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インタビュー調査のオリエンテーション①〜「状況把握」と「業界知識」のすれ違い

調査企画の根底には、「状況把握」があると述べました。また、それは「業界知識」ではないとも。

私の言うこの両者の違いは、「内在的」もしくは「主観的」であることと「外在的」もしくは「客観的」であることの違いです。例えば、「市場規模」や「業界順位」、「ブランド別シェア」、「商品・技術トレンド」などの情報は外からみた「業界知識」であって、データや現象として客観的なものであり、その市場の一般的な見え方です。一方、「自社が市場で直面している問題」や「社内事情」などはクライアントが置かれている個別の「状況」なのであって内在的であり、主観的でもあります。業界知識的には競合しているA社とB社は、当事者の意識では別に競合している状況ではないといったことはザラにあるわけです。

マーケティングリサーチャーが答えを出さなければならないのはその主観的な状況に対してです。つまり業界知識は無いよりもあった方が良い「かもしれない」のですが、状況把握の方は必須だということです。「かもしれない」というのはそれがあることがかえって不要な先入観や固定観念をもたらしてしまうこともあるからです。調査に必要な業界知識などはその時にクライアントに教えてもらえば済むことなのです。クライアントとして、調査会社や代理店などの「部外者」に知ったかぶりをされることほど不快なこと、不安なことは無いということに業界人は気づいていません。いくら部外者が付け焼き刃で勉強しても、プロには所詮かなわないのです。それよりも「教えて下さい」と熱心にそれを聴いてくれる方に好感を持つものだと思います。少なくとも私はそうでした。

ただし、クライアントがリサーチャーに不満や不信を表明する場合に、「業界知識をもっと勉強してください」と言うことはあります。しかしその真意は「私の状況をもっとよく理解してほしい」という意味なのであって業界本を読み漁れという意味ではないわけです。業界に内在している彼らにとっての「業界知識」という言葉はそういう意味なのです。

つまり、言葉の意味がすれ違ってることがあるわけですが、その意味が読み取れないリサーチャーは生活者の言語も読み取れないでしょう。そもそも一般的な意味での業界知識など、今の世の中、ネットサーフィンで即座に手に入ります。

さて、本来、その「状況」の共有の場が「オリエンテーション」です。ところが、それが機能しているのか?というところが問題です。

つづく

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