アイデアを出すコンテキストを見極める
仕事をしていると、他の人からアイデア(コメントや意見と置き換えてもいい)を出してくれと言われたことがあるだろう。
せっかく声をかけられたんだからと思い、いろいろと考え、意気揚々と自分のアイデアを伝えたところ、例えば仕事の場面だと「これは使えない」と一蹴された経験はあるだろうか?
あるいは、お客さまから「新しいことに取り組みたいから、自由に提案してほしい」と言われ、想像力の限りを尽くして持っていった提案に対して、「いやぁ、こういうのじゃないんだよね…」と言われて気まずい空気になった経験はあるだろうか?
自分自身も過去に何度もそういう気まずい経験をしたことがある。最近ではアイデアを出してもらう立場として、「いやぁ、こういうのじゃ…」と返すことも少なくない。
アイデアを出す側、出される側の両方の立場を経験して見えてきたのは、「アイデアを出すコンテキスト」だ。
これは、以前に自社のメールマガジンで書いた「図と地」の話しにも似ている話しではあるけど、ちょうどここ最近、立て続けに「いやぁ、こういうのじゃ…」とつぶやいた経験から、改めて書いてみよう。
「コンテキスト」とは何か?
出せと言われたから考えたのに、出したら出したでダメ出しされるというのは、気分がよくないのはわかる。
ただ、その気分の悪さにまかせて「気楽な感じで『出せ』って言われたから持っていったのに…」とか「自由に考えてくれって言ってたくせに…」と愚痴っているのであれば、それは危険信号だ。
見方を変えると、そういう愚痴が出るということは「アイデアを出すコンテキスト」を理解していないということになる。
コンテキスト(context)を『ウィズダム英和辞典 第2版』で調べてみると、
(事件・情報などの)背景、状況、環境
という意味がのっている。例文を見てみると、
discuss global warming in the context of fossil-fuel use
(化石燃料利用との関連で地球温暖化について議論する)
とある。
この例文を見るとわかるように、議論のテーマは地球温暖化だ。だからといって、地球温暖化についてであれば、何を話しても良いというわけではない。なぜなら、化石燃料利用というコンテキストが設定されているからだ。
だから、ここで「化石燃料はいいとして、肉食と地球温暖化が関係あるらしいぞ」という話しをすると、「いやぁ、そういう話しじゃ…」という反応が返ってくるかもしれない。
コンテキストは目に見えない
ここまでの話しを踏まえると、「アイデアを出すコンテキスト」というのは、その依頼をする人が持っているアイデアを使いたいと思っている背景のことだ。
いくら相手が気楽な感じで依頼をしてきたとしても、実はそこには何らかのコンテキストがある。
「いや、でもお客さんは本当に『自由に』と言ってきたんだ」と言い訳をしたくなるかもしれない。しかし、その場合の「自由」というのは、なんでもありの世界という意味ではなく、「その人が許容する範囲内という意味での自由」なのだ。
その範囲を決めるものは、そのお客さんの所属する会社や部署が決めているのかもしれないし、前年度のプロジェクトの内容かもしれない。あるいは、そのお客さん自身のリスク許容度が範囲を決めているかもしれない。
しかし、それは目に見えない。だから、聞くしかない。
上に書いたようなお客さんが置かれている状況から想像できる仮説をいろいろと考え、その場でいろいろと聞いてみる。
そうやって、お客さんや上司が無意識のうちに持っている(だからこそ厄介なのだけど)コンテキストを浮き彫りにし、そのお客さんがイメージしている「自由」の範囲を見極めるのだ。
もし、「いっつも、上司/お客さんは、自分のアイデアをダメ出しするんだ」と愚痴っているのであれば、この見えないコンテキストを見る練習をしてみよう。
■最後まで読んでいただき、ありがとうございました■
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Photo by Rodion Kutsaev on Unsplash
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