猫

バスに最適な動物は猫である

バスに乗っているとき、なんだか時間がゆっくり流れているような気がします。特に晴れた日のお昼の時間。せわしなかった現実社会から離れて、急にほがらかな連休のような感覚になります。

東京にいると、それがとても顕著です。バスと地上とのあいだにギャップがありすぎます。地上には若い人がたくさん歩いているのに、バスに乗ったら「ここは秋田か?」と思うくらいには平均年齢がぐっと上がります。おばあちゃまたちから方言が聞こえないのが逆にびっくりです。「じぇんこ」と聞こえてきそうな集団から「お金」と聞こえてきたりするで、二度見してしまいそうになります。

晴れた日のお昼のバスには、乗客をそんな柔らかい気持ちにさせる力があります。なんだか、猫になったみたいです。ゆらゆら揺られて、すこし眠さを帯びて、あくびが出そうなぽかぽかした空気が充満している。うん、間違いないです。あれは多分、猫の気持ちにかなり近いはず。バスは人を猫にさせます。東京じゃなくて、秋田の、猫。秋田なので秋田犬に引っ張られそうだけれど、犬ではないです。猫です。

ジブリ映画の超名作「となりのトトロ」には猫バスが出てきますが、バスにはまさしく猫がぴったりです。陽だまりで少し眠くなる感じ。私は圧倒的な犬派ですが、あれが犬バスだったらなんだか少し雰囲気が変わってしまうと思います。少なくともチワワなどの小型犬は絶対に違うはず。100歩譲ってゴールデンレトリバーかなあ。

秋田犬でもいいけれど、蝶々とか見つけたらすぐにキャッキャと寄り道してしまって務まらなそうです。それでも可愛いのだけれども、「いやごめん、モンシロチョウとか今いいからメイちゃん探して」とツッコんでしまいそうです。いかん。これでは、誰も幸せにならない。モンシロチョウではなくてクジャクヤママユだったら、「そうか、つまり君はそんなやつなんだな。」と納得してキャッキャさせておくかもしれませんが。

ということで、バスはやっぱり猫です。

という結論を出そうとして、はとバスの存在を思い出しました。なるほど、鳥類がありましたか。うかつでした。「バスに最適な動物は猫である」、脳内審議の結果、否決。判決は延期、期日は未定。


おわり

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