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中国における「ブーム」としての反日と、「ジャンル」としての反日の話

気がつけば、処理水問題による中国での騒ぎが沈静化しています。

放出開始直後はメッセージアプリの日本人のアカウントに罵倒のメッセージが届いたり、ショートムービーアプリに日本への非難を思い思いの形で表現した動画が溢れかえったりしましたが、そういった動きはほぼ下火になったといっていいでしょう。

リアルにおいても、大きな動きは見られません。9月は中国的には「国恥記念日」とされるような愛国の機運が盛り上がる日(9月3日の戦勝記念日、9月18日の柳条湖事件の日など)が多く存在していて、今年は処理水に絡んで大規模な活動などがあるのではと見られていましたが、そういった話もいまのところ聞きません。

これから放出が行われるたびにまた盛り上がりを見せる可能性はありますが、一旦は落ち着いたというのが現状です。

中国の人々は、基本的に忘れっぽいです。あれだけ国民に強い負担を強いるものであたゼロコロナ政策も、もうとっくに忘却の彼方です。なぜみんなそんなに忘れっぽいのかと中国人に問うと、「中国は国も人もいうことがコロコロ変わるから、いちいちひとつのことを気にしている暇がない」などと言います。

切り替えが早いのはいいことですが、こちらは散髪に行くのにもビクビクしなければならなかったというのに、ここまでケロっと忘れ去られて何事もなかったような顔をされると、「そんなことなら最初から騒ぐんじゃねえよ」と思わなくもありません。

あと、政府がコロコロいうことを変えるのがわかっているのなら、そもそも政府が煽った愛国の機運にまんまと乗せられてるんじゃねえよ……と、こちらに住んでいる日本人としては文句の一つも言いたくなります。

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いっぽうで、日本に対するヘイトっぽいものが全く見られなくなったわけでもありません。

たとえば先日はサッカーのクラブチームチャンピオンシップの戦いで、浦和レッズが中国の武漢で地元のクラブチーム(武漢三鎮)と試合をした際、中国側のサポーターが日本のサポーターに向けて「バカ」(巴嘎)というコールを送ったり、一部は試合後に日本の国旗を燃やすなどしていたそうです。

日本人としては悲しくなるばかりですが、これもいまの中国における現実の一つでしょう。

スポーツの現場における日本人へのヘイトや嫌がらせというのはよく聞かれる話で、たとえば先日中国の成都で開かれた大学生の世界競技大会(ユニバーシアード)の開会式では、日本の選手団の入場の際に声援が止み、ブーイングが起きたという話があります。

まもなく中国の杭州では、アジア競技大会が開かれます。そこでも日本の選手が嫌な思いをしないかな、と少し心配です。特にこの大会にはe-Sports部門で個人的に応援している選手が出場するので、何事も起きませんようにと願うばかりです。

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処理水問題のような、特定のイベントによる反日の盛り上がりは、1ヶ月も経たないうちに忘れられる。いっぽうで、中国には常にうっすらとした反日の空気が流れていて、ちょっとナショナリズムが絡む場面(それこそスポーツの応援とか)になると、それがいつでも顔を出す。

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