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中国版氷河期世代の未来を勝手に心配する

とあるX(Twitter)での投稿から、こんな言葉にたどり着きました。中国のSNS(微博)のインフルエンサー・ブロガーの書いたもののようです。

https://m.weibo.cn/detail/5013991623234131より

なぜいまの大学生は慌てて職探しをしないのか?
それは、資本家がすでにゲームのルールを「引きこもりで節約」モードに変えてしまったからだ。大学生が外に出て働くことで必要になる経費は、給料ではとてもまかないきれない。家でじっとしているのがもっともコストがかからないのだ。

こうした体験をしている人は少なくないだろう。

上記画像より、翻訳は筆者

経済的な意味でのゲームのルールを作っているのが「資本家」だというのがいかにも中国だなあというところに感心しつつ、これっていまの中国の若者の空気感を鋭く表現した言葉であるように思います。

「働いたら負け」のいまの中国

このマガジンも何度も書いているし、 すでにそこかしこで言われていることですが、いまの中国は空前の就職難で、特に若者には仕事がありません。「大卒即失業」ともいわれる厳しい就職戦線の中で、若者は就職を引き延ばして学歴を積み重ねたり、海外に出て行ったりしています。

そうした若者のほか、上の言葉のようにただ家でじっとしながら、状況が良くなるのを待つことを選択している若者も増えているようです。

実際、これはある意味では合理的な選択ではあります。不景気で企業が好条件を出せない、いまのような状態で就職してしまえば、そもそも労働者の立場が圧倒的に弱い中国のこと、過酷な労働を強いられたうえにキャリアアップにもならず、苦しい時間がいつまでも続くことになりかねません。

いまの環境で最初のキャリアを踏み出すことは、長期的には損だと考え、彼らは「引きこもり節約」を選択しているのです。

投資家的な考えを持つ中国の人々は、すでにその嗅覚で若いうちから「自分という資本をどのタイミングで、どこに投入するか」ということをよく考えているのでしょう。

加えて、中国も物価が上がったとはいえ、最低限の暮らしをするだけならまだコストを大きく抑えることができます。親の家に住み、10元(200円)に満たない朝ごはんを食べていれば、十分に日々を過ごすことができます。

いっぽうで外に出て働けば、上記したような厳しい労働環境に加え、社交だなんだと結局はお金がかかるし、人間関係のストレスにも苛まれます。さらに結婚だ出産だとなれば、かかるお金は天井知らずです。だったら、いまは家で無料のソシャゲでもしていたほうが割に合う。そう考える人が増えても不思議はありません。

かくて、いまの中国版就職氷河期世代は「働いたら負け」という意識のもと、モラトリアムとしての期間を伸ばし、家で「機を待つ」ことを選択しています。

本当に、それでいいのか?

——いっぽうで、あらゆる面で中国の20〜30年先を経験してきた日本と、そこにいた人々の姿を知るものとしては、「未来からの警告」ではないですが、本当にそれで大丈夫かねという心配も湧いてきます。

というのも、ここまで読んですでに感じている人もいると思うのですが、こうした若者の雰囲気ってたぶん日本のバブル崩壊後からその後の10年くらいのそれに、あまりにも似通っているのですね。

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