"What Was I Made For" by ビリー・アイリッシュ (Billie Eilish)


はじめに

ビリー・アイリッシュの”What Was I Made For?”が良い曲だなと思って、歌詞が気になって調べてみた所、”あれ?”とか”ニュアンスが違うな”と思う翻訳があったので、少し解説してみたいと思います。

翻訳について

英語の言い回しって、日本語に直訳すると不自然になるし、意味を汲み取って日本語の言い回しに置き換えると英語の本来のニュアンスが分からなかったり、と翻訳って本当に難しいと思います。私の印象ですが、映画の日本語訳を追っていると、さすが、翻訳のプロの技というような滑らかな流れを感じますが、英語の本来のニュアンスという観点から見ると、”これって、どうなの!?”と思う時があります。文化が違うのだから仕方ないと思いますが、本来の意味を汲み取りたいなら、一度立ち止まってじっくり読んでみると、自分に馴染みのない世界(文化、表現)が分かる同時に、自分の知っている世界との共通点を知ることができます。感動には色々種類は度合いがあると思うのですが、私は、このタイプの感動は、人間の根源に関わる深い感動のように思えてなりません。

歌詞

「Verse 1」


I used to float, now I just fall down
 (前はふわふわ浮かんでいたけれど、今はただ落ちて行くだけ)
※後半は現在形なので、習慣的な意味合いがあります。例えば、毎朝朝食をとる(I eat breakfast every morningみたいな。)

I used to know, but I'm not sure now
(前は分かっていたけれど、今はよく分からない。)
What I was made for
(私は何のために生きているの?)
※直訳は、「私は何のために作られたのか」
What was I made for?
(私は何のために生きているの?)

「Verse 2」


Takin' a drive, I was an ideal
(ドライブに出かけると、私は理想的(な自分)だった)
Looked so alive, turns out I'm not real
((自分は)生き生きとして見えたけど、それは本来の自分じゃないってことがわかったの。)
※後半の文を「それは現実じゃなかった」というような訳が多いですが、主語は私で、turns outは「判明する」という意味なので、ちょっとニュアンスが違うと思いました。
Just somethin' you paid for
(それはあなた(の努力)によるもの)
ここが一番気になった所ですが、多くの他の翻訳では、「あなたが支払ったもの」と訳されていますが、これでは金銭的なニュアンスが大きくなってしまいます。ここで歌詞が伝えたいことは、前文の「この生き生きしている自分は、あなた(彼氏の努力)によって作り出されたもので、自分によるものではない」ということだと思います。そして、(次の文の)じゃあ”私は何のために生きているの?”」につながります。
What was I made for?
「私は何のために生きているの?」

「Chorus」


'Cause I, I
(だって、私は、私は、)
I don't know how to feel
(私はどう感じとったら良いのか分からないの)
※これは上述の「自分が生き生きとしているのは人によるもの」と「人によって生き生きしている自分が本来の自分じゃないってことが分かった」につながる文章で、「(だからこそ)本来の自分であるためにどう感じたら良いのか分からない。」になるのだと思います。
But I wanna try
(でも私は試してみたいの)
I don't know how to feel
(私はどう感じとったら良いのか分からないの)
But someday, I might
(でも、いつか、きっと)
※説明不要かもしれませんが、「いつかきっと正しく感じとれる日がやってくるかもしれない=本来の自分である日がやってくるかもしれない」
Someday, I might
(いつか、きっと)

「Verse 3」


When did it end? All the enjoyment
(いつそれは終わったの、全ての喜びは?)
※倒置法ですね。
I'm sad again, don't tell my boyfriend
(私はまた悲しくなった。でも、彼には伝えないで。)
※私は個人的に歌詞のここの部分がグッときました。表現が素晴らしいと思いました。これまでに述べたことがここと次の文にしっかり繋がっていますね。
It's not what he's made for
((だって)彼はそのために生きているわけじゃないから。)
※彼は自分の悲しみを聞くために生きている訳じゃない、ということですね。恋人に対する深い愛情を感じますね。
What was I made for?
(私は何のために生きているの?)
※そして、また(悲しい気持ちの)自分が何のために生きているのか、という問い
に帰る訳ですね。

「Chorus」(同上)


'Cause I, 'cause I
(だって、私は、私は、)
I don't know how to feel
(私はどう感じとったら良いのか分からないの)
But I wanna try
(でも私は試してみたいの)
I don't know how to feel
(私はどう感じとったら良いのか分からないの)
But someday, I might
(でも、いつか、きっと)
Someday, I might
(いつか、きっと)

「Outro」


Think I forgot how to be happy
(私はどう幸せなるのか忘れてしまったみたい)
Somethin' I'm not, but somethin' I can be
((今は)自分ではない”何か”だけれど、でも、”何か”になれるかもしれない。)
※「Outro」は、この楽曲の歌詞の結論のような、行き着いたところを表現している大事な部分ですが、翻訳が難しい部分で、本来の意味と異なる翻訳が多いような気がします。
※後半のsomething「何か」は”(いつかなれるであろう本来の自分)!を指しているはずで、これ以降に出てくるsomethingは同じ意味になると思います。
Somethin' I wait for
(何かの為に私は待っている)
Somethin' I'm made for
(何かの為に私は生きている)
※タイトルである「What Was I Made For(私は何の為に生きているの?)」の答えになる所、結論だと思います。
Somethin' I'm made for
(何かの為に私は生きている)






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