見出し画像

イチローはなぜ美しいのか。整体の視点で考えてみる。

突然ですが、イチロー選手、美しいですよね。

美しく見える要因には、フォームが整っている・強い信念があらわれているなど、諸説あると思います。しかし、いずれにせよ、イチロー選手が美しく見えること自体には多くの人が同意するのではないでしょうか。

今回は私たちが共通して感じるイチロー選手の美しさについて、整体の視点から考えてみたいと思います。


私たちは「左右対称」を本能的に美しいと感じる

結論からお伝えすると、イチロー選手が美しいのはカラダが左右対称だから、というのが私の見解です。

そもそも左右対称とは、体の最も自然な状態です。それゆえに、体が本来持っている強さやスピードが最大化されます。

以前noteで体の「タテ」の自然な状態「まっすぐ立つ」と表現しましたが、「ヨコ」の自然な状態が「左右対称」とお考えください。

左右対称であることによって強さやスピードが出る例は、身の回りにも多くあります。寺院など古くから残る建物、飛行機・船・車などの乗り物は、ほとんど左右対称です。

また、人間を含む多くの動物は、左右対称である個体を「美しい」と感じる(端的に言えば「モテる」)ようになっています。おそらく、左右対称は最もパワーが出る状態であることから、本能的に優れていると感じるようにプログラムされているのでしょう。


右手で投げる人は右手ばかり鍛えてはいけない

それでは、なぜ同じスポーツ選手の中でも特にイチロー選手が美しいと感じるのでしょうか。

それは、整体の観点から言うと、カラダの左右を均等に鍛えているスポーツ選手は実は少ないからです。

一般的に、投げる・打つといった動作を伴うスポーツは、左右の利き手側だけを鍛えてしまいがちです。テニスやバドミントンなどをやっていて利き手の方が発達して長くなる、という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

ですが、実は左右の得意な方だけを鍛えても、体のパワーは最大化されません。それどころか、片側だけが強いと怪我の危険が高まります。

例えば右手でボールを投げるとき、体の右側の筋肉だけでなく、ストッパーとなる左側の筋肉もセットになって働きます。ストッパーが働くことで、投げた瞬間に体がバランスを崩して倒れてしまうのを防いでいるのです。

このとき、左側の筋肉が弱いと、右側が力を出しすぎないよう脳がストップをかけます。その結果、右側の力が最大限発揮されないのです。その状態を超えて無理に右側の力を出そうとすると、体がバランスを崩し、肩や肘の怪我につながります。

つまり、使うのは左右のどちらか一方だとしても、左右を均等に鍛えることが重要です。プロのスポーツ選手でも、この点を見落としている人は結構多いと思います。

私は整体師として20年以上、様々な人の体を診てきました。そのおかげで、街を歩く人やテレビに出てくる人のカラダのバランスが気になってしまうのですが、そんな私から見ても、イチロー選手は群を抜いて美しいと感じます。恐らく、全身を非常にバランスよく鍛えているのでしょう。優れたパフォーマンスを出せるのも納得です。

イチロー選手以外の例を挙げると、ダルビッシュ有選手は右利きですが、練習では左で投げることが多いそうです(14歳の頃からの習慣だとか)。歌手の郷ひろみさんは、50代になってから左利きに矯正し、長年の右利きによって偏った体のバランスを修正したといいます。一流と言われる人々の意識の高さからも、左右のバランスの重要性がわかると思います。


「左右対称」は意外と見落とされている

スポーツ選手や芸能人だけでなく、私たちの日常生活においても、カラダの左右のバランスはとても大切です。

整体の世界では、肩こり・頭痛・めまい・耳鳴りなどの不具合は、カラダが本来のバランスを失っていることによって引き起こされると考えます。逆に、体が本来のバランスを取り戻すように整えれば、様々な症状の改善につながります。

私たちは日常生活の中で少しずつ左右のバランスを失っています。利き手、利き足、バッグをどちらの肩にかけるか、服をどちらから脱ぎ着するか、どちらから自転車に乗り降りするか、などなど・・・。

このような細かい癖の積み重ねによって、肩や腰の左右の高さが変わったり、前後にねじれが生じたりします。私が街でみる限り、現代人のほとんどが、何かしらバランスを失った状態になっています。

試しに、あおむけになって目をつぶり、バンザイしてみてください。多くの人が左右均等にバンザイできないと思います(人に見てもらうといいでしょう)。また、目をつぶって歩くと、まっすぐ歩こうとしても左右どちらかに曲がってしまう人も多いと思います。

私の整体では、崩れたバランスを自然な刺激で均等(※)に戻していきます。バランスを整えることで、様々な症状が改善していきます。さらに、ダンスが踊りやすくなった、バイオリンが弾きやすくなったなど、一見関係のなさそうな場面でパフォーマンスが向上したという声もあります。

※厳密には、内臓の位置の問題から、完全な左右対称が最も自然というわけではありません。ですが、原則として、なるべく左右対称に近づけた方が望ましいと考えます。
ヒトの臓器は左右対称のものが多いですが、例えば肝臓は右側にあります。この肝臓の質量が大きいことから、人間の体は左側に向きやすいと言われています。左右の分かれ道でとっさに左を選びやすいのも同じ原理です。

これだけ重要な左右のバランスですが、実は、整体・鍼灸師などのボディワークの業界ですら、意外と表面的にしか理解されていません。

「左右のバランスが重要」と言うものの、体の片側に不調があった場合、そちら側を施術して終わってしまい、反対側がどうなっているかまで気にする人はあまりいないのが実態です。実際に、私も日本・中国・アメリカ様々な施術法を学んできましたが、左右のバランスについては諸説あります。

様々な知識を学び、自分の体も使って試した結果、私の場合はシンプルに左右のバランスを整える施術に行き着いています。


日常生活でバランスを整えるには?

残念ながら、現代の環境では、普通に生きているだけで左右のバランスが失われます。書いたりパソコンのマウスを触ったりする時間が多い人は、利き手ばかりを使っていることになります。

歩くなどの運動はバランスを整える上でプラスですが、今は道路が歩きやすく舗装されているので、昔ほどの効果は期待しづらくなっています。道がガタガタだった時代は、ただ歩くだけでも、体が倒れないようにバランスを取ることが求められ、無意識のうちに様々な動きができていたと思います。

このような生活環境そのものを変えることは難しいと思います。生活の中で自然にバランスを整えるには、あまり深く意識しすぎるのではなく、様々な動きを取り入れるのが一番です。

郷ひろみさんのように利き手を変えるまではできなくても、服の脱ぎ着や振り向く方向、自転車に乗る、食べ物を噛むときなど、左右のどちらかを優先してやっている動作があるはずです。それを、普段とは逆側からやってみましょう。違和感があれば、普段と逆にできている証拠です。これを、ストレスがたまらない範囲でやってみるのがお勧めです。

筋トレやストレッチなどの運動をするとき、左右のうち得意な方ばかりやりすぎないことも大切です。得意な側はさらに強化したくなる気持ちもよくわかりますが、バランスの観点から言えば、得意な側は抑えめにして苦手な側に合わせる方がいいです。

例えば開脚するとき、左右の開きやすさが異なる人は多いと思います。その場合、得意な方をさらに開こうとするのではなく、苦手な方に合わせて開きすぎないようにするのです。物足りない感覚があるかもしれませんが、その方がバランスが整って、結果的に高い柔軟性やパワーにつながります。


左右のバランスを改善できれば、体の不調の軽減につながり、スポーツや芸術をやっている人はさらにパフォーマンスを高めることができ、何より所作が美しくなります。まずは今日家に帰ったら、利き手ではない方の手で家のカギを空けてみてくださいね。

#イチロー #左右差#左右対称#左利き#整体
#伊丹市 #スタイル#整体師#姿勢#動かし方


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?