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「口紅王子」炎上に見る、中国の潮目の変化

今日は中国関連のニュースからです。

「口紅王子」とも呼ばれるインフルエンサーの李佳琦氏が、ライブコマース中の発言で炎上したという話です。

氏はもともと百貨店の美容部員として働いていましたが、あるときからライブコマースに転向。自らに口紅を塗って商品の紹介をするというスタイルで人気を博し、一躍人気者になりました。氏のライブコマースには大勢の人が集まり、飛ぶように商品が売れます。

そんな氏ですが、今回の炎上では人々からの強い反感を買うことになりました。具体的には、彼の紹介する化粧品(花西子という、中国国産の化粧品ブランド)がどんどん高くなっている、というコメントへの反論の際にヒートアップしてしまい、余計な口を滑らせてしまった、ということです。

Twitter上に動画があったので、一部かいつまんで翻訳してみます。

どこが高いの? ずっと同じ値段だよ! 僕はブランドが始まった頃からずっと知ってるんだ。高いはずがないだろ!? そもそも自分のせいじゃないのか。(このブランドができてからの)長い間、給料が上がってないのか? 真面目に仕事をしてないんじゃないのか? 

氏はかなりヒートアップしているように見えます。また、最後のほうの物言いは決して上品ではなく、こりゃ炎上もむべなるかなという感じもします。

いっぽうで、あくまでも氏はスポンサーであるブランドを弁護する姿勢であり、自分とブランド側の結びつきや、値段が高くなっていないということをユーモアを交えて述べようとしているだけ、という捉え方もできなくはありません。

ともあれこうした発言は、毎日頑張って働いている一般の人(中国語では「老百姓lǎo bǎi xìng」などといったりします)を馬鹿にした発言と受け止められ、大きく炎上しました。ショートムービーアプリなどには、氏に対する批判の声明が数多くアップロードされました。

さすがにノーリアクションを決め込むというわけにはいかず、氏は謝罪に追い込まれました。

氏はライブコマース・インフルエンサーのなかでも、流行の最初期から今日まで人気を保ち続けてきた人です。過去にはライブコマース業界自体に税務調査の波が襲い、多くのインフルエンサーが「失脚」しましたが、その時にも氏はノーダメージでした。

また去年の6月には、天安門事件の前日に氏が戦車型のケーキをライブ中に映し出してしまい、配信が停止される(かの有名な「タンクマン」の映像を思わせるためではないかといわれています)という珍事も起きました。しかしその後も、数ヶ月の停止期間を経て氏は復活しています。

今回の炎上は、氏にとってどれほどのダメージになるのでしょうか。

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ところで僕はこの一件に、中国社会の潮目というか、価値観の変化のようなものを感じ取りました。

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