なぜ日本は衰退したのか?
開国後の日本
日本は開国後,欧米列強諸国に追いつくべく,富国強兵に邁進しました。そして遂に,1905年,日露戦争に勝利。ちなみに,当時のロシアは,イギリスと世界覇権を争う超大国でした。
イギリスの支援があったにせよ,東洋の小国(極東の島国)が大国ロシアに勝利したのです。白人至上主義の時代にあっては,革命的な事件でした。
しかし,アメリカ・ロシア・イギリス・フランスに並ぶ五大国の座を手に入れた日本は,この時から傲慢になりました。そして,次々と同盟関係を破棄。最後には,四面楚歌となって敗戦しました。
敗戦後の日本
日本は敗戦後,超大国アメリカに追いつくべく,経済発展に邁進しました。工業化と高度経済成長の実現。そして遂に,1968年,日本は世界二位の経済大国になりました。いや,事実上,世界のトップに立ったといえるでしょう。なぜなら,時価総額上位10社のうち7社が日本企業であり,主要産業である自動車市場と半導体市場を牛耳っていたからです。
しかし,経済大国となった日本は,この時から傲慢になりました。そして,工業化経済から情報化経済への大転換を軽視。バブル崩壊も相まって,日本経済は長期的な低迷期に入りました。今や「先進国中,唯一経済成長しない国」に落ちぶれたのです。実際,時価総額上位10社のうち日本企業は皆無であり,トップ企業のトヨタでさえ31位のあり様です。
AIではアメリカに遅れをとり,EVでは中国に遅れをとり,さらに急激な貧困率の上昇に見舞われています。原因は,政府の社会主義的政策とIT化の遅れです。世界各国が自動運転に舵を切る中,日本は未だにライドシェアさえ実現していません。
日本衰退の根本原因
日本は,トップに立つと凋落する傾向があります。なぜでしょうか?答えは簡単です。トップであり続けるためのヴィジョンがないのです。哲学的に申し上げれば,ユートピア論が存在しないのです。ユートピアの原語は,ギリシャ語の「ου τοπος(ウー・トポス)」であり,「どこにもない場所」という意味です。多くの功利主義的な日本人は,ユートピア論を軽んじるでしょう。しかし,どこにもないほど壮大な理想があるからこそ,民族や国家は絶え間なく前進し続けるのです。
古代ユダヤには,預言者エゼキエルのユートピア論がありました。古代ギリシャには,哲学者プラトンのユートピア論がありました。イギリスにはフランシス・ベーコンのユートピア論が,イタリアにはカンパネッラのユートピア論が,ドイツにはヘーゲルのユートピア論がありました。しかし不思議なことに,日本史には,ユートピア論を唱えた思想家が全く存在しないのです。不均衡動学理論を提唱した経済学者・宇沢弘文が嘆いたように,この国には理想国家のヴィジョンが存在しません。
国家的な理想がないから現実を定点観測することができず,現実を直視できないから戦略に欠け,戦略に欠けるから枝葉末節な戦術に走る。その結果として,手先の器用な職人国家に堕してしまったのです。
日本の再生に必要なのは,宗教から経済まで網羅した壮大な国家ヴィジョンです。大きな風呂敷を広げられない民族に,世界史的使命は果たせません。
以下は参考書籍です。
① 日本社会の病理について
② 文明の方向性について
③ 日本の預言者・内村鑑三の警告
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