マガジンのカバー画像

小説版『アヤカシバナシ』

43
恐怖・不条理・理不尽…もしかするとそれは、アヤカシの仕業かもしれません。漫画『アヤカシバナシ』の小説版:怪談奇談短編集
運営しているクリエイター

記事一覧

小説版『アヤカシバナシ』見上げる女

こんなことを聞いたことはないだろうか。 後ろで気配がして、振り向くと誰も居ない。 その時は上に居ると・・・ これは友人が引っ越したアパートで体験したという話なのですが、引っ越し作業が終わってやっと落ち着いたある日の夜のこと、部屋で本を読んでいると後ろに人の気配を感じた。 振り向くと誰も居ない『そりゃ居るはずがない、独り暮らしなのだから』 そう、自分に言い聞かせて、その時は怖さを紛らわせたそうですが。 数日後に私に会い『後ろで気配がして振り向くと誰も居ない、その時は

小説版『アヤカシバナシ』母が見た者

居間で母と一緒に珈琲を飲みながら テレビを見ていた中学生の私。 母親が突然目を抑えて『目が痛い!』と苦しみ、本当にボタボタダラダラと涙を流し始めました。 滝のようにとはまさにこのことと言うくらいに。 どうしようもない私は救急車呼ぶか否かを聞くしかなかった。 母は『そういうんじゃ・・・ないから・・・ 眩しくて目が潰れそうに痛かった・・・だけ・・・』と言うと、タオルで目を抑えながら呼吸を整えた。目が開くようになったのでボソボソと話し始めた。 『さっきね、あんたの後ろ

小説版『アヤカシバナシ』 双眼鏡

中学生の頃だったと思うのですが、友人A君が誕生日に双眼鏡を買ってもらったそうです。 星を見る望遠鏡と言うなら分かるけどなぜ双眼鏡? A君は『景色を観るのが好きなんだ』と答えた。 私は『あぁそうか、そりゃそうだ』と思った。 ところがA君の狙いは景色ではなく、斜め前の家に住む、女子高生の部屋を覗く事だったようだ。 昼休みに友達に話しているのが聞こえたのだから間違いない。 少々ガッカリと言うか、覗きの為に双眼鏡って呆れた。 ここからはA君から聞いた話なのですが・・・

小説版『アヤカシバナシ』 青いクマさん

質屋さんでバイトしていた時、連絡をいただくとその家に行き、 査定をしてお金と引き換えにモノをいただいてくる、 いわゆる引き上げ作業の助手の仕事もあった。 その日、1本の電話があった。 先輩と私が小型のトラックで現地に向かう。 申し出は『息子の遺品の引き上げ』だった。 気持ち悪い人は気持ち悪いと思うけれど、 お店によってはこうして亡くなられた人が生前大事にしていたものを 遺族が処分する、それを店で売り、誰かの手に渡る・・・ そんな流れも少なくなかった。 (あ

小説版『アヤカシバナシ』 22枚目

楽しかった修学旅行も終わり、中学生の私は写真を現像してもらおうと、 近所のカメラ屋さんに向かった。 いつもの顔なじみのおばちゃん店主は『じゃぁ2日後ね』と言って 受け付けてくれたのですが・・・・ 控えを持って放課後にカメラ屋さんに向かい、 『おばちゃん!出来てるよね!』と声をかけると、 『え、ええ、でも1枚写真に出来なかったのよ・・・』と言った。 『え?写ってなかったとか?』 『いや・・・写ってるんだけど・・・』 『じゃぁなんで?』 『あの・・・写真に出来

小説版『アヤカシバナシ』 逆さま

小学校、高学年ころの話だったと思います。 心霊写真が爆発的に流行していました。 不謹慎な言い方ですけど大流行りでして、 遠足の写真が出来上がれば全員が霊を探すような状態。 そんなある日、クラスメイトの1人が私とAとBの3人にだけ 『放課後にちょっと見せたいものがある』と言ってきました。 そして放課後、教室に居残りをして数十分 私を含む4人だけになった。 見せたいものがあると言って来たCが周囲をきょろきょろし、 誰も居ない事を確認するとランドセルの小さなポケッ

小説版『アヤカシバナシ』大きな男

さて、霊感の持ち主である母親の登場です。 彼女の霊感の強さは、一緒にTVを見ていると、急にうずくまって唸りだし、脂汗を流したかと思うと、スッと起き上がり『〇〇が死んだ・・・』と言った途端に家の電話が鳴り、母の言った親戚の〇〇が亡くなったと言う知らせが来るほどである。 そんな母親は身体が丈夫ではなく、これもそう言う者の影響なのかもなんて考えたりもする。 ある日、脚の関節が痛み、入院となった。 病室に案内されると、母親はとても嫌な気持ちがしたと言う。 ベッドに誘導された

小説版『アヤカシバナシ』呼び出し

医療関係の仕事をしていた時の話です。 仕事中に体調を崩した私は休憩をいただき、仮眠室で少し眠ることを許された。 その仮眠室は8畳くらいあっただろうか、清掃部の詰所と言いますか、休憩所も兼ねていた。 丁度お昼時だったので、清掃の方が2名居たが、『あらら大変、もう行くから寝なさい、ね。』と優しい言葉をかけていただき、私は部屋の隅にある 簡素なパイプで出来たベッドに横になった。 マットレスの意味を成さない硬さだったが、なにより横になれることが今は幸せだった。 体調の悪さ

小説版『アヤカシバナシ』呼ぶ人

医療関係で働いていた頃、その館内では命を落とす者もいる。 しかしそれがあまりに突然だったら、気づかずに居るのかもしれない。 老人介護にも関わっていた私は、デイケア部署で通ってくる方たちと遊んだり歌ったり、とにかく楽しく過ごしていただく仕事もしていた。 明日、デイケア部署で月に一度のお楽しみ会があるので、部署内の装飾を依頼されて、残業になっていた。 お楽しみ会では、数日前に通所されることになったAさんのお誕生会も兼ねていた。 Aさんはとても気難しい男性の方で、誰が話し

小説版『アヤカシバナシ』臭い

見える見えないより、臭いを感じる事はないだろうか。 残り香に似ているけれど、香水とかそういうのではなく、例えばその人のバッグの臭い、服の臭い、家の臭い。 まぁ体臭と言えばそうなのかもですが、その人の臭いってあるのわかりますかね・・・そういうお話です。 ある介護施設での朝、できる事を全てする時間がある。 例えば入浴後にドライヤーをかけてあげる為に、ドレッサーに準備しておく、お風呂を待つ人たちの為に、順番に座る椅子兼脱衣場の設立などなど、デイケアと呼ばれる部署の朝は凄まじ

小説版『アヤカシバナシ』赤いカド

医療関係の仕事をした居た頃の話。 入所されている方々の食事をするホールがある。 そこは催し物をやる時にも使う場所なので、 凄い広さだ、どれくらいと言われると・・・ 普通車をギッシリ50台入れられる駐車場くらい。 そこを日曜日の勤務の時は、リネン交換の為に横切る。 日曜の夕方だと誰も居なく薄暗くだだっぴろいそのホールは、 妙に薄気味悪かった。 台車に交換用の使用済みリネンを乗せ、 ガラガラとリネン室に向かうのだが、自動販売機のある角、 そこが赤く光って見える

再生

チャンネル愛×アヤカシバナシ「ドスドスドサッ」

愛さんの語りのリズムや雰囲気がピッタリマッチした、ほぼ実話怪談をどうぞ。

小説版『アヤカシバナシ』ドスドスドサッ

中学生の時の、修学旅行での体験です。 とある情緒のある温泉ホテルと言うのでしょうか、旅館と言うのでしょうか、歴史も感じる古めの建物でした。 ひと通り、面倒なレクリエーションなどを終えて部屋に戻った。 『消灯~』生活指導のハゲの声が響いてきたのを覚えているので、確か午後9時か10時じゃなかっただろうか。 修学旅行の醍醐味はここからである。 もそもそと起き上がり、小さなライトをつけて、私たちは4人で1勝負100円を賭けた大富豪を始めた。 アツくなって夜中まで勝負は続い

小説版『アヤカシバナシ』振り向く

写した写真がだんだん振り向いてくる・・・そんな話はよく耳にしますが、私にも経験があるので綴ります。 小学生の時だった、心霊写真がやたらと流行る時期ってありますよね、私のクラスも例外ではなかった。 『うちにあったよ心霊写真!』と言っては、毎日のようにキャーキャー騒いでいた。 しかしその殆どが点が3つで顔に見える様な、人間がそもそも持っている顔認識機能の誤作動によるもの。 そんなある日、クラスで目立たない男子A君が、騒いでいる輪の中にのそっと入ってきて『こ・・これ・・・』