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日本語が怪しい中華コスメのサイトを、「中国人はいいかげんだなあ」で済ませられないその理由

突然ですが、こちらをご覧ください。

これは最近、日本に進出した海外コスメブランドの公式ページの、トップ画像の一つです。モデルさんはきれいですし、スタイリッシュなデザインではありますが、どうしてもキャッチコピー? の文言の「限らない美しさ」というのが気にかかります。たぶん「際限のない」みたいなことを言いたいのでしょうが、ネイティブならそうはならんやろ……という表現です。

このサイト、他の部分もおおむねこんな調子で、意味がわかるんだかわからないんだか微妙なラインの日本語がいっぱい溢れています。たとえば商品がソートされているページの最後には、こんな文言が。

「あなたは9の1-9を見ています。製品」とあります。「〇〇件中の〇〇を表示しています」ということだろうな、というのはわかりますが、あまりに不自然です。というか「製品」ってなんなんだ。フォントもなんか変だし。数字とそれ以外の部分がバラバラで情緒が不安定になります。

これは商品紹介ページから。「その翼は光の照射で、ラメのピンクがかった紫の色が出てくる」「まばたきをする時、目はまるで蝶が羽ばたく翼のようだ」……なんというか、本当に意味がわかるギリギリを攻めたような文章です。逆に書くのが難しいかもしれません。

以上、画像はすべてhttps://jp.perfectdiary.comより

チャット形式のカスタマーサービスがあったので、試しに「通販での商品の配送について教えてください」と投げかけてみたら、自動返信とおぼしき早さでこれが返ってきました。「おかかりいたします」「不安定さのため」など、ネイティブならまずやらないであろう間違いや言い回しが含まれています。商品紹介などはまだしも、実際のお客とのやりとりでこれはちょっとまずくないか。

……と、こんな調子でサイトのどこを見ても若干怪しめの日本語が溢れかえっているのです。おそらくは自動翻訳か非ネイティブの学習者に丸投げして作成し、ロクなネイティブチェックもされないままサイトがリリースされたのであろうことは、容易に想像できます。

実は超人気ブランドのサイト

ここまでお読みのみなさん、ひょっとしたら「ああなるほど、怪しい中華業者がまた日本に進出してきたって話ね。Amazonとかでこういうのよく見るもんね」という感想を抱かれたでしょうか。

残念ながら、そのような評価は正しくありません。この画像を引用したサイトは「PERFECT DIARY」(完美日記)という、中国発の化粧品業界の中では屈指の人気を誇る有名ブランドのものです。

中国ではどこにでも売っていますし、広告などもしょっちゅう見かけます。化粧品に一切の興味がない僕ですら名前を知っているレベル、というとわかりやすいでしょうか。

SNSやインフルエンサー(KOL)を最大限に活用したマーケティングによって人気を博し、まだ創立から5〜6年程度にもかかわらず、2021年の売り上げは約58億元(現在のレートで約1160億円)。日本製をはじめとした海外製品が圧倒的な中国の化粧品市場における、中国国産コスメ企業の雄と言っていいでしょう。

ちなみに今回が正式進出というだけで、日本にも販売網はすでに存在しており、その名は知られはじめているようです。特にSNS映えするパッケージングと値段のお手頃さ(プチプラというやつでしょうか。知らんけど)から、若い世代を中心に人気を集めているようです。

そんな、中国ではすでに有名ブランドとして人気と実績を確立しており、さらには日本でも人気を獲得しはじめている化粧品ブランドの、満を持して登場した日本向けの公式サイトが、「限らない美しさ」レベルの日本語なわけです。

このことを、みなさんはやはり「それだけの規模の人気企業でも、こんなふうに怪しい日本語のサイトを作ってしまうのか。やっぱり中国人はいいかげんだなあ」と思うでしょうか。

僕は、少し違った感想を持ちました。

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