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インタビュアーのトレーニング【実践編】③~「詳細フロ」ーの作成と「シミュレーション」

以前に「インタビューフローとはいわば進行表である」と説明し、インタビューフローの実物をご紹介したことがありました。その時にご紹介したものとは別のものを以下再度ご紹介しておきます。

インタビューフローの実例

このようなものは、リサーチャー、インタビュアー、クライアントの中でインタビュー全体の流れを設計したり把握したりするために役立つのですが、しかし真面目なインタビュアーは別にもっと詳細なものを作成しています。それが「詳細フロー」と呼ばれるものです。以下は、かなり以前に私自身が作成して用いた詳細フローの例です。実際に使ったものをデータ化したものなので赤ペンやラインマーカーなどが入っていますが、これは俳優が台本に書き込みをするように、「本番」の直前まで推敲を重ねた跡です。

「詳細フロー」の実例

一般的なフローが「プログラム」や「目次」だとすると、詳細フローはいわば、インタビューの「台本=スクリプト」や「本文」と言えるものです。その中ではインタビュアーが口にする言葉がそのまま話し言葉として記述されています。このようなものを作成する狙いの一つは、インタビュアーが言葉遣いを一つ間違えただけでそこで対象者から発言される内容が変わってきてしまうので、その言葉を徹底的に吟味することにあります。また、複数のグループの間で、それぞれに与えられる「刺激」が同一のものでないとグループ間の比較ができなくなりますから、その刺激を同じものにしようとすることがあります。さらに、このようにスクリプトを推敲していく中で、余分な言葉をそぎ落としてわかりやすくすることも可能です。

しかし、最大の意義はさらに別にあります。

それは、このようなスクリプトを作成する過程でインタビュアーはそのような言葉遣いで話題を投げかけたり、話してほしいことを説明したりすることによって対象者がどのように反応するのかを事前に頭の中で何度もシミュレーションするということです。このシミュレーションはいわば「イメージトレーニング」となります。これを何度も繰り返し、さらに実査の本番でそのシミュレーションが再現されるのか、されないのかを次回のインタビューにフィードバックしていくということを繰り返すなかで、インタビュアーは実際の場数よりも多くの経験を積むことになります。そのような経験を積み重ねることで、「芸」が磨かれていくのです。

この「シミュレーション」には、インタビュアーが頭の中でイメージして行うものの他に、実際に周囲の同僚などに「模擬インタビュー」ということで話題をそのような言葉遣いで投げかけたときにどのような発言がされるのかを確認するという方法もあります。これは頭の中だけで考えることによってインタビュアー個人のバイアスがかかってしまったり、行き詰ってしまったりすることへの対策となります。

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