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超長期視点で、全員が幸福になる ”ステイクホルダー・キャピタリズム”

出典:Stakeholder Capitalism, Klaus Schwab

ステイクホルダー・キャピタリズムってなにか?の理解を深めるために、それがどういうもので、自分が推奨したいものなのかを考察しました。英語の本でとっかかりにくかったので、私と同じく初心者のかたの参考になればとnoteを書いています。

ステイクホルダー・キャピタリズムとは

『Stakeholder Capitalism』では、現代の、株主資本主義と国家資本主義に代わる、より永続的な第3の経済システム、「ステイクホルダー資本主義」を提唱する。従来型の資本主義は、多くの富や繁栄をもたらした一方、環境破壊や、持てるものと持たざるものの二極化といった社会課題ももたらした。こうした課題を解消できる、かつ、より持続性の高い経済システムが、ステイクホルダー資本主義である。
この経済システムの中心をなすのは企業である。従来型の資本主義では企業は株主、または国家の短期的な利益を最適化してきた。ステイクホルダー資本主義では、企業は、すべてのステークホルダーと社会全体のニーズに対して、長期的な価値創造を追求することが求められる。全ての企業が、あらゆるステークホルダーを考慮に入れて、それぞれに長期的な価値創造をするという資本主義の形なのだ。

ステークホルダーの中心は企業。出典: Schwab、機械工学における現代の企業管理、1971 年


ステイクホルダー資本主義のいうステイクホルダーとは誰なのか。
大原則は、地球環境と人々の幸福である。もはや宗教のように聞こえてくるが、企業活動はいまやグローバルで行われていて、地球環境に悪影響を及ぼすことは未来も含め全てのステイクホルダーにとってマイナスに働くことから、全ての活動において地球環境を考慮することが必須だからである。また、人々の幸福とは、well-being という言葉から理解したものなので、人々の健康、福利と捉えるのがいいのかもしれない。いずれにせよ、全てのステイクホルダーの構成員や関わる人々が幸福になることでないのなら、彼らに関わる人々、ひいては全ての人が幸福になることはできないからだ。ここからが本題だ。地球環境と人々の幸福を最適化できるのは誰か。それがステイクホルダーである。政府、民間団体、企業、国際団体の4つである。どれが弱くてもダメで、全てきちんとそれぞれの役割を全うすることで相互作用が働き、より良い世界、つまり最適な地球環境と人々の幸福を実現するのである。

それぞれの役割というのは、地球環境と人々の幸福を核に据える以外には、従来の資本主義と同じ概念である。
政 府 | 最大数の人の富と繁栄を追求し、域内の立法権限をもつ。域内のステイクホルダーが進む方向性を示すのも、機会の質、公平性を担保する役割を担う。
民間団体| NPOから、さまざま活動団体、学校、ジムまで、ありとあらゆる団体がそれぞれの目的を求めて活動する組織である。使命や目的に応じて、地域社会、政府、企業、構成員に働きかける役割を担う。
企 業 | 個人の小さなものから、世界的な大企業まで、それぞれの長期的な目標に向かって、営利を追求する。
国際団体| は国連やOECDなど国を超えて協働する組織団体で、平和維持を目的とする。

地球環境や幸福といった超長期目的が加わったところで、世界はどう変化するのか、そもそもどうやって機能するのか。全員が、地球環境と人々の幸福にコミットすること。そのために、国際団体は多くの国々を巻き込んで、全世界共通の目標を定める。その目標に向けて、政府はそれぞれの国の事情を鑑みて、実現方法を計画し、規制緩和や税制、補助金などを機能させる法整備をする。その枠組みで最大限の営利追求をする企業と、企業や政府の意思決定に働きかける民間団体という4つのステイクホルダーが互いに役割を全うし、相互作用することにより、地球規模で資本主義が機能するのである。全てのステイクホルダーがきちんと機能すればするほどより良い結果を生み出す。どれかが機能しなければ、全体も機能しないシステムである。

全員が共通の目標に向かっていると信じ合えること、フリーライダーがいないことが大事である。そのためには、4つのステイクホルダーは、まず、それぞれの構成員やそれにより影響を及ぼす人々の意見を公正に聞き取ること、その上で、超長期目標に通じる最適解としての固有の目標をコアメンバーが決定し、明確な数値目標を掲げる。目標に向けて、全てのステイクホルダーがそれぞれの形で邁進していくことで、ステイクホルダー資本主義が機能する。

考察

私の理解では、ステイクホルダー資本主義の機能の仕方は企業経営と同じに思えてくる。TOPが方向を示し、資源配分し、ミドルが流れの調整をする。より上流側にいるのが国際団体、政府で、企業、民間団体が続く。もちろんステイクホルダー資本主義には、明確なヒエラルキーはないし、複数国で活動する民間団体も、全世界的に経済活動を展開する企業の力たるや…と思うと説明しづらくなったりする。ただ、私はこの理論が好きだ。第一に既存の資本主義よりも、理想的な世界になりそうと感じられる。第二に、まだ実現の試行錯誤の段階とはいえ、パリ協定やSDGsのように、実現可能性を感じられる事象もある。第三に、コロナウィルスや地球温暖化のような現代の課題、移民問題、戦争、Google・Apple・Meta・Amazonのもたらした課題など、国家レベルで争っても仕方ないことだらけの世界を既存の経済システムが想定していたと思えないからである。書いてみると凡庸な意見だ。
つまり、結局は、なんとなくステイクホルダー資本主義が好きなのである。この本を理解するのに1ヶ月くらいかかり、こんなに長々と書いた挙句に、好き嫌い論…と自分にがっかりしたくなるレベルだ。地方の中小企業で働く私は、地域の環境、つまり地球環境に良いことをしながら、どうやったら利益を上げられるかに真剣に取り組む自分の会社が好きである。この本を読んで、やっぱり地球環境に良いことをするのは大事で、中小企業みたいなマイクロレベルですることが、地球レベルで環境をよくすることに通じるはずだと妙な納得をした。楠先生の『「好き嫌い」と経営』を読み返したくなってきた。

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