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中国語フォント崩れ問題を何とかしよう(掲示物・資料づくり編)

華村と申します。好きなフォントはヒラギノ角ゴシックです。

トップ画像のような貼り紙に見覚えがないでしょうか。中国人観光客の多い地域の小売店や飲食店などに見られる中国語の掲示ですが、フォントがバラバラでたいへん見栄えが悪くなっています。

また印刷されたものでなくても、WordやPowerPointなどで中国語を含むファイルをやり取りする時に、同じようにフォントが崩れてしまっているのを見たことがある人も多いと思います。

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個人的にこのフォント崩れはこの上なくダサく、この世界から一掃されるべきものだと考えています。この記事ではこのフォント崩れが発生する仕組みと、対処方法について述べていきます。

なぜこうなるのか?

この問題は、「中国語文に日本語用のフォントを指定してしまう」ことが原因で引き起こされます。その解説のために、まずコンピュータに文字が表示される仕組みから簡単に説明させてください。

コンピュータに表示される「あ」「A」「阿」などのそれぞれの文字にはすべて「文字コード」と呼ばれる、通し番号のようなものがついています。「A」という文字が入力される時、コンピュータは「(Aに対応する)コード〇〇番の文字を表示せよ」と命令しているわけです。

そして、その文字コードと合わせて「フォント」が指定されます。フォントは文字コードの番号をもとに対応する文字を引き出し、画面に表示します。

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しかし、全種類のフォントがすべての文字に対応しているわけではありません。例えば英字用フォントの中には、ひらがな・カタカナ・漢字は基本的に含まれていません。言い換えれば、フォントの種類によって「このコードの文字はわかりません」という場合があるということです。

その場合はフォント指定が適用されない、もしくは代替フォントが表示されることになります。

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前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

漢字にも一つ一つ文字コードが設定されているのですが、日本語と中国語のそれぞれの漢字を考える際に厄介なのが、両言語で文字コードが共通している文字もあれば、していない文字もあるということです。

例えば「欢迎光临」という中国語の文字列のうち、「迎」「光」は日本語にもある漢字で、文字コードも共通しています。一方、「欢」「临」は通常は日本語文の中では使われない漢字であり、日本語用のフォントの中には含まれていません。日本語用のフォントはふつう「欢」「临」の文字コードを知らない、ということです(「歓」「臨」というほぼ同じ役割をする漢字はありますが、形状が大きく違うためそれぞれ別の文字コードが割り振られています)。

つまり中国語文に日本語用のフォントをうっかり当てはめてしまうと、文中にフォント指定が適用される部分とされない部分ができてしまい、結果としてフォントがチグハグな文ができあがってしまうわけです。

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以上が、中国語のフォント崩れが起こるメカニズムです。他にもフォントのウェイト(太さ)などの要素が関係してくる場合もありますが、だいたいこの理解で間違いないでしょう。

防止するためには

では、これを防ぐためにはどうすればいいか考えてみます。

・中国語文には中国語用のフォントを指定する
ここまで見てきたように、この現象は中国語の文に日本語用のフォントを指定してしまうことが原因なので、中国語用のフォントを使えば基本的には解決できます。Windowsでは、設定から中国の言語パックをインストールすることで多くの中国語フォントが使えるようになります。Macでは最初から多数の中国語フォントが入っています。

Windowsの場合はゴシック体の「Microsoft Yahei」、明朝体の「Simsun」、丸ゴシックの「YouYuan」などが使いやすいでしょう。Macであれば「黑体」や「Kaiti」、変わり種では「Wawati」などが使えます。

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ただし中国語と日本語が混ざった文章が含まれる場合などは、それぞれの言語に別々のフォントをいちいち指定していくのは面倒です。また、資料の全体を見たときにフォントに統一感が出にくい、という問題も出てきます。 

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そこで、以下の方法が役に立ちます。

・日中両言語の文字を含むフォントを使う
AdobeとGoogleの共同開発による「源ノ角ゴシック(Source Han Sans)」というフォントがあります。これは日・中・韓の言語に含まれる文字をすべて統一されたグリフ(字体)で表示することを目的に開発されたもので、これを使っておけばフォント崩れもせず、簡単に統一感を出すことができます。

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うれしいことにフリーフォントになっており、手持ちのデバイスにダウンロードして自由に使うことができます。似た名前のものやダウンロード先がたくさんあるのでややこしいのですが、GitHubのこちらのページより、下記画像(ページ中腹より下)の赤で囲った場所のリンクからダウンロードすればとりあえずOK、という認識で大丈夫です。

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ダウンロードしてからの使用方法は環境によりけりですが、下記リンクなどを参考にしてください。

注意しなければいけないのが、こうして作った資料などをメールなどで人に渡す必要がある場合です。せっかく自分でフォントを用意して資料を作ったとしても相手先のデバイスに同じフォントが入っていなければ、フォントごと別のものに置き換えられてしまいます。

これを回避するためにはフォントをファイル内に埋め込む、画像として出力する、などの工夫が必要です。

おまけ:中国語フォントに含まれる日本語の文字

逆のパターンとして、日本語の文章に中国語用フォントを当てはめた場合も少し見ておきましょう。

実は中国語用フォントは日本語の漢字もカバーしているものも多く、日本の漢字にそのまま中国語用フォントを指定しても問題なく使える場合があります。

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「じゃあゴチャゴチャ言わずに、どんな時でも中国語用フォントを使えばいいじゃん」と思われるかもしれませんが、別の問題があります。中国語用フォントにはなぜかひらがな・カタカナも含まれており、これらのかな文字の形状や文字の配置が日本語のそれとは微妙に違った、違和感の強いものになってしまうのです。

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これらは中国の観光地や怪しいニセ日本製品の説明書などで見かける変な日本語のフォントと一致します。あのフォントは、こうやって出来ていたようです。

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(画像引用元はこちらの記事です↓)

日本の変な中国語フォントを追求していたら、中国の変な日本語フォントのメカニズムにもたどり着いてしまいました。

Webページ編は、また回を改めて…

ここまでお読みになった中で、注意力のある鋭い人ならお気づきになった点があると思います。

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このページの本文中にも中国語の漢字が出てきていますが、よく見るとそのフォントも日本語の文字と揃っていません。崩れています。ダサいです。これらは冒頭で述べたとおり、この世から唾棄すべきものと考えています。

ですがWebページ上でのフォント表示のルールはもう少し複雑(というか僕自身がまだよくわかっていない)なので、また記事を改めて書いてみたいと思います。とりあえず今回の記事はここまでです。

お読みいただきありがとうございました。

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