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3 任意取調べの限界

1 本件取調べは、形式的には刑事訴訟法(以下、略)198条1項の任意同行後の取調べとして任意捜査の一環として行われている。そのため、「強制の処分」(197条1項但書)にあたれば、令状主義に反することとなるので違法となる。そこで、「強制の処分」の意義が問題となる。 (1)197条1項但書の趣旨は、国民の重要な基本的権利・自由を制約する処分について、厳格な要件手続きを明らかにすることで、国家権力の発動に民主的正統性と予測可能性を与える点にある。  そこで、「強制の処分」とは、個人

    • 2 職務質問・所持品検査

      1 K及びLの各職務執行は適法か。警察官職務執行法(以下、警職法)2条1項の規定に基づく職務質問を行うため停止させる方法として必要かつ相当な行為であるか問題となる。 2(1)まず、本件においてXとYは薬物密売の外国人が出没する通りを歩行していたところ、警察官の姿を見て急に向きを変えて、もと来た道を急足で戻り始めたことから、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」と言える。 (2)そして、職務

      • 事例演習刑事訴訟法 1.任意捜査と強制捜査

        第1 小間1について 1 本件捜査は、写真撮影として五官の作用により対象を認識し、その私的領域に侵入する「検証」(刑事訴訟法(以下、略)218条1項)に該当するものであるが、令状の発付を受けることなく実施している。そこで、本件捜査は令状主義とならないか。「強制の処分」(197条1項但書)の意義が問題となる。 2(1)197条1項但書の趣旨は、国民の重要な基本的権利・自由を制約する処分について、厳格な要件手続を明らかにすることで、国家権力の発動に民主的正当性と予測可能性を与える

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