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高齢者の体力レベルについて考える

これまで多くの先行研究によって高齢者の体力に関する報告がなされていますが、その多くが寝たきり予防、転倒及び転倒に伴う骨折予防という視点に基づくものであるといっても過言ではなく、そこで捉えられている体力はLawtonによって報告された「人の活動能力の諸段階(Lawton, 1972)」から考えると「機能的健康度」ならびに「身体的自立」に相当し、人間として必要とすべき最低限の体力であるといっても過言ではありません。

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「身体的自立」に必要な体力は、いい換えれば介護を必要としない体力と捉えることが出来ますが、65歳以上の人口の75%は介護を必要としていないことが報告されており(柴田,1998)、また、平均寿命の延伸に伴い「健康寿命(健康長寿)」「活動的寿命(活動的長寿)」という概念が生まれ、更に高齢者の健康課題として「プロダクティビティ」を重視すべき(柴田, 1998)という考え方に至る現在、高齢者の体力について更なる検討、考察が必要であると考えられます。

なぜなら、「健康寿命」「活動的寿命」「プロダクティビィティ」という概念や考え方は「人の活動能力の諸段階」でいえば、最も高次レベルの能力である「社会的役割」に相当するものとなり、そのような能力を発揮する上で必要とすべき体力は、上述した「身体的自立」に必要な体力よりも高いレベルになる可能性があるといえるからです。

従って、今後、高齢者の体力を考える時には、プロダクティビィティの増進に必要な体力がどの程度のものなのかということについて検討していく必要かあるといえますが、プロダクティビィティの増進に体力が直接的な影響を及ぼすとはいえない面もあり、十分な研究が行われていない状況にあるといえるでしょう。

超高齢化社会において、高齢者に必要な体力は「身体的自立」を目標とするレベルで良いのか、より質の高い生命を全うする上で更に高いレベルの体力が必要となるのか、我々運動指導者としては更なる研究に期待したいところです。

参考:
Lawton, M.P. (1972). Assessing the competence of older people. In: Kent, D.P., Kastenbaum,R., & Sherwood, S. (Ed.). Research, Planning, and Action for Elderly: the Power and Potential of Social Science, New York: Behavioral Publications. pp. 122-143.

柴田博(1998). 第 2 章 求められている高齢者像. 東京都老人総合研究所(編)サクセスフル・エイジング 老化を理解するために ワールドプランニング pp. 42-52.

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