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インタビュー調査におけるインタビュアーの役割~「発言促進」⑤=「繰り返し・オウム返し」

調査対象者の発言中の単語やフレーズをインタビュアーがそのまま繰り返すこと、すなわちオウム返しは、その単語やフレーズについての発言をさらに引き出す効果があります。これは、対象者が抽象的な言葉を使ったり、調査している側が明確に定義できない若者言葉のような言葉を使ったりした場合に用いることが多いものです。

例えば若い人が最近使う言葉に「エモい」というのがあります。このような言葉については辞書的な意味合いというものを彼ら自身も明確に認識して使っているわけではないのですが、彼らにとって「エモい」は「エモい」であるわけで、そのような言葉が使われた時にはその「エモい」について彼らなりの説明をしてもらう必要があるわけです。昔の「カワイイ」というのも似たような言葉遣いです。これは後述の適宜確認においても行われるのですが、質問による適宜確認というのは対象者のナラティブの文脈を断ち切ることにもなりますので、できれば、その文脈の中でその言葉について別の言葉に言い換えてもらうとか、例示をしてもらうなどより詳しく話して欲しいわけです。

そのような時に間髪を入れず、少し首を傾げたりしたよくわからない様子でオウム返しをすれば対象者は自然にその話を詳しくしてくれるものです。例えば、

対象者「〜~~それがとってもエモいんです」
インタビュア「エモい?んですかぁ?」
対象者「はい。~〜~」

といった感じです。

つまりオウム返しとは、発言促進によって具体化や構造化のための適宜確認を同時に行おうとする技術と言えるわけです。

それは砂遊びで作った川に水を流しながら、その川の流れを一瞬堰き止めることでその流れを太くしようとするようなイメージです。流れてはいるけれども、今までに流れていなかった部分にも流れが広がります。この川の流れとはもちろん、対象者のナラティブの文脈です。太くなった部分が具体化、構造化された部分です。

しかし前回も触れましたようにそのときに間を外したり、対象者と息が合わなかったりするとその効果が出ません。その間や呼吸を捉えるのが難しいわけです。

それを容易にするにはリズムを速くしないことです。ゆったりとしたリズムだとその間を捉えるのも楽になるわけです。

しかしスベったからといって、他の方法で確認できれば大きな実害があるわけではありません。実査の中で恐れずにチャレンジしていれば、そのうちコツもつかめてくるかと思います。

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