラスで、スペックは以下の通り。

世の中には徐々に色んなARグラスが出てきていますが、今日はINMO Airがそれらと比較した際に、何が違うのか?どこが良いのか?という点をお話していこうと思います。

最新ARグラスは続々と発売されてきている


結論、INMO Airは何がええんか??

まず挙げられるのは以下2点です。
1.完全にスタンドアローンなところ
2.単体でAndroidが動くところ

1.完全にスタンドアローンなところ

Nrealエヌリアルとか最近出てきているARグラスは有線のものが多く、屋外で持ち歩くにはケーブル取り外しが面倒だったり、ケーブル付けたままだと引っ張られる感があったりして不便なんですよね。

一方でINMO Airは完全にスタンドアローン。
多少の見た目のゴツさはありますが、とても手軽に持ち運びも操作もすることができます。


2.単体でAndroidが動くところ

INMO Airはスタンドアローンなだけではなく、CPUなどの基盤がAndroidと同じなんですね。だからこのグラス単体でスマホのような役割を果たすことができます。

スマホのようにアプリ操作できる


では同じくスタンドアローンで動くHololensホロレンズとは何が違うのか?というと、OS・価格・重さがそれぞれ異なります!

Hololensとの比較

ちなみに別のNreal AirというARグラスは45,980円で76gという、比較的安価で軽量でもありますが、スタンドアローンではありません。


つまりINMO Airは
完全にスタンドアローンで、単体でAndroidが動いて、軽量で、それが62,000円で買える。


※注:決してINMO Airの中の人ではありません



INMO Airの問題

めちゃくちゃ良いところが多いINMO Airですが、実は問題もありました。

実はINMO Air、公式に用意しているアプリしか動かないんです。
その上、Play Storeのようなマーケットアプリもないため、自由にインストールができないんです。

公式のは8つしかアプリがない


バージョン情報も連打してみたのですが、開発オプションが有効になりません。

adbが動かない


詰んだ

どうしよう。やりたいこと何もできない。

どうするか。


どうするか。




え?


ネットで色々調べて「頑張った」結果、開発オプションをオンにしてなんとか繋がるようになりました。

自分で調べてなんとかしてね。(当たり前だけど自己責任だよ)


アプリをインストールしてみたときの実際のグラスに映る画面をお見せするとこんな感じ。


やったー!

と喜びたいところなんですが、でも、結構泣きどころがありました。

こちら、これでアプリ入れ放題!!とはならないんです。
なぜなら、GooglePlay Storeが存在しないから。


一般的に「アプリダウンロードができるスマホにする」ためには、
・スマホメーカーがスマホを作る
・Googleから「Google Mobile Service」という認定をもらう
・Google Playからアプリをインストールできる
という流れが必要なんですね。

つまり、Googleからデバイスそのものを認定されないとPlay Storeが使えないんです。
これでは他の入れたいアプリのインストールができません。


ではどうするか?

結論、Amazonの「App Store」を使いました。
これはAmazonが出しているAndroidに対応したモバイルアプリケーションストアで、FireタブレットではGoogle Playの代わりにAmazon Appstoreが公式ストアとして利用されていたりもします。

こちらではApp Store自体のAPK(Androidにインストールできるアプリケーションファイル)が配布されているんですね。

これを使うことによってINMO Airでも以下のようなアプリの公式プログラム(バイナリデータ)がインストール可能になりました!

わーい



ここで改めて、INMO Airのよかったことをまとめ直すとこんな感じになります。

よかったこと

1.色んなアプリを動かすことができる
2.Alexaが動く
3.アプリ通知がINMO Air側に来る
4.カメラが使える
5.外の風景が見やすい


1.色んなアプリを動かすことができる

Amazon Appを使うことで、まあまあ実用的なアプリが動かせるようになりました。
うまいこと接続すると普通にINMO AirでZoom会議ができたりもします。

それぞれの利用画面


2. Alexaが動く

音声アシストが動きます。
ただWake機能(待ち受け時の「OK Google,◯◯して」みたいな操作)はできないのですが、スマホ版Alexaアプリで起動はできて音声コントロールもできます。


3.アプリ通知がINMO Air側に来る

メールやチャットなどの通知もIMNO Airの画面全体で見ることができます。見落としがなくて安心です。


4.カメラが使える

500万画素(2Kくらい)の画質で撮影することができます。720p 320fpsくらいの、このような画質。

実際のINMO Airの画像。文字も結構はっきり撮影できる


5.外の風景が見やすい

そしてこれが結構大きなポイント。INMO Airは風景が見やすいんです。
以下はNrealという他のARグラスとの比較なのですが、実はNrealとINMO Airは風景と映像の合成方法が異なります。

NrealとINMO Airの風景と映像合成方法の違い

Nrealは「バードバス方式」と言って、プロジェクタからの映像をハーフミラーで反射させて、またそれをさらにハーフミラーで反射させるという手法で、環境光が入りにくいという特徴があります。

一方でINMO Airは「反射ウェーブガイド方式」といい、中にある「導光板どうこうばん」という特殊な組織を介して外光を取り入れながらプロジェクタの映像が見られるという手法。これによって圧倒的に外の風景が見やすくなります。


ちょっとこんな透過率の実験をしてみました。

それぞれの透過率を比較する
断然INMO Airの方が透過率が高い

Nrealだと視界全体が暗くなってしまいがちなのに対して、INMO Airはほぼ一般的なメガネと同等の見やすさなのがお分かりいただけるでしょうか。

これについてはハーフミラーの特性が関係していて、ハーフミラーの「外の景色の見やすさ(透過率)」と「映像の見やすさ(反射率)」はトレードオフの関係にあるんですね。

参照:日本真空科学研究所

したがってNrealのバードバス方式は、ハーフミラーの特性に依存してしまい、見えにくくなっているのではないかと考えられます。


そもそも日本で使っていいの?

基本的に電波の発する海外製品を勝手に使うと罰せられます。いわゆる技適(技術基準適合証明)です。

INMO Airに関してはおそらく日本の輸入代行会社さんがクラウドファウンディングをした際に技適が通っていて、日本で流通しているものに関しては日本で使って全く問題ないと思います。

あとおまけに、

度付きレンズ作っているところもあります

ARグラスはレンズが特殊なので対応店が少ないのですが、大阪の尼崎にあるメガネSHOPアイさんでは6,500円〜9,900円で度入りレンズを作ってくれるしAmazonでも買うことができます。

こちらのお店は面白くて、Nreal LightやValveIndex、PICO4などに対応できる度付きレンズの試作とか、あとはQuest用の度付きレンズをふるさと納税で買えるように頑張ったりもしてくれている、結構変わったメガネ屋さんです。

今後ますます期待ですね。



一方でINMO Airにはまだまだ改善点もあります。

よくないこと

  1. UI操作がツラい

  2. ARcore非対応(たぶん)

  3. STYLYは起動しない

  4. まだ重たい


1. UI操作がツラい

Nrealが1920×1080pxなのに対してINMO Airの解像度は640×480pxしかないため、小さい文字は心眼で読む必要があります(笑)

また、画面の一部が焦点の具合で見えにくかったり、3Dofスリードフ(視界の動きや頭の傾きまでを感知する機能)でカーソルを動かすのですが、小さいアイコンがブレて押しにくかったり、誤タップしたりもします。

画像青く囲った部分はほぼ見えない

スマホ前提のデザインになっている感は正直否めなくて、まだまだ操作しにくいな、と思います。


2. ARcore非対応(たぶん)

ARcoreエーアールコアとはGoogleがAndroid端末向けに開発したARフレームワークです。

これはあまり検証ができていないのですが、INMO Airはおそらく狭義的には「ARグラス」というよりかは「HUD (Head UP Display)」のようなスカウター的な分類でなのかなと思います。

HUDの例

加速度センサー、地磁気センサー、ジャイロセンサーは存在しますが、頭の6Dofシックスドフトラッキングはできなそうです。

ARcoreもまたGoogleの認定が必要なので、簡単には使えませんが、開発元がうまいこと連携してくれればワンチャン使えるかなという感じですね。


3. STYLYが使えない

うちの他のエンジニアに「STYLYの公式バイナリくれよ」と頼んでAPK(Androidにインストールできるアプリケーションファイル)もらってきました。

試してみたのですが、インストールはできても真っ暗で操作不能になりました。
これもここからって感じです。


4. まだ重たい

冒頭に「軽い!」と紹介しましたが、INMO Airは一般的なメガネと比較するとまだまだ重たいです。

一般的なメガネより2.5倍ほど重たい

常時付けているとおそらく頭痛がしたり、首が痛くなる可能性はあります。



ここで改めて、各ARグラスの特徴をまとめてみました。

各ARグラスの特徴

※私の偏見も含みます。

Hololens2は空間認識あるし独立型だけど重い。
INMO Airは軽いし独立型だけど空間認識がない。
Nreal Lightは軽いし空間認識あるのだけど独立型ではない。

したがって、改めて整理するとこの本体重量・空間認識・独立型の3つの項目に関して、このようなトレードオフ仮説が成り立ちます。

おそらく現行の技術だと、このうち2つしか満たせない

 

素朴な疑問で、「じゃあGoogleからはARグラス出てないんだけ?」というと、2019年に「Google Glass Enterprise Edition2」というものが発売されています。

ですがARcore対応機種一覧には見当たらないため、Google Glass
もINMO Air同様、空間認識できないタイプだと考えられます。


改めて他の端末も含めて整理するとこんな感じです。

今回行き着いた仮説

少々長くなりましたが、今日の話をまとめます。

まとめ

・INMO Air買いました
・INMO Airはうまいことやるとadbが繋がって色々アプリが動く
・公式アプリをインストールするならAmazon App Storeが安心・安全・便利
・めっちゃ外が見やすい
・かなり軽い

・スマホアプリをそのままARグラスで動かすのはUI的に辛い
・INMO AirがワンチャンARCore動かねぇかなぁ・・・
・ARグラスのトレードオフ(3つのうち2つしか満たせない)
 →本体重量、空間認識、独立型

結論、

※注:繰り返しますがINMO Airの中の人ではありません。

ちなみに実際にメルカリやヤフオクでもINMO Airは出てたりしますが、ほとんどクラウドファウンディングで手に入れたものだと思うので新品はほとんど流通していません。

少しでも興味を持っていただいた方はぜひご連絡を。(中国へのツテを使ってちょっと直輸入頑張れるかもしれません。)

以上です。



kotauchisunsunさんありがとうございましたー!!!
ひとつのデバイスに対してここまで突き詰めて実験をされているのが素晴らしくて面白いですよね。(INMO Air欲しくなってしまった)


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