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李克強前首相の訃報に寄せて。中国をめぐる想像力に気をつけて

今朝、李克強前首相の訃報という衝撃的なニュースが飛んできました。

まずはご冥福をお祈りします。

この訃報を受けて考えたことを、忘れないうちに書き留めておこうと思います。

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氏は前期の中国で首相にまでなった人物ですが、特にその任期の後半のほうには、存在感の低下がよく取り沙汰されていました。

習近平国家主席が個人への権力集中を強めていく中で、もともと派閥が異なり、政策に対する考え方も違う李克強氏が排除されていった、という見方が一般的です。

それは氏の属する派閥(団派と呼ばれる、党内のエリート組織の出身者で構成される派閥)が、2023年からの第3期の習近平政権において明らかに冷遇されていることとも整合的です。李克強氏自身も権力の中心から姿を消しました。

そのような背景で聞こえてきた、あまりに突然の訃報には、よからぬ想像をかき立てられてしまった、というのが本音です。具体的に言えば、政治的闘争の果ての暗殺のようなものの可能性を考えずにはいられませんでした。

ただ、すでに各方面から指摘されていますが、今回の訃報がそのような事態であった可能性は高くなく、誰にとっても不測の事態として起きたこととして見られています。また仮に何かしらの動きが背景にあったのだとしても、そんな「コト」が起きてから即座に情報が出回るわけもありません。

そもそも前述したように、氏はすでに政治的には排除された人物であり、きな臭い噂が出てくることを承知でこの世界からの「排除」を受ける必然性もあまりないように考えられます。

氏の訃報に必要以上の意味を重ねたり、それにまつわる不確かな情報に安易に飛びつくことには、慎重になったほうがいいでしょう。

中国語圏(特に中国の現体制をよく思わないグループの人々の間)には、すでに陰謀論に近いような有象無象の情報が出回り始めています。そのうち日本語圏にもその一部が染み出してくるかもしれません。

今後もこの件に関する情報には注意したほうがいいな、と思う次第です。

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中国で起こること、特に政治方面で起こることには不透明なことが多く、その内情があまり見えてきません。だからこそ、さまざまな想像が膨らんでしまう余地があります。

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