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中国語と日本語でけっこう違う、文章の書き方マナー

僕は仕事で中国人が書いた日本語の文章や、日本人が書いた中国語の文章を読むことがよくあります。それらを見ていると、お互いの文章を書くときのマナーというか、書式がごっちゃになっていることがあります。おそらくこのあたりは外国語を学ぶ時に見過ごされがちというか、体系立てて教えられることが少ないのでしょう(僕自身も誰かに教えてもらった覚えはありません)。

意味内容にはあまり影響しないかもしれない書式ですが、場合によってはネイティブに強烈な違和感を与えることもあります。また、これらは文章の読みやすさに直結するものです。これらの書式の違いは、もっと知られてもいいのではないかと常々思っています。

そこでこのnoteでは、それらの書式のうち、日中ともに間違いが見られやすいものについて紹介してみたいと思います。

段落の字下げ

まず、段落を変更するときの文頭の字下げについてです。日本語の場合1字ぶんの空白を空けますが、中国語の場合は2字ぶんの空白が必要になります。たとえば人民網の記事はこのように、2字下げで書かれています。

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これ、わかっている人が意外なほど少ないです。見てきた限りほとんどの日本人は中国語を書くときにも1字下げしかしていませんし、逆もまた然りです。これは、思ったより違和感があるので絶対にやめたほうがいいと個人的に思います。論文なんかでは一発でアウトだと思いますし。

  たとえば今、あえて日本語に2字ぶんの空白を入力してみました。どうでしょうか。めちゃくちゃ違和感があると思いませんか。
  ちなみに先程試しに1字下げの中国語文を入力して嫁に見せてみたところ、それほど気にはならないがやはり違和感はあるというとのことでした。

気持ち悪いので元の書式に戻します。ちなみに日本と同じく、中国でもWeb記事などの場合はそもそも字下げをしないで書かれることも多いようです(この記事も字下げなしで書いてます。note上だとこの方が見やすいがするので)

読点

日本語では基本的に「、」が使われる読点ですが、中国語でこの役割を果たすのは「,」です。いわゆるカンマ、中国語では「逗号dou hao」と呼ばれます。

これも,違和感を知ってもらうために,あえて日本語の文章にカンマを用いて書いてみることにします。どうでしょうか,何だか変な感じがしませんか。少なくとも,読みにくいと感じた人が多いはずです。

日本語でも論文などでは読点にカンマを用いることはありますが、その際は句点も「。」てはなく「.」(ピリオド)に置き換えられます。二つの書式を混在させるのはやっぱりやめたほうがいいでしょう。

ちなみに中国語では「、」の記号は別の用途で使われます。「、」は「頓号dun hao」と呼ばれ、ある言葉どうしが並列関係にあることや、列挙を表す時に用いられます。ちょうど先ほど引用した人民網の記事に「、」を使っている部分があったので再掲します。

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この中国語における「,」と「、」の明確な役割の違いというのも、意外と知られていないような気がします。

コロンとセミコロン

日本語の文章ではあまり出てくることのない「:」(コロン)と「;」(セミコロン)ですが、中国語では頻繁に出現します。

「:」は、前に総論を述べ、その後に具体的な事例を列挙ときなどに使われることが多いです。「例えば」や「つまり」のような語を伴うことが多い印象です。具体例を示すと、「很多中国人喜歓日本菜:例如寿司、寿喜鍋、天婦羅等等」(たくさんの中国人が日本料理を好んでいる。たとえば寿司、すき焼き、天ぷらなどだ)のように使います。

「;」は、文節単位での並列を表現する時に使われます。このあたりは中日翻訳者の明天会更好さんのnoteにわかりやすい例が書かれているのでそちらをご参照下さい。

僕が見ている中で多いのは、中国人が書いた日本語の文章にこの「:」「;」が用いられている例です。例えば「〇〇となる理由は三つある:一つは〇〇である;二つ目は〇〇である;最後は〇〇である」といった具合です。これらの記号を使う習慣が基本的にない日本語において、「:」「;」の登場はやはり強い違和感をもたらします。これももっと日本語学習者に知られてほしいと思います。

〇〇世紀〇〇年代

これは書式の問題ではなく表記法の問題かもしれませんが、近年の中国語ではたとえば日本語でいうところの「1960年代」を「20世紀60年代」と、世紀と年代に分けて書く傾向があるようです。

これも、中国人の学生さんが書いてくる日本語論文などによく見られます。意味はわかるし、そろそろ20世紀と21世紀を区別する必要があるというのもたしかに理解できますが、日本語においてはやはり「1910年代」「2010年代」とそのまま西暦を書くことが望ましいでしょう。逆もまた然りで、日本人が中国語文を書くときは中国式の表記に従うべきかもしれません。。

ただ、この表記については中国語ネイティブの間でも意見が分かれているようで、中国語版のWikipediaにはこの表記に関する議論のページがありました。

フォント

これも書式とは微妙に異なりますが、日本人、中国人ともに相手側言語のフォントに無頓着な人が多すぎます。日本語と中国語には漢字という共通項があるとはいえ、扱う文字には異なる部分がたくさんあります。

これだけ両国の交流が進んでいる現在でも、日本語文に中国語フォントを当てはめたり、中国語文に日本語フォントを使う事例のなんと多いことかと、いつも嘆かわしい気持ちになります。どうして全文をCtrl+Aで選択して、フォントを指定する程度のことがどちらの国の人ともできないのでしょうか。

この問題についてはすでに何度かnoteを書いています。

細かいことかもしれませんが、相手国のルールを知ることはそのままそれを尊重することにつながると思っています。こういう小さいところから相手との違いを知り、それを面白がったり、時には相手のルールに合わせることこそ、大事なのではないかと思います。

などと最後は無駄に熱い感じになって本日は終了です。それではまた


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