"ほしい未来"を言葉で描く「MOYAMOYA研究」をOSAKAしごとフィールドでやってみた〈スライド公開!〉
こんにちは、勉強家の兼松佳宏です。
ここ最近ずっと勉強家展の方に頭が持っていかれていたのですが(それはそれでとても幸せな時間でしたが)、2020年1月は「beの肩書き」につづく勉強家のワークショップシリーズ「MOYAMOYA研究」と「リソースフルすごろく」にも大きな進展があったひとつきでもありました。
そこで今回は1月17日(金)に開催された「はたらく学校「国語」 ほしい未来を言葉でつくるMOYAMOYA研究」のスライドをご紹介したいと思います。(おかげさまでアンケートも好評で、春に再び開催させていただけることになりそうな予感◎)
今回の紹介文はこんな感じでした。
あなたの日頃のモヤモヤは、仕事探しや働く上で欲しているものを言葉にする鍵。
「もっとこうなればいいのに」「悩みごとや不安」「怒りや悲しみを感じてしまうこと」などの気持ちをじっくり観察し、それらを言葉を使って「ほしい未来」へと転換します。
大学の授業以外での「MOYAMOYA研究」は、初めて社員研修として開催させていただいた昨年11月の鹿児島以来。そのときはこちらの伝えたいことが多すぎて、大幅に時間が足りなくなってしまいました。そこから内容を断捨離したり、ワークの内容を調整してさらにシンプルに。
まだ「beの肩書き」のように、誰でもできるものにはなっていないものの、もっともっと場数を踏んで削ぎ落としてゆきたいと思っています。
「MOYAMOYA研究」って?
そもそもMOYAMOYA研究は、普段の暮らしや仕事でモヤモヤをヒントに、その背景にある本当のニーズを紐解いて、ワクワクする未来を描いちゃおう!というもの。
例えば、こちらの方は「したいことあるのに家に帰ったらすぐ寝ちゃう問題」というモヤモヤが転じて「誰もが、人生を主人公として生きる"全員、主人公"の未来」というワクワクへ。
こちらの方は「考えごとをしていて降りたい駅で降りられない問題」から転じて「スナフキンな電車旅ができる未来」へ。
こんな感じで、MOYAMOYA研究の最大の醍醐味は、最初の「〜〜すぎ問題」と「(誰もが)〜〜できる未来」のあいだに大きなジャンプがあること。それは当の本人だけでなく、グループのメンバーにもハッとした気づきがあります。
紆余曲折を経て内なるワクワクに気づいたとき、さっきまで苦しんでいたモヤモヤこそ自分宛に届いた大切なメッセージだったことに気づいたり、場合によっては感謝できるようになったりするのです。
〈MOYAMOYA研究@OSAKAしごとフィールドのレシピ〉
①チェックイン
②レクチャー
③MOYAMOYA研究
MOYAMOYAマップ/問題に名前を付ける/研究テーマのシェア/感情を解放する/ニーズを探求する/慈悲を広げる/ほしい未来宣言
④チェックアウト
①チェックイン
beの肩書きは3人一組ですが、MOYAMOYA研究はペアワークで進めていきます。とはいえより多くの方と言葉を交わして場になれることができるように、まずはペア×2組の4人でチェックインをすることにしました。(チェックアウトもこのメンバーですることになります)
一周目のお題はシンプルに「お名前/いまの気持ちは?」とし、二週目に「モヤモヤと向き合う日なんだな」と準備ができるように「最近モヤモヤしたことがあれば」というお題も用意してみました。
②レクチャー
前回は詰め込みすぎてしまったので、ここはぎゅっとシンプルに。
「ほしい未来」の見つけ方 → ヒントとしての煩悩 → モヤモヤ研究のプロセス&4つのキーワード
ほしい未来は、”自分のため”と”他者のため"が重なるところに
仏教の叡智に学ぶ、さまざまなモヤモヤ
ワークはかなり仏教インスパイアード
「Compassionate Systems Framework」を取り入れています
③MOYAMOYA研究
MOYAMOYAマップ
モヤモヤはどうしてもプライバシーに関わるので、事前にグランドルールとしてのMOYAMOYA研究員の心得を共有しておきます。このあたりでも心の動きに耳を傾けたり、他者に関心を持ったり(慈悲)、仏教的なあり方で場がホールドされていくように工夫していきます。
そして最初のステップは、自分の中のモヤモヤを思い出す時間です。偏愛マップの要領でA4の紙に書き出していきますが、センシティブなこともあるかもしれないので紙に書いた内容は参加者同士では共有しません。
MOYAMOYA研究の質を左右するのは、いかに思い入れのあるモヤモヤを"研究"対象として選べるかどうかだったりします。そこでお題のバリエーションを増やし、できるだけモヤモヤを思い出しやすくなるように工夫してみました。
MOYAMOYAマップでモヤモヤを書き出したら、次の3つの条件にあてはまるものをひとつ研究対象として選び、ワークに入ります。
① 同じようなパターンを繰り返していて、そろそろしっかり向き合うべきだと思う
② 自分一人でも、もしくは仲間の協力があれば何とかできそうだと思う
③ 今のところ、ある程度は整理がついているので、この場で共有しても大丈夫だと思う
問題に名前を付ける
研究対象として選んだモヤモヤに「〜〜すぎ問題」という名前を付けます。例えば、いま困っていること、悩んでいることが夫婦喧嘩だったとすれば、「夫婦喧嘩多すぎ問題」とします。
そして、ワークシートの右下にそれを記入します。
つづいて、ワークシートの右上に、「夫婦喧嘩多すぎ問題」なら「夫婦喧嘩多すぎない未来」というふうに、「〜〜すぎ問題」を単純にひっくり返した「〜〜ない未来」を記入します。「時間がなさすぎ問題」のように"なさすぎ"、となった場合は、適宜"ない"を消して「時間がある未来」としてください。
日本語的にはおかしいかもしれませんし、まだワクワクするものではありませんが、"ほしい未来"のたたき台の完成です。
2人とも完成したら、「〜〜すぎ問題」になにを選んだのかをひとこと程度で共有します。その後、例えばMOYAMOYAマップにたくさん書いたほうが先、など1人目の語り手を決めます。一人分のワークの所要時間はおおよそ25分くらいで、1人目が終わったら語り手と聞き手の役割を交代します。
研究テーマのシェア
ひとりめの語り手が決まったら、語り手がスライドで指示された言葉の通りに語りをはじめるオープン・センテンスという手法を用いて、研究テーマを共有してゆきます。話が終わったり、途中でつまづいた場合は、もう一度最初に戻ります。
感情を解放する①
研究テーマのシェアが終わったら、30秒間、目を閉じて、体や心の動きに注意を向ける時間をとります。呼吸を整えながら、からだのどの辺りが、どんな反応しているのか、体のどこかにわだかまりやざわつきがないか、モヤモヤを語ったあとの自分自身と深く向き合います。
30秒経ったら、聞き手が語り手に以下の質問をします。恥ずかしい気持ちもあるかもしれませんが、できるだけ素直に、言葉にしてみてください。
感情を開放する②
次のステップでも、聞き手が語り手に質問をしてゆきます。正解というものはないのでしょうし、無理に見つけようとしなくも大丈夫です。ただ、何を学んだのだろうか?という問いを、大切にしていただけたらと思います。
ニーズを探求する
感情を解放し、冥利(思いがけないいいこと)に気づいたことで、モヤモヤとほどよい距離感をとることができます。そうして囚われたり、振り回されたりしなくなったことで、初めて落ち着いてモヤモヤの本当の原因を観察することができるようになります。
ここでシステム思考のツールのひとつ、コネクション・サークルをペアで考えてみます。最初は「夫婦喧嘩が多すぎるのはなぜ?」「ちょっとしたことで苛立つのはなぜ?」と聞き手が掘り下げていきつつ、聞き手も語り手が気づいていない要素があればぜひ提案してみてください。
ある程度、要素が出揃ったら、各要素に潜んでいる本当のニーズに耳を傾けていきます。各要素に「本当は〜〜がほしい」「本当は〜〜したい」という"心の声"を加えていきます。
ここからがモヤモヤがワクワクに転じていくいちばんのハイライトです。吹き出しで心の声を加えたら、全体を俯瞰して本当のニーズを見極めてゆきます。ふたたび聞き手から語り手に、次の質問をしてみてください。
ここでは、最初の〜〜すぎ問題から、どれくらい飛躍したかどうかがポイントになります。あまり変わらないとすれば、コネクション・サークルに戻って、もう少し吹き出し(=心の声)を付け加えてみてもいいかもしれません。
サンプルの夫婦喧嘩の場合、「一緒にできることがほしいなあ...」が本当のニーズだったのでしたので、「夫婦喧嘩が多すぎない未来」から「この夫婦だからこそ新しいものを生み出すことができる未来」へとアップデートされました。
ひとりめはここで終了です。続いてふたりめも同様にワークをすすめます。
慈悲を広げる
ここからいったん個人ワークに入ります(やっぱり時間が足りなくて即興でそういう流れにしたのですが、意外とハマっていたので今後はこっちでいきそう。まさにケガの功名◎)
ここまでは「わたしが〜〜できる未来」というふうに個人的なほしい未来でしたが、いよいよここから「誰もが〜〜できる未来」というふうに、わたしの範囲を広げてみます。ファシリテーターから、次のような言葉を深く問いかけてみます。
サンプルの夫婦喧嘩のケースでは、「ときにはぶつかりながらもパートナーがいることでお互いに創造的に成長できる未来」へと、さらにアップデートされました。最初の「夫婦喧嘩多すぎ問題」と比較すると、だいぶ深まってきたことがわかります。
ほしい未来宣言
左下に記入したほしい未来は、まだ出来たてほやほやであり、ちょっと文章としても長いので、最後に自分自身が持ち帰れるように、あるいは、多くの人と共有できるように、キャッチコピーやことわざ、歌のタイトルのような短いフレーズを、聞き手と一緒に考えます。この「ほしい未来宣言!」を、ワークショップの最後に全体で共有します。
サンプルの夫婦喧嘩では、「問いかけあう夫婦へ」というキャッチコピーになりました。
④チェックアウト
完成したらいよいよフィナーレです。チェックインのときの4人に戻り、ひとりひとり「〜〜すぎ問題」から「ほしい未来宣言」に至るまでの旅路を共有してゆきます。(このとき真ん中は隠しながらがおすすめです)
グループ全員のほしい未来宣言を聞いたら、今日の気付きや仲間への感謝など、自由にシェアします。
以上がMOYAMOYA研究ver1.5のレシピでした!
今回もOSAKAしごとフィールドのみなさんのおかげで、参加者に寄り添った丁寧な場をつくることができただけでなく、まだ言葉にできていないMOYAMOYA研究の冥利を僕自身感じることができた気がします。
ということで、参加者のみなさん、声をかけていただいたハローライフの塩山さん、島田さん、ありがとうございました!
はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎