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日本人も無縁ではいられない「台湾は中国か?」問題

少し前ですが、こんなニュースを見ました。

集英社が出版する「アジア人物史」シリーズのウェブサイトで、李登輝(りとうき)元総統が「中国」の欄に記載されていることを受け、李氏の次女で李登輝基金会の李安妮(りあんじ)董事長(会長)は2日、「深く残念に思う」とする声明を発表した。

李安妮氏は現在世界が認知する「中国」は「中華人民共和国」のことだとした上で、「李登輝は『台湾人』である」と強調。「中国人」として分類されるべきではないと訴えた。また集英社に対しては同シリーズで李登輝氏を中国の人物とすることの妥当性の再考と、より事実に沿った歴史の記述を求めた。

上掲記事より

集英社のとあるWebサイトにおける台湾の李登輝元総統の扱いについて、台湾の団体から抗議が出たという話です。

元サイトを確認してみると、(離れていてわかりにくいものの)たしかに最後の年表のようなところの「中国」の欄に、李登輝氏の名前があります。

この抗議が出たのは11月初めのことなので、今になっても訂正がないということは、集英社側は特に対応をする必要なしと考えている、ということでしょう。

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この例はさておき、「台湾をどう位置づけるか」ということはいまどきの企業や、あるいは中国・台湾を相手に商売などをする個人にとって、無縁ではいられない問題の一つです。日本人であってもです。

それぞれの思想信条はさておき、言い回しや取り扱いひとつで抗議がきたり、場合によっては商売そのものに大きな支障が出る場合もあるからです。

多くの場合問題になるのは、上の例とは逆で、台湾を中国から独立した地域、あるいはひとつの国として扱うことによって中国側から何らかの抗議が出るというケースです。

大きなところでは、大手VTuber事務所のホロライブが中国事業から撤退するということがありました。これは同社に所属するVTuberが配信内で台湾を国であるかのように扱い、中国から猛烈な抗議を受けたことがひとつの原因と言われています。

ただ、この事件の詳細を見るとわかるのですが、「台湾を国であるかのように扱った」に該当する事柄としては、「配信内でYouTubeのアナリティクスのデータを紹介する際に、台湾が一つの項目として映り込んだ」というだけです。

その後の事務所の対応もまずかったという話もありますし、この件だけが原因で撤退ということでもないのでしょうが、別にタレント本人が「台湾は中国ではない!」と声高に叫んだわけでもないのにこれだけ騒ぎが大きくなるということからは、この問題のセンシティブさがわかるでしょう。

そのほか日本のコンテンツの例では、大ヒットドラマ『半沢直樹』では画面の背景に台湾の国旗が映り込んでいたということが中国の一部で騒ぎになっていた、ということがありました。

中国はコンテンツ販売の市場としては世界最大ですから、うかつな表現はできません。日本の市場がシュリンクしていくなか、当たり前に世界を相手に商売をしていかなければならないコンテンツ産業の人々の苦悩が偲ばれます。

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ところでもうひとつ、日本にいながらにしてこの問題に気を配らなければならない理由があります。

それは、なぜか日本人にもこの「台湾は中国か」問題を過剰に内面化し、無闇に怒ってくる人がまあまあの割合でいるということです。

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