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Vol.9 最新の小売トレンド〜Micro-fulfillment〜

今回のテーマは、小売業界を刷新しつつあるMicro-fulfillmentについて取り上げます。

Micro-fulfillmentは、フルフィルメントの一種です。EC業界においては、ユーザーからの受注、商品梱包、発送、商品受け渡し、代金回収、カスタマーサポートといった一連のバックヤード業務をフルフィルメントと呼び、顧客体験の向上する上で重視してきました。例えば、古典的なEC事業者は、地方に大型の集中倉庫(フルフィルメント・センター)を持ち、数日かけて購入者の住所まで配送を行います。一方、Micro-fulfillmentは都市部に分散する店舗や、小型倉庫をフルフィルメントセンターとします。つまり、ユーザーは同日(30分〜数時間とサービスによって異なる)に商品を受け取ることができます。当然、ユーザーの利用するデバイスがPCからスマートフォンに移行したことで位置情報の利用が進み、このトレンドは一層強くなりました。

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※画像はZARA INDITEX Group Profile IR ページより引用

提供会社によって様々な目的がありますが、下記3つの目的が代表的なものになります。

1. オンラインから集客:スマートフォンの登場以降、消費者が地域の商品やサービスを購入する際に、インターネットを調べてから行動するのが日常になっています。インターネット上で店内の在庫を可視化するのであれば、そのまま、即配する(Micro-fulfillment)ことは珍しい発想ではありません。一昔であれば、メディアからコマースと認知と購買が分かれていましたが、徐々にコマース・アプリで直接情報を取得する消費者の割合が増えているので、地域ユーザーの消費者に店の存在を知らせるのにも有用性が高まっています。

2. オペレーションの効率化:古典的なECは地方の集中倉庫から都市部の顧客まで配送を設計しているので、当然無駄が発生します。また、ECでの流通が増加すればするほど、経済的な帰結として長距離配送コストも上昇することになります。Micro-fulfillmentでは、配送先の住所と店舗在庫の位置情報をスマートに管理して、同日配送を目指します。当然、出店計画もマイクロフルフィルメントセンターとしての店舗がカバーできるエリアを中心に検討するので、店舗間の顧客カニバリが少なくなります。

3. 顧客体験の向上:顧客体験の観点で、Micro-fulfillmentが提供する同日配送は、古典的なECのフルフィルメントと大きく異なります。何故ならば、フルフィルメントが翌日以降達成させると、消費者自身が受け取りを完了するのに努力を行う必要があります。例えば、受け取るのに自分の予定を調整したり、数日かけて届いて需要を満たさない場合の不安は、潜在的なストレスになっています。Micro-fulfillmentは同日配送によって、消費者が受け取りまでにかかるストレスを大きく軽減します。

これまでのnoteを読んでいただいた皆様はお気づきかもしれませんが、Micro-fulfillmentとBOPISは表裏の関係になっています。つまり、都市部にある店舗の在庫をデジタル空間上に表示するのであれば、店舗から配送を受けたり(Micro-fulfillment)、店舗に受け取りに行くことができたり(BOPIS)するのは、突飛な発想ではありません。既にこの2つのアイディアによって、世界の小売市場は刷新されています。では、どのように使い分けられているかというと、主に取り扱われる商品と、その地域の配送コストが関係します。つまり、より店舗で商品を体感したいものについてはBOPIS、よく知る日用品についてはMicro-fulfillment。人件費が高く、配送コストを売り手も買い手も負担したくない場合はBOPIS、逆であればMicro-fulfillmentといった具合です。

次号も引き続き、Micro-fulfillmentについて事例を混じえて紹介します。

繊研新聞にて連載がスタートしました。こちらも是非ご一読ください。
《小関翼スタイラーCEOのファッションテック考現学①》OMO時代の店舗の運営指標

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