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船の上のドーラおばさん【スペイン-モロッコ編】
休みを見つけてはふらーっとどこかに出かけたり、世の中の猫たちと戯れたり。そんな私の旅についての記録です。
学生時代から海外を放浪するのが好きで、ヨーロッパやアジア、南米など放浪していました。コロナ期間で海外もだいぶご無沙汰でしたが、そろそろ再開させたいなーと思ってます。
ジャパニーズ・シャイボーイ
さて本題に入るまえに・・・。私は典型的なジャパニーズ・シャイボーイです。仕事のときは割り切って図太くやっていけるのですが、普段の生活だとそうはいきません。
今でもよく覚えているのは、小学生のときの「緑の羽根募金」。募金係の子たちが「募金おねがいします!」って言いながらずらりと並んで、募金をしたら緑の羽がもらえるイベントありますよね。あれ、募金するのってすごく勇気がいりませんか? 募金係の子たちのキラキラとした圧。「あ、あの子募金したんだ」って思われ、目立ってしまうのではないかという恐怖心。。
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もちろん当時の私にも、募金は大事なことなんだってわかっていました。それでも、いつも500円玉という大金を握りしめて、朝礼のチャイムが鳴るまで木陰で息を殺しながら、そのキラキラとした圧を遠目でじっくり見守っていました。
(最終的になんとか募金して猛ダッシュでその場から逃げました。そして勲章である“緑の羽根”をもらい損ねて、それはそれでガッカリしたものです。。我ながら面倒くささ全開)
スペイン→モロッコへ船旅
そんな私が学生時代、山を越え、海を越え、大陸を越えて、海外にひとり旅をしたもんだから自分でも驚きです。そのときは社会人になる直前だったので、チャンスは今しかない! とヨーロッパ+モロッコの旅へと向かいました。
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なぜ +モロッコか? スペインとモロッコの間にあるジブラルタル海峡は、フェリーで1時間足らずで着いてしまうんです。フェリーに乗って国境を越えられるのは、飛行機にはないドキドキ&ワクワクがあります。島国ニッポンに生まれた我々、少なくとも私にとってのドリームです。それに、フェリーって自由に船内で移動できるので、いろいろな旅人たちと会えるんですね。私と同じようにバックパックを背負った欧米の旅人、ビジネスマン、フェリーで働く人たち。意外にもアジア人はあまり見られませんでした。
船の上のドーラおばさん
異国情緒な空気と若干の船酔いで疲れてしまい、適当なイスを見つけて休んでいると隣に座っていた女性が声をかけてきました。
「もしかしてあなた、日本人? 私、日本にぜひ行ってみたいの」
長い白髪をなびかせた、美しい女性でした。地中海に照りつける日差しがよく似合う70代くらいのフランス人女性です。いかにも肝っ玉ばあちゃんという印象。(たとえるなら、天空の城ラピュタに出てくるドーラのような空気感……)
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短い間でしたが彼女からたくさんの旅の話を聞きました。南アフリカで危険な目に遭った話。日本で食を堪能しながらドライブの旅をしたいという話(彼女の最大の不安は「日本の標識は、日本語が分からなくても理解できるか?」でした。残念ながら、難しそうな・・・?)。
彼女と話しているとあることに気づきました。彼女は積極的に周りに声をかけて、誰かに席を譲ったり、モロッコの港町タンジェまでの行き方を聞いたり。自分で積極的に情報をかき集めていたんです。
「色んな人に声をかけてすごいですね」
すると彼女は「どう思うかは相手の問題だからね」、と言いました。ん、相手の問題? その理由を聞くと、彼女は「オファーを断るも、拒むも、相手の問題だよ。ひとには優しくしておくもんだ。なにか良いことが起こるかもしれないからね。それに……」
ひょっとして、自分って冷たい人間?
彼女の言葉には本当に説得力がありました。実際、港に着いてから私を目的地まで連れていこうとしてくれたんですから。
「それに、あなたがもし誰かに手を差し伸ばしたとき、相手がそれを受け取るかどうかは、相手の問題。もし受け取られなくても、あなたの問題ではないの。けどね、あなたが手を差し伸ばさない限り、なにも起こらないし、始まらない」
ふと小学生の頃の自分を思い出しました。募金したいのに、周りから気づかれないように息を殺して木陰に隠れてキラキラを見つめていたあの頃の私です。
私は空気を読み過ぎて、よく駅のホームで不自由している方に声をかけ逃したり、転んだ人に手を差し伸べられなかったり、後悔することがあります。どうして自分はこんなに冷たい人間なんだろう? けれど彼女の言うとおり、そんなの「知ったこっちゃない」。そもそも手を差し伸べない限り、相手は断ることすらできないのだと。。
後から調べてわかったのですが、心理学で「他人との境界を引く」と表現するみたいです。境界を引いたうえで、相手の境界を自分で超えていくことが大事なわけです。迷惑だろうとなんだろうと、自分がまず歩み寄らないと、相手は拒否したくても拒否できない! それってお互いにとって、すごく損なんじゃいかって。当たり前のようだけど、当時の私にはなかなか難しいことでしたし、ひとつの発見でした。
モロッコに到着して
彼女としばらく会話をしていたら、フェリーはモロッコのタンジェに着きました。港のバス停には大勢のモロッコ人たちが集まってきて、荷物係になるからチップ欲しいだの、好き勝手言ってくる。アジアを旅したことある方ならよく見る光景かもしれませんが、その比にならないくらい、活気ある男たちがわんさかと集まってきて、荷物を持つぞ、宿はあるぞ、と代わる代わる言ってくる。大谷さんが空港に着いたときってきっとこんな気分なのか?(急に時事ネタ)
そうやって集まってきた人の群れに飲み込まれて、旅人はみんな散り散りに。気づけばフェリーの上で出会った、あのドーラおばさんも喧騒に飲み込まれてどこかへいなくなっていました。
なんとか彼女が掴んでくれた情報を頼りに道をかき分け、宿まで道すがら困り顔のアジア人を見かけました。話してみると、その日までに首都マラケシュに行く予定だったけどもうバスがないとか。近くに宿取ってますけど、一緒に行きます? というと「え? はい!」とかなって。ドーラおばさんみたいにはいかないけど、ちょっとは肝を据えられたのかなとか、願わくば。
おわりに
あのドーラおばさんとの出会いが私の価値観を180度変えたかというとそんなことありません。でも、あれから日本に来たかな? 運転して美味しいもの食べたのかな? とか思ったり。そしてもしも彼女の姿を見かけることがあったなら、迷わずおせっかいを焼いてあげたい。そういう奇跡のような妄想を、夢物語を膨らませないわけにはいかない私がいるのでした。
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