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ルールを作ったら企業は崩壊!? 働く人を幸せにする幸福経営とは②

──前野先生が「社員を幸せにする幸福経営」を実践している企業を挙げるとしたら、どの企業でしょうか。

長野県伊那市にある寒天メーカー・伊那食品工業さんが第一に思い浮かびます。
「いい会社を作りましょう」を社是に、社員にとっても社会にとってもいい会社にすることを第一に考えている会社で、社員に売り上げ目標は課していないんですね。
それでも、正しい努力をしていれば会社は報われるという考えで、48期増収増益を実現させています。
伊那食品工業のすごいところは、トップが社員を本当に家族のように大切にしていること。
だから社員はその思いに一生懸命応えるし、その一生懸命さにトップは感謝の思いとして福利厚生をどんどん充実させている。感謝と幸せがループしているんですね。

また、役割分担も主体的で、たとえば販売の人が「人手が足りない」と言えば、製造の人が自ら手伝いに行くし、会社の敷地内に併設している寒天レストランやショップ、ホールで地域の人に気持ちよく過ごしてもらうために、朝早く出社して掃除をする人は少なくない。

そこまで社是や理念が浸透するには時間がかかったと塚越寛最高顧問はおっしゃっていましたが、最高顧問が徹底してきたのは、何かに迷ったときは「相手が家族ならどうするだろうか」と考えること。
家族で話し合いをするときにプレゼン資料なんて作らないから、社内の会議も資料は作らない。
創業時は技術も資金もない零細企業だったのが、売り上げや利益は求めず、従業員を本当に家族だと思って何十年も貫いた結果、今では寒天業界のトップ企業になっています。
つまり、幸福経営が長期的に社員を幸せにすることを、この会社は証明してくれているのです。

──幸福経営に何か細かい手法が必要なのではなく、一本の筋の通った考え方が必要なのですね。
幸福経営にルールやマニュアルは一つも必要ありません。


ルールやマニュアルを作り始めると、どんどん巨視的な視点が失われ、どんどん細かいところに目が行くようになり、やがて承認やハンコが必要な書類であふれてしまう。

よく、ベンチャーの頃は幸せだったけれど、上場してルールまみれになって居心地が悪くなったという話を聞きますよね。


トラブルやミスがあると、ついルールを作りたくなるかもしれませんが、極論すれば、ルールを一つ作ったら「おしまい」です。
その瞬間から「不幸せ経営」が始まることを忘れないでください。
必要なのはルールではなく、心底信じて任せること。すると余計なプロセスがなくなって決断も早くなり、いいことだらけになりますから。

──大企業の幸福経営は難しいのでしょうか?
大企業でも、人を人として大切に思い、社員を幸せにするという意識変革ができれば、幸福経営は難しいことではありません。

日本の大企業と違うのは、合理的だけどテクノロジーをうまく活用して働く従業員が幸せになる、現代的な幸福経営をされていること。
そもそも、アメリカのForbesが「従業員のウェルビーイングを考えない会社は存在しない」と言い切るほど、アメリカでは幸福経営が常識です。

働く人をロボットとして扱う時代はとっくに終わり、いまや人を人として扱って幸せを追求する時代になりました。
人が本来あるべき姿に戻るチャンスだと捉えて、人を管理する「不幸せ経営」から脱却してほしいです。

一部抜粋

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