見出し画像

自分で脱ぎ着できるエプロン

■出会い

 初めてお会いしたときから、朗らな笑顔が印象的なSさん。脳性麻痺で細かな動きがしずらく不自由もあるけれど、電動車いすを器用に操作して、すいすい~っとどこへでも出かけてゆきます。聞くと、ひとり暮らしを目標に準備を進めているところだそう。

■こんなエプロンがほしい

 その準備のひとつである「家族に脱がせてもらっている食事用エプロンを、自分で脱ぎ着できるようになりたい」とのご要望をうけ、新しいエプロンをデザインすることになりました。
 これまで使っていたエプロンは、袖のない割烹着のような形で、食べこぼしがあったときに腕をぬくことが難しく、介助が必要だったそうです。

製作にあたり、Sさんに確認したエプロンの条件は、主に以下の3つでした。
 ・自分で脱ぎ着できること
 ・食べ物が滑り落ちないように、木綿などのざらっとした素材を使うこと
 ・手を動かしてもエプロンがよれたりずれたりしない形であること

 私は、Sさんとお話しして、いくつかの思い込みに気づきました。
 ひとつは、食事エプロンは着けてもらうもの、外してもらうものと思い込んでいて、自分で脱ぎ着するというニーズに気づかなかったこと。
 そしてもうひとつは、食事エプロンは防水性の高い、滑らかな素材がよいという思い込みです。Sさんの話によれば、つるっとした素材ではこぼれた食材がコロコロと転がってしまい、かえって困るそうなのです。

■初回デザイン

 さて、「自分で脱ぎ着できるデザイン」では、着るときは頭を通せるだけの開き(あき)を確保し、食べるときには首元をフィットさせなければなりません。相反する仕様をつなぐための「開閉しやすい開き(あき)」を作ることがポイントになります。検討して、ふたつの試作品をご提案し、実際に試着していただきました。

 そのうち、Sさんが選んだのは「首からかぶって、前のファスナーを閉める」タイプのもの。試着の時には、ファスナーの操作性を確認し、引手には動かしやすいよう共生地のひもを、そしてファスナー下にはループをつけることにしました。

前にファスナー開きがあります


ファスナー引き手に共布のひもをつけ、操作しやすく


ファスナー下にはループをつけ、操作しやすく

 また、後ろあきにはマジックテープと小さなループがついています。食べこぼしが多いときには、片手でループを引っ張ればマジックテープが外れるので、そっと脱ぐことができます。

後ろ開きにもループを

 初回は以上の仕様で納品しました。ご自身で脱ぎ着ができるようになり、ご満足いただけました。

■デザインの改善

 一方で、実際に使ってみると、「初めて気づくこと」「改めて確信を持てること」があります。
 Sさんから、お腹のあたりに飲み物がこぼれて湿ってしまうこと、ファスナー下のループを使わずに開閉できたことなどを教えていただきました。 
 そこで、2回目にお納めしたエプロンは、撥水性のある生地を裏地として追加し、ファスナー下のループは省き、より使い勝手のよいものになりました。

撥水性能のある裏地をつけました

 こちらを実際に使ってみると、裏地の撥水性能は十分に役立っているとのこと。ほっとしました。
 このエプロンは、手に入りやすい木綿の生地を表地にできますので、生地の選択肢が広がり、自分らしいエプロンが作りやすくなります。普段用とお出かけ用を作ってもいいですし、ご自身のお洋服とコーディネイトができて、食事もおしゃれも楽しめそうです。
 皆さまにも楽しんでいただけるよう、既製品の販売、パターンと作り方の販売を予定しています。

■デザインシート

洋裁経験があれば、こちらを参考に作ってみてください。
お友達やご家族に製作を依頼するときには、ご自身の希望を整理するためにご活用ください。
(デザインシートの商用利用はお控えください)

ファスナーの引き手については、こちらの記事もご参考になさってください。


■パターンと作り方

(準備中)

■既製品の販売

 同型のエプロンをこちらで販売しています。


■オーダーのお問い合わせ

studio fuku ではエプロンの製作も承りますので、こちらからお気軽にご相談ください。(studio fukuのホームページに移動します)
同仕様のエプロンのお仕立て代 参考価格 5,280円(税込)
 ※ ご自身で選んだ生地をお預かりして製作することもできますし、
  こちらで生地を選んでご提案することもできます。
 ※ デザイン、仕様を変更する場合は、別途料金がかかります。 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?