四十数年来の相棒
なんの機能もない、なんの変哲もないシャープペン。
元は、かわいらしいパステルカラーの猫のイラストが描いてあったけれど、それもこすれて消えてしまい、今は真っ白になってしまった。
この子について語れる日が来るなんて!
小学校2年生のとき、団地の子供会のクリスマス会に参加することになった。当時、いくらだったかはっきりと覚えていないけれど、ひとり500円程度?のプレゼント用意して、当日プレゼント交換をすることになっていた。
父とふたりで、プレゼントを選びにいくことになった。
人にあげてしまうプレゼントだから、何を買っていいのかよく分からないまま、値段で探していたような気がする。
水色とピンクのシャープペンのセットが、ちょうど金額に合っていたのだと思う。パステルカラーの猫のイラストもかわいくて、まだ自分のシャープペンを持っていなかったので、「人にあげないで、自分のにしたかったな」と思った。
プレゼント用に包装してもらって、「でもこれ、自分のにはならないんだよなあ」と、なんだかしょんぼりした気持ちで家に帰った。
クリスマス会の当日、持ってきたプレゼントは会場に入ってすぐに係のおばさんに渡した。大きなサンタの袋のようなところに、入れられてしまった。
「あ〜あ、素敵なシャープペン、さようなら」と思った。
クリスマス会では、きっといろいろとイベントがあったのだろうけど、なにも覚えていない。
いよいよプレゼント交換の時間になって、プレゼントの入った大きな袋に手だけを入れて、ひとつだけ取ることになっていた。
誰が私のあのシャープペンを持っていってしまうのか、気になって仕方がなかった。
私の番は比較的早く来たような気がする。それまで、誰も私のプレゼントを引いた人はいなかった。
私も手を入れて、箱をひとつつかんで袋から出した。
それが、私が用意したプレゼントだった!
「やった!!」と内心で大喜びした。
子供会のおばさんが「それ、自分で持ってきたやつじゃない? 交換しなくていい?」と聞いてきた。
「いいです!!」と私は即答した。
まさか、本当に欲しいと思ったプレゼントを自分で引き当てるとは思いもしなかった。
プレゼントを手に、喜び勇んで家に帰った。
「お父さんに買ってもらったの、自分で引いたの!!」
父は「なんだ。自分で取ったのか」と笑っていた。
それ以来、そのシャープペンをずっと使い続けた。
絵柄がだんだん薄くなってしまっても、使い続けた。
今まで、いろいろなシャープペンを買って使ってきたけれど、これほどシンプルで、壊れなくて、使い心地がいいものには出会えていない。
失くしたくなかったので、学校などには他のシャープペンを持っていっていた。だけど、高校生か大学生くらいのときに、ピンクのほうを失くしてしまった。外には持っていっていないから、家の中で失くしたのだと思うけど、結局見つからなかった。
今、水色のほうのシャープペンが、まだ私のペンケースに入っている。
子供たちが私のペンケースからシャープペンを使おうとするけれど、「他のはいいけど、そのシャープペンは使わないで!」と言い含めてある。
子供のときにシャープペンを見たときのキラキラした光景、
でも、これは自分の物にはならないんだというすごく残念な気持ち、
そして、自分で引き当てたときの喜び、
それが全部、この1本のシャーペンを見るたびに思い起こされる。
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