無著流怪獣着ぐるみ制作記#1
本シリーズではスタジオ無著の造形スタッフが0から怪獣着ぐるみを作る過程を詳細に説明します!第1回目のこの記事では「デザイン〜芯棒づくり」について書いていきます。
粘土原型から怪獣着ぐるみを作りたい方必見。
事例として扱っていくのは制作中の映像作品「MIDNIGHT THE ERA」に登場する怪獣・カランコエです。
ーデザインを決めるー
方向性を決める
まず怪獣のイメージを起こし大体の形を決めます。
初めて尽くしの着ぐるみ制作ですので最初から決め切らずに後から修正が効くような大まかなイメージを描きだしていきました。
今回の場合はデザインを考える段階で脚本の大筋が決まっていたため
・それに合わせたテーマ性を盛り込めているか
・着ぐるみにした時必要なアクションができるか
を考えて初期案は前述のようにデザインの方向性を定める目的で描いています。名前はこのころからカランコエで決まっていました。(以下本記事ではカランコエと表記します)
イメージの純化
この監督から上がったイメージに対してメインスタッフからいくつか提案を挟みイメージを純化していきます。
スタッフからもイメージをあげていき監督の発想を刺激したり、客観性を与えたりしながら最終的なイメージを監督がまとめ上げました。
画像は監督のまとめたイメージ
デザインの完成
検討の段階でモチーフから色も決定し洗練されたカランコエのデザインが出来上がりました。
下は監督が本編中のイメージを反映させながらコンセプトアートとして仕上げたものです。
こうして怪獣のデザインが決定し修正を加えながら確定させました。
最終的にあまり初期案とは劇的な変化のないものになりましたがデザインを考える段階で怪獣だけでなく作品全体の解像度も上がっていったのでここまでもとても大事な段階でした。
決定したデザインから三面図を作り立体としての整合性を考えていきます。
この図を造形スタッフと共有して粘土原型をどう作るか、どこにこだわって作るのかという話し合いを進めていきます。
ちなみに、この段階でカランコエの着ぐるみのサイズは2m10cm~40cmにすることが決まりました。正直デカすぎます。
方針が固まったところでいよいよ制作です。
ー芯棒づくりー
芯棒ができました!では何が何だかですのでしっかりと芯棒とは?から説明させていただきます。
芯棒とは?
「芯棒」とは粘土を支えるための「骨」になるものです。
粘土は柔らかく形を作りやすい素材なのですがほとんどの場合粘土のみだと自立しません。
そこで使うのが「芯棒」。粘土に骨を付けるわけです。
作り方としては金具に木材を固定して立たせ、他の木材と組み合わせ、作りたい形に近づけ、固定。そこに縄をまいて粘土が滑らないようにしています。
これが芯棒です。
次はカランコエの芯棒がどう組まれているのかを説明していきたいと思います。
怪獣の芯棒
いくら美大生の集まりと言えど怪獣を人が入れるサイズで作ったことがある人間はいませんでした。つまりは経験値皆無だったわけです。
しかし、実際はカランコエは人型の怪獣としてデザインされていたので等身大の人間を粘土で作る時と容領は同じだったのであまり苦戦することはありませんでした。
では、カランコエの芯棒がどうなっているのかお見せしましょう。
先ほどの写真は大まかにこのように木材を組み合わせていました。
赤、青色が木材。3×4cmの垂木と呼ばれるものを使っています。
紫は針金。指や首、顔周りの木材が入らない細い部分に入れています。
オレンジは発泡スチロール。カサ増しのために入れています。
黄緑は金具です。芯棒を立たせる役目をしています。
まず初めに図では青色。木材Aを用意します。これらで首、肩、背骨、腰、足、腕にあたる部分を作り、まず人の形にします。長さはアクターとしてスーツに入る私から長さを測って決めていました。
次に図の赤色。木材Bを用意します。Aで作った人の形から輪郭としてさらに膨らむ部分にBの木材を入れていきます。今回は肩まわり、胸、腹、太ももの輪郭を広げています。
次は図の紫色。針金の部分です。指や顔など木材では細くて入らない場所、または自由に形を変えたい部分にはこれを使います。
指は関節ごとに曲げ伸ばしができて顔も角度を調整できる。全体のバランスを見ながら細かい部分を決められるように針金にしています。
次は図のオレンジ色。発泡スチロールの部分です。木材のみで作ると胴体の部分に大きな隙間ができてしまいます。そのまま粘土を詰めてしまうと粘土の量が増えてしまい重くなるので少しでも木材への負担を減らすためにカサ増しとして入れています。
発泡スチロール同士に隙間があるとそこに粘土を付けた場合、空気が入って裂けてしまい付けた粘土が落ちてしまうこともあるので発泡スチロールの表面をカッターや包丁で整えピッチリと合わせる必要があります。
最後は全面に縄を巻きます。シュロ縄という園芸などでよく使われるものを巻きます。植物の繊維で作られているので水に浸し繊維を伸びきらせてから緩い部分、巻き付けていない部分がないように力を込めて巻いています。
巻く途中に縄が切れてしまうくらいの強さで引っ張りながら巻くのがコツです。
芯棒の完成
こうした材料を使って芯棒を作ります。
木材の部分はシュロ縄できつく縛ったり、ビスを打ち込んだりしてしっかり固定します。
芯棒はグラつかない様に作り粘土をしっかり付けられる土台を用意することが大事です。
ー結びと次回予告ー
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
制作についてここまで詳しく説明をするのは初めてですのでお見苦しい点もあるかと思いますが楽しんでいただければ幸いです。
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次回の無著流怪獣着ぐるみ制作#2は「粘土づけ〜ベーススーツの型紙制作」をお送りいたします。次回更新をお楽しみに。
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