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地方の陳腐化したビジネスモデルを見直す

前回の記事

事業モデルを根本的に見直す

 ビジネスモデルの見直しや新規事業の開拓は、企業ごとに課題があったり、業界ごとの課題があったりなど、コンサルをしていても個別のケースでアドバイスしていきます。
また、時代が変われば将来的にビジネスモデルそのものが陳腐化してしまうこともあり、大局観でお伝えするのは難しいテーマでもありますので、
ケーススタディを交えていきながら解説していきます。 

古くなった収納棚の買取サービス

 まずはキッチンの収納棚の製造販売会社の話です。
キッチンの収納棚は住宅ごとにサイズが異なるため、受注生産されるのが
一般的です。そのため、引っ越しや建て替えをしてしまうと、
サイズが合わなくなるため多くは破棄されていました。

 どんなに状態が良いものでも破棄されてしまうのはもったいないので、
同社で不要となった収納棚を買い取るサービスを始めました。
同時に、これまで生産した収納棚のサイズを記したデータベースをつくり、同じサイズで必要としている人がいないか検索できるシステムをつくりました。買い取った収納棚はメンテナンスをして再販するという
新たなビジネスモデルを構築したわけです。

 さらに、買い取りをしたついでに
「引越し先でも当社の製品はいかがでしょう?」とセールスにつなげることができます。
地方では、高齢者が広い一軒家から駅やショッピングセンターに近いマンションに住み替えることがよくあります。そうした需要をつかんだ
新たなビジネスモデルというわけです。

 このように、従来のビジネスで収益を生んでいたポイントを振り返りつつ、これまでは収益は生んでいなかった部分でも収益化することが可能か? 意外な課金ポイントがあるのではないかなど、現在のビジネスモデルを改めて見直してみることです。

海外のビジネスモデルを参考にするタイムマシン経営

 ほかにも、ビジネスモデルに関しては、以下に近年成長中のビジネスモデルを表にまとめています。主にベンチャー企業のビジネスモデルをパターン化しています。


 例えばシェアリングビジネスなどはサービス開始当初は、顧客の満足度はそれほど高くはなく、一過性の流行と見る向きもありました。
しかし、カーシェアリングやシェアサイクルなどは、町のいたる所で
見かけるようになっています。

 他にもシャアハウスやシェアオフィスに加え、Uber Eatsの仕組みも配達人を飲食店でシェアするビジネスモデルです。「所有から共有へ」という
キーワードとともに、一般化されさまざまなビジネスで浸透しています。

 こうしたビジネスモデルは、自社や同じ業界でも当てはまるのではないかという視点で、参考にすることはお勧めです。

また、タイムマシン経営といわれていますが、日本国内だけでなく海外で
成功したビジネスモデルやサービスの模倣も以前から合った経営手法の
一つです。例えば、コンビニエンスストアは1920年代にアメリカで生まれたビジネスですが、日本にコンビニが登場したのは1970年前後と
言われます。

 海外のビジネスモデルを日本風にアレンジしたり、東京や大阪のビジネスモデルを地方風にアレンジしたりするなど、常に最新のビジネスモデルを
ベンチマークして、「これを日本でやったらどうなるか?」などチェックしておくことが大切です。

新規事業の開拓の事例

 新規事業開発に求められているのは、新たな価値を提供することです。
従来とは異なる手法ややビジネスモデルの変革によって、これまでにない価値を顧客に提供すること。すなわちイノベーションを伴わなければ顧客から支持されることはありません。

 では新たな事業とはどのようにして生まれるのでしょう。ゼロから1を生み出すことだけが新規事業ではありません。既存の事業、ビジネスモデル、サービスと、他の何かを掛け合わせることによって、思わぬ相乗効果を生むこともあります。

 

広告代理店が3分野で新たな事業を展開

 例えば、広告代理店というビジネスモデルが陳腐化したという話をしました。広告主であるクライアントから依頼を受けるなどしてテレビや新聞、
雑誌といった媒体にCMや広告を掲載。クライアントから掲載および
広告の制作費用などの手数料が広告代理店としてのマネタイズでした。

ところが、広告を掲載する場の主力が徐々にインターネットに移り、
広告代理店を介さずにクライアントが直接ネット広告に出稿できる
仕組みもできたことで、売り上げが大幅に落ち込んでしまったのです。

 そうした時代の変化に対応するために、その広告代理店が新規に立ち上げた事業は3つあります。
いずれも、これまでクライアントにサービスとして行っていたデザインの
マネタイズ化です。



 例えば、新聞や雑誌に広告を掲載する際、広告の出稿の手数料をクライアントから受け取っていましたが、掲載する際のデザイン費など、
制作物は無償で社内のクリエイターが対応していました。社内には多くの
優秀なクリエイターを抱えており、それが同社の強みでもあったのです。

 その人的資源をマネタイズするために、デザインの別会社を立ち上げて、自社で請け負う広告だけでなく、さまざまな媒体のデザインを受注するようになりました。紙媒体はもとより、ウェブデザイン、パッケージデザインなど、デザインに関わる範囲は広く、売り上げは確実に拡大しています。

デザイン経営という世の中の需要をキャッチ

 さらに、クリエイターの派遣ビジネスと、デザインスクールを設立します。新規事業であると同時に、収益構造を変えるビジネスモデルの大転換
だったといえます。

 クリエイターの派遣ビジネスでは、単にデザイナーを企業に派遣する
わけではなく、いわゆるCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)の
派遣です。

 経営会議に参加してデザインについての意見を述べるようなCDOを
月に1回派遣するというもので、製品デザイン、ブランド・マネジメント、広告コミュニケーションなども担当領域に含まれます。各企業からの
問い合わせや需要も伸びているといいます。

 デザインスクールは、主にインハウスデザイナーの育成をコンセプト
にしています。制作会社やフリーのデザイナーではなく、一般企業の中で
働くデザイナーで、自社の製品やサービス、ブランドに関わるデザインを
幅広く担当します。インハウスデザイナーの需要も高く、スクールの方も
収益を伸ばしています。

 デザイナーの手法や思考の方法をブランドの構築やイノベーションの
創出に活用して、企業競争力の向上を目指す「デザイン経営」という
言葉が昨今注目されていて、デザインを事業プロセスのなかに組み込みたいと考える企業も増えています。
そうした時代の流行をうまくキャッチして事業化したのは、広告代理店ならではといえるかもしれません。

新しい世代による新規事業が功を奏すことも 

こうした新規ビジネスは、意外と若い世代や新人からポッと出たりすることもあります。
多くはそうした若手の意見を「現実的ではない」「そんなことやっても売れないよ」など否定的に見てしまいがちです。

 しかし私は経営者に、1回チャレンジさせてみることを推奨しています。新規事業の成功には、さまざまな要素が必要です。
例えば、顧客ニーズを的確につかみ、市場規模を知らなければ
どのくらいの売り上げになるのかさえわかりませんので、
マーケティングも必要です。

 そしてもう一つ必要な要素がタイミングで、不確かな時代においてニーズをキャッチしたり、マーケティングを活用したりしても、
結果として絶対成功するという確証はありません。

 それよりも、いかにタイミングをつかむか、市場が顕在化したタイミングで商品やサービスを夜に出す事ができるのかが重要だったりします。

結局、やってみなければわからない新規事業ですから、市場が顕在化したあとから「あのときやっておけば良かった」ということにならないよう、
少なくともやる気のある若手社員の芽を潰さないことは重要と
言えるのです。

 次回は後継者の事例をご紹介させていただきます。


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