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脳卒中患者に対する上肢の課題指向型訓練のエビデンスと臨床応用#3 【ランダム化比較試験編Ⅱ/慢性期Part.1 2020年版】

課題指向型訓練はこれまでの研究数が多く、シンプルな課題指向型訓練に加えて、ミラーセラピーと併用するもの、電気刺激と併用するものなど数多くのパターンがあります。

ここでは、シンプルな課題指向型訓練を紹介します。

他の療法と併用するものは「派生型」とし、次の記事でまとめます。

慢性期の脳卒中患者に対する課題指向型訓練の上肢運動障害への効果 No. 1

da Silva PBら(2015)は発症から41.4 (11.89)ヶ月、年齢70.4 (7.83)歳の脳卒中患者に対する課題指向型訓練の効果を検証しました。

リハビリ開始前の介入前のFugl-Meyer Assessment Upper Extremity (以下、FMAUE)スコアは35.0(11.8)点だったことから、中等度の運動麻痺を有する人が対象だったようです。

Fugl-Meyer Assessment Upper Extremity: FMAUE
脳卒中患者の麻痺側上肢・手の運動機能の評価です。4つの下位項目から成り(A. 肩/肘/前腕関節、 B. 手関節、 C. 手指、 D. 上肢全体の協調性や速度)、全33項目について評価します。それぞれについて0〜2点の3段階で点数をつけ、0〜66点で評価します。66点が満点(最も状態が良い)です。

課題指向型訓練は下記の原則を遵守して実施されました。

①麻痺側もしくは両側の運動
②日常生活動作(整容、食事動作など)
③実際の物品操作
④実際の環境に合わせて複数の運動面(矢状面・前額面・水平面)で実施
⑤10回繰り返し・3分休憩

課題指向型訓練は1日あたり30分、週2回、6週間実施されました。

結果として、上肢の運動機能(FMAUE)、肩関節屈曲の自動可動域、握力は向上しました。

ただ、FMAUEスコアについてはMDCを超えるほどの変化ではありませんでした。

一方で、肩関節屈曲筋力、痙縮(Modified Ashworth Scale: MAS)は統計的に有意な変化を示しませんでした。

肩関節屈曲筋力が改善していないのに自動可動域が改善したということは、屈曲を阻害する肩関節伸展筋などの余計な活動が落ち着いた、という可能性があります。

FMAUEスコアも向上していますし、分離運動が進んだのかもしれないですね。

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