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ラーメンの誕生 (ちくま学芸文庫)岡田 哲

この本は、ラーメンが今のかたちに至るまでの歴史を、江戸時代やさらにもっと昔、ときには中国まで文献を辿りながら、明らかにしていく一冊です。

ラーメンって和食?

一番面白かったのは、P140 第五章「ラーメンの魅力を探る」
複合されたラーメンのルーツ

これらの情報を総合すると、第二次世界大戦の後に、大陸からの引揚者がもたらした中国北部のめんのスタイルに、中国の各地の麺料理の特徴が混ざり合い、さらに日本人の和食化への努力の繰り返しの結果が、今日のラーメンのルーツを形成している。このなかには、横浜の居留地のシナそば、長崎のちゃんぽんや皿うどん、東京の来々軒のシナそば、札幌の竹家食堂のラーメンなどが、渾然一体となっていきている。このようにして創作されたラーメンから、ご当地ラーメンやご当人ラーメンが各地で鼻を開き、百花繚乱の国民食になった。
(中略)
ラーメンのルーツと探ると同じように、語源についても定説がない。日本に伝えられた中華風めんの料理のなかには、ラーメンに似た中国語の表現や発音が、あちこちに散見される。

ふだんラーメン食べるとき、
「ラーメン」が和食なのか中華なのか考えていますか?
考えないですよね。正直じぶんもそうです。

どうやらその答えとしては、ラーメンの原型となるものは中国から流れてきたけど、今のラーメンそのものは、日本各地でアップデートされていった歴史がある。ということだそうです。

偏見かもしれませんが、カタカナで書かれているものは、外来のものという印象があります。ですから「ラーメン」という風にカタカナで書くことからしても、完全なる外来のものと思っていましたが、あくまで日本でアップデートされて今日に至るものなんだそうです。

「拉麺」なんて漢字で書くこともありますが、その他「このあたりが語源では?」と著者が列挙するものには「柳麺」「鹵麺」「打麺」「撈麺」、「大肉麺」「光麺」「湯麺」...etc といったものがあります。

これを知ってから、wikipediaを見ると面白いです。

リンクは開きましたか?

本文に入る前にこう出てきたはずです。

「この項目では、中国料理における拉麺について説明しています。日本料理のラーメン(拉麺)については「ラーメン」をご覧ください。」

つまり「拉麺」と漢字で書くと中国料理を指し、「ラーメン」とカタカナで書くと我々がよく知っている日本料理のラーメンを指す。と考えてよさそうです。

その上で結局のところ

ラーメンは、いつ頃、どこで、誰が創作したものなのか。たくさんの資料を収集し調べて見たが、万人が認めるようなルーツの特定は出来ない。なかなかの難問なのである。(本文より)

なのだそうです。

なかなかラーメンの歴史は奥が深い。

有名な逸話として「日本人で初めてラーメンを食べたのは水戸黄門である」というものがあります。最近では、そうではなかった! という資料が見つかってそれがニュースになったりもしています。

なので、日本人にラーメンが拡がったのは、江戸時代からだと長らく思っていたのですが、この本を読む限りでは違うということがわかります。

中国ではそれよりも遥かに昔からラーメンの祖先にあたる料理は存在していた。でも日本でそれが拡がっていったのは戦後になってから。

という理解です。


ラーメンの味わい方

偏見かもしれませんが、ラーメンの味を評価するとき、「スープ」を重視して評することが多いと思います。「味噌が好きだ」「塩が好きだ」とか。

そんな中、この本を読んで「麺」の奥深さに驚かされました。

「麺」というと、ラーメン・そうめん・うどん・そば・スパゲッティ。そのくらいしか意識したことはありませんでした。それらの違いくらいなら分かります。

でも、中国で試行錯誤されてきた数はとてつもない。

本文P32に中国宋代の麺料理が掲載されており、いくつか抜き書くと

索麺:表面に油を塗布し、食塩は入れない、日本の手延そうめんの系統
紅絲麺:エビ風味の細きりめん、生エビ参照・食塩・コムギ粉・マメ粉・コメ粉
翠縷麺:エンジュ入り緑色のごく細切めん

その他にもいろいろ14種類。

これだけの種類が、1,000年(900年?)くらい前からつくられていたのですから、今じゃもっと多い筈。

そんな種類の麺食べたことない......

今度からラーメンを食べるときには、麺がどんなふうであるのかというところについても、気にしながら食べてみよう。


あと時々おもしろいな思うのは、お店で木製のトレイのようなものがあり、よく見ると「〇〇製麺」のような名前が入っているのです。

「そうか。ラーメン屋も受発注の関係のもとに成り立っている業界なのだな」と気付きます。今度からその製麺会社の名前を見ながら食べてみるのもおもしろいかもしれません。

話はだいぶ変わりますが、以前外食をしていたとき(これはカレー屋の話ですが)、スタッフの人たちが「業者の人が間違ってレタス2つ多く届けてたんだよね。伝票は合ってたから、うちら得してるんだけど、(店が)狭いから置き場所に困るんだよね」
「(間違えて多く届けられた)そういうときは、くれるんだよ。返品されたところで、一回届けたやつはもう売れないから」という会話を耳にしました。

そこでふと気がついたのです。

ぼくらはみんな「お店」の看板を見て食べている。

だから、どこのどんなレタスを使っていようが気にすることは滅多にないけれども、本当は結構その材料の部分て結構大事なはずで、でもぼくらはあくまでお店の看板を見て食べているから、マクドナルドのレタスと、カレー屋のレタスが一緒だろうがなんだろうがあまり気にしていない。でも、そこに希望が見えるのだとしたら、そんな風に世の中には材料を作ってくれる会社ってのはいっぱいあって、それらをうまいこと組み合わせながら、オリジナルレシピをつくることができたのなら、それだけで新しい「お店」をつくることは可能なのかもしれないな。ということです。


美味いラーメン屋に共通する点

さて、だいぶ話変えてしまいましたが、最後にまたラーメンの話題に戻ります。

美味いラーメン屋に共通する点について書かれているところがあったので、せっかくですし、ご紹介します。

P214 第七章「こだわりの味・くせになる味」こんな店がうまい

ラーメン通が行く店を、一〇箇条にまとめると、
①めんを茹でる釜が大きい、家庭用の小さめの鍋では熱量不足でダメ、
②茹で上がっためんは、掬い網を使っている、
③丼は小さめである、
④近くにラーメン激戦地がある、
⑤店構えは、あまり広くなく、せいぜい十五席ぐらい、
⑥メニューは単純明快で少ない、
⑦個性派の研究熱心な主人がいる、
⑧とくに、チャーシューに拘りがある、
⑨仕込み分が売り切れたら、閉店してしまう、
⑩家族だけ、または、アルバイトの少人数で切り盛りしている。
このような店のラーメンには、余り当たり外れがないという。従業員同士でお喋りの多い店、二十四時間営業の店は、美味しいラーメンが目的なら、敬遠した方がよさそうである。

行列に並ぶのはそこまで好きでは無いですが、美味しいラーメンを食べようと思ったら、行列に耐えることもある程度仕方がないのでしょう。

そしてせっかく食べたのなら、そのときには上記のようなチェックリストでもって、お店のよさを判定してみてはいかがでしょうか?

終わりに

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