優れたアイデアを生み出す思考法


私は色々とあって3年ほど演劇やコントを作っていた。

0から1を生み出すことが超苦手な私が、演劇やコントを作り続けた3年間。スパルタ部活動の経験より、長時間勉強した浪人時代より、「0からアイデアを生み出すこと」が人生で最も苦しかった。発想力に関して、間違いなく凡人だと自覚している。

一方で、そんな私もいくつか周囲に評価される作品を作ることができた。

これは、凡人が優れたアイデアを生み出した時の共通項をノウハウとして言語化しておくための記事だ。間違えてほしくないのは、紹介する方法は、魔法ではない。「私が」アイデアを生み出した方法であって、私の思考に合っていただけだ。人にはそれぞれ思考のクセがあると思っているので、参考程度に見ていただければと思う。


アイデアとは

ジェームス・W・ヤング著「アイデアの作り方」では、アイデアについて以下のように紹介されている。

アイデアは今ある要素(物)の新しい組み合わせでしかない


これは私もそうだと思う。ではどうやって生み出すのか?

同著では「アイデアは『一見全く関係ない2つの要素を掛け合わせること』で生まれる」と書いてある。

不親切な文だ。これはノウハウではなく「結果」だ。
優れたアイデアは結果的に「一見全く関係ない要素を掛け合わせたもの」になっているのだが、それがパッとできるのならアイデアを作るのに苦労しない。同著ではもう少し詳しく手順が書かれているが、要は「掛け合わせろ」というものだ。


優れたアイデアを生み出す思考法

「積み上げ思考」

これこそが、私が優れたアイデアを生み出した時の共通項であり、紹介するノウハウだ。

「積み上げ思考」という名前にしたのは、土台となるアイデアの上に、アイデアを積み重ね、1つのアイデアを作り上げる思考法だからだ。

すごく簡単に言うと「1つのアイデアを深掘りする」だけだ。拍子抜けした方、ごめんなさい。でも、私が周囲から評価されたアイデアは全てこうして作られている。そして、評価されなかったアイデアは、全てこれができていない。


積み上げ思考のやり方

積み上げ思考のやり方を順序立てて説明していく。

①まず、1つアイデアを生み出す(土台アイデア)

 ここは、まず1つアイデアとして形にしなければいけない。しかし、誰でも考えられるレベルのアイデアで良い。とはいっても、私はここを生み出すことさえ苦しかった。きっと苦しい人は多いと思う。


②土台アイデアの一部を「こうしたら良いのでは」「こうしたら面白いのでは」と"脳がちぎれるくらい"考える。

とにかく、一歩優れたアイデアになるよう色々な観点で深掘る。

脳がちぎれるくらい考えていれば、70%の確率(経験則)で土台アイデアは飛躍する。イノベーションのようにとんでもなく飛躍する場合もあれば、改良程度におさまる場合もある。飛躍の度合いは、土台アイデア次第だ。

大事なのは、とにかく数を出すこと。「改良できた!」と思って思考を止めてはいけない。もしかしたら、違う風に考えたらとんでもなく飛躍する可能性がある。

ちなみに、アイデアが飛躍したときは直感で「キタ!!」と思うので是非お試しあれ。


③②で生み出したアイデアの一部を「こうしたら面白いのでは」「こうしたら良いのでは」と(脳がちぎれるくらい)考える。

②と同じ。ここは②で飛躍したアイデアを、さらに飛躍させる段階である。

②で飛躍したからといって、諦めてはいけない。アイデアはここでも意外と飛躍する。むしろ③でも飛躍させることに成功したら、とんでもないアイデアに化けている可能性が高い。

③までやっても素晴らしい飛躍が生まれなければ諦めて①に戻った方が良い。土台アイデアを作り直そう。


④③と同様





アイデアの発想法


経験では③が限界に近いので、無理して④以降につなげる必要はない。

また、1つの土台アイデアで優れたアイデアに行き着くことは少ない。めげずに、何度も①からやり直す。そしたら必ず、優れたアイデアが生まれる。

こうして飛躍を重ねたアイデアは、「一般人が考えつかないようなアイデア」に到達している。なぜなら普通の人は①までしか考えないから。①の時点では思いもよらなかった優れたアイデアに到達しているはずだ。


積み上げ思考の具体例

積み上げ思考でアイデアを生み出す過程を紹介する。

実際に大学生のお笑いで見た「ヒーロー」というコントを例に考える。

コントの状況としては、悪いやつが街で暴れており、少年がヒーローに助けを求める。助けにきたヒーローが必殺技を繰り出し、悪いやつを倒す。

この状況で、積み上げ思考で面白い設定を考える。

①ヒーローの必殺技を真似したい少年が、少し違う変な必殺技をやってしまう。
②ヒーローがその技にかかり、変な踊りをするはめに。
③実は、ヒーローはその必殺技にかかったのではなく、慌てていただけだった。

①は一見ありそうなコントの設定。②で一つ設定が積み上がり、コントとして成り立つ設定になった。しかし、ここで満足しないことが重要。③でさらにアイデアの飛躍が起こったことがわかるだろう。(今回は②、③で1つずつしかアイデアを出していないが、実際に考える際には当然何十、何百と考える。その上で一番いいものについて深ぼっていく。)

このコントは大学生お笑いの大会で優勝した。めちゃくちゃ面白いコントだった。

結果としてとんでもないアイデアでも、アイデアを①から積み上げていくと意外と自分でも作れそうだと思える。

なぜ「積み上げ思考」をするべきなのか

2つあると思っている。

1つ目は、人は①の段階で優れたアイデアを出そうと考えてしまうからだ。

大抵の人は、天才でもないのに1回で金の卵を生み出そうとする。確率は低けれど、いつか生まれるのではと考えているのだ。そしていつまでも生まれず、「私にアイデアなんか生み出せない」と悲観して思考をやめてしまう。1つ目で素晴らしいアイデアを出せる確率は0に近いし、そんな脳のキャパはない。

普通の卵に何度も金を塗ればいい。これは悲しいことでもなんでもなくて、むしろ磨きに磨いたアイデアは天才と勝負できるレベルに達する。無理矢理アイデアを磨かせる「積み上げ思考」は凡人にきっと役に立つ。


2つ目は、アイデアを生み出す領域がある程度絞られるからだ。

考える対象が漠然としていると、アイデアは全く出てこない。あたり一面砂地の砂漠に立っていると、どこへ歩けばいいかわからず呆然としてしまうのと同じだ。

考える論点が明確になればなるほど、それだけ深く考えられる。

例えば、男女の演劇を考える。「恋愛」という状況よりも、「恋愛で好きな子を呼び出す時」という状況で設定を考えた方が考えやすいのがわかるだろう。

積み上げ思考は、①から②、②から③と、考える領域が明確であるためアイデアを生みやすい。


アイデアを生み出す必須条件

3つあると思っている。

1つ目は、アイデアを生み出す対象について、調べ、知り尽くしていること。

「何もないところからアイデアは生まれない」とよく言われるが、これは間違いない。なぜなら、アイデアは今ある要素(物)の新しい組み合わせでしかないからだ。

音楽を作るときは誰よりも音楽を聴き、コントを作るときは誰よりもコントを見る必要がある。


2つ目は、アイデアを生み出そうと、「脳がちぎれるほど」考えていること。

とにかくアイデアを生み出そうと苦しくても苦しくても考える。実際、私がアイデアを生み出した時も、脳がちぎれるくらいそのことについて考えていた。

また、これはアイデアを生み出す努力という意味だけではない。実は1つ目につながっている。考えれば考えるほどインプットが足りなくなり、もっと多くの情報を取り入れるようになるのだ。


3つ目は、時々「インプット0環境」を作る。

「インプット0環境」とは全くインプットのできない環境である。リラックス状態と考えてもいいかもしれない。例えば、シャワーの時間、散歩の時間、乗り物に乗っている時間などだ。

脳がちぎれるくらい考えて、時々「インプット0環境」を作る。すると「インプット0環境」の時間にアイデアが浮かぶことが本当に多い。

これはなぜなのか。私の感覚だが、全くインプットのできない環境に身を置くことで、頭の中のずっと考えていたインプット情報がまっさらになる。すると脳内のインプットとアウトプットの比率がアウトプット側による。だから、アイデアが生まれるのだと思う。

ちなみにハリーポッターの作者J・K・ローリング先生は、ロンドンに向かう列車の中でハリーポッターを思いついたそうだ。


陥りやすい注意点

私が過去陥っていた過ちについて2つ述べる。

1つ目が、①の段階のアイデアで満足してしまうこと。

私は発想力、創造力などが平凡なためアイデアが1つ出ると満足してしまう。しかしこれではいけない。苦労して生み出したアイデアなのかもしれないが、①の時点では大したアイデアではない。大事なのは、自分のアイデアなんて「浅い」と自覚することだ。

2つ目が、他人の意見を聞こうとしないこと。

「他人の意見など必要ない、自分の考えが絶対だ」という考えは今すぐ改めた方がいい。

まず、他人の意見を聞こうとしないから①で満足してしまう。他人の指摘で①のアイデアが大したことないと気づける。

次に、他人の意見はアイデアを飛躍させる貴重な視点になる。これは、他人に優れたアイデアを作ってもらうという意味ではない。他人の指摘がヒントになって、自分でひらめくことが非常に多いのだ。


今後

私は演劇やコントに対してアイデアを生み出してきたため、「積み上げ思考」はそれらに特化した思考法かもしれない。つまり、一般化できるものではないかもしれない。

今後は、ビジネスでこの思考法を転用してみる。ビジネスモデルやサービス内容を「積み上げ思考」でどこまで考えられるか。通用しなかったり、変更すべき点があればまた記事を出したいと考えている。

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