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無著流怪獣着ぐるみ制作記#2

本シリーズではスタジオ無著の造形スタッフが0から怪獣・カランコエの着ぐるみを作る過程を詳細に説明します!第2回目のこの記事では「粘土付け〜型紙作り」について書いていきます。

ー粘土付けー

体型を決める

前回用意した芯棒に粘土をつけて粘土原型にしていきます。
私たちが使っている粘土は「水粘土」と言われるものです。水に溶けるため硬化しても再利用可能、細かい作り込みにも対応できるので非常に便利です
表面の縄によく噛ませます。
この後にどんどん粘土がつくので剥がれ落ちないように最初は少し硬めの粘土を使っていました。

原型・1段階目

作業を中断する際は濡らした布を巻きビニールで表面を完全に覆います
乾いて固くなってしまうとその上に粘土がつかなくなったり、形を作れなくなったりするので粘土が露出しないようにします。

原型の背面

全体でのバランスを見られるように背面にもしっかり粘土をつけていきます
どこか一部だけを先に作ると全体が見えづらくなるので気をつけて制作を進めるのがよいです。

原型2段階目

ここでもやはり全体のバランスが大事です。
表面のディテールは気にせずに輪郭や量を意識しています。
またデザイン画だけではなくスーツアクターの体型とも見比べて作っています
体がしっかりと収まらないと入れなくなってしまうのでこのチェックは大事です。

造形のプロの仕事であればスーツアクターの体型そのものを型取りして石膏などに置き換えたものを芯棒に粘土をつけているのですが、それではあまりにコストと時間がかかってしまうので私たちは粘土の前にスーツアクターが立つという極めて原始的な方法で作っていました。

また怪獣・カランコエの足はX脚と言われる膝が内側に入っているうえに怪獣としてはかなり足が細い部類だったのスーツアクターの体型との兼ね合いで再現するのに苦労しました

最終的には膝の内側にボリュームをつけてなだらかな傾斜をかけることで実現しました。
アクターの足が出るか出ないかのギリギリまで攻めています。

全体を整える

原型 3段階目

頭もついてようやくデザイン画に寄ってきました。
ここまできたら木ベラなどを使い表面を整えていき影の入り方や濃淡、形の張り方などで修正します。形の狂いが判断できるように綺麗にしていきます。

特に腹や胸のハリにはこだわっています。前に出ている分あまり形がなめていたり、出過ぎたりしていはと太って見えてしまうので色々な場所から観察してバランスを整えます

原型4段階目

そのまま作業を進めていき手にも粘土がつきました。先端部分なうえに付く粘土の量が多いので後回しにして全体のバランスを整えていました
しかし、全体に粘土がついてから見えてくることもあります。

監督からの指示書

最終チェックとして画像の指示書を見ながら、今一度全体感を整えます

原型5段階目 仮完成

こうして修正を重ねて怪獣・カランコエの体型が完成になりました

メインスタッフの大学での専攻の影響かもしれませんが細部の形がどうこうというよりも全体で見た時のバランスの良さ、美しさ、見栄えの良さにこだわって原型制作を進めていました
結果的にはそれが良い仕上がりに繋がったのではないかと思います。

次は型紙を取る作業です。

ー型紙を取るー

型紙の取り方

このまま細部の作り込みへいきたいところですが、作ろうとしている怪獣着ぐるみの表皮はラテックスというゴム素材でできています。
この素材はとても柔らかく、単体では粘土で作ったような体型を維持することができません
そのため形を保持してラテックスの裏打ちをしてくれる「ウレタンできたベースのスーツ」が必要になります。

壮年の怪獣着ぐるみにおけるウレタンのベースはウレタンの塊から削り出す形で体型を作っていました。そこにラテックスなどでできた表皮を着せるんです。(近年ではビニール素材?などでできた劣化しづらいものが使われています)

しかし、私たちにはそこまでの予算がないのでベースはパーツを貼り合わせて作ってしまおうと考えました。

そしてそのためにはパーツの型紙が必要になったのです。

立体的な形を作る型紙を取る方法は至って単純です。
粘土原型の表面にラップを巻き付けてその上からガムテープで固定します。

この時ラップとガムテープはからなず形に沿わせるようにして浮いたり、凹んだりしないように気をつける必要があります。

型紙を取る作業中

写真のようにとにかくぐるぐる巻きにしてしっかりと形に沿わせます
これは立体の大まかな形しか出せないのでそこら辺は注意が必要です。
しかし、手軽なうえに精度もいいのでとても便利な方法です。

余談ですがこれを使って人から型紙をとることもできます

人型の型紙作りA
人型の型紙作りB

写真Aの方ではスーツアクター自身を芯としてラップを巻き、Bの方では巻いたラップを固めるためにガムテープを巻いています

この方法でざっくりとした形を移すことができます。
コスプレなどの界隈では有名な方法のようです。

あとは中心線、稜線(形の変わり目の線)に合わせてカッターを入れていきパーツごとで切り分けます
この切り取り線を書く際には各パーツとの接合がわかりやすいようにパーツに番号をつけたり、切り取り線を跨ぐように図形を書いたりしてどの部分の型紙か分かるようにしておく必要があるので注意しましょう。
こうして型紙を取ることができます。

ー分岐する作業ー

型紙が取れたのでこれからはベーススーツの作業と原型の作業に分岐します。

わかりやすいように現在までとこれからの制作過程を図にまとめるとこうなります。

ここまでとこれからの作業工程

このように作業が分岐していきました。

原型は粘土でより細かくディティールを作りこんでいってラテックス製の表皮に置き換えられるようにしていきます

―結びと次回予告ー

ここまで本記事をご覧いただきありがとうございます。
粘土で怪獣の原型を作ってしまおうという試みは私たちとしても相当気合をいれておりますその熱が少しでも伝わればと思っております。
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次回の無著流怪獣着ぐるみ制作#3は「原型完成」をお送りいたします。次回更新をお楽しみに。
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