スリランカ戒厳ライフ1

不思議なもので、タイの自宅にいる時は、2−3日外に出ないなんてこともザラにあった。
全部デリバリーで済ませて、一日中ダラダラ過ごすなんて、普通だった。
しかし、このスリランカでの戒厳令で、そんなものは全て「自分には自由がある」という大大大前提があるからこそだったのだと、改めて思い知った。
「いつでも出れるけど、自分の選択により出ない」のと、「出るな、選択肢はない」と言われているのでは、もう全くの別物である。ソフトな刑務所である。
一度こっそり抜け出して海に行ったが、帰りに警察に捕まるという失態を犯した。
しかし取り調べを受ける私の横で、白人はスルーパスだった。同じホテルに泊まっていて、条件は同じである。
心底ムカついた。咳をしてやろうか、という無駄な抵抗も思い浮かんだが、ここスリランカでは武力行使もあり得るので平謝りである。
(しかし三日後から白人もスルーパスではなくなった)

さてスリランカの戒厳令であるが、原則政府が定めた時間以外は外出禁止。
これがまた不規則で三日に一回、朝6時から昼の2時までとか、二日に一回とか、その時が来るまでわからない。
一番長かった時で四日、これは流石にストレスでハゲるかと思った。
戒厳令が解かれると、大体みんなスーパーに直行する。入店まで3時間かかるし、その行列は500メートルとかである。外人がこぞってインスタにその様子を投稿しているので、全く行く気にならない。こういうところ、私は危機感があまり無いというか、お金無い時に新しい靴を買うタイプの人間で、自分でも愚かだと思いつつ、もう性分なので開き直っている。しかし、近くの個人商店でクッキーは買えるので、私は「お菓子担当大臣か」と自分で突っ込むほど、お菓子を買う。そして周りに配って、自分のは日数分取っておく。甘いものが切れると更にストレスが増すからだ。さて、スーパー並ぶ勢では無い私は海に直行する。とりあえずサーフィンを3時間くらいはし続ける。最高の気分である。
この時に海で前回と同じ外国人に会うと、「君も同じ穴の貉か」と勝手に共感して、勝手に「ひとりじゃない、頑張るぞ」とか思っている。そして多分向こうも同じ事を思っているが、波にドロップインされたりしたら、そんな平和な気分は一瞬で消え、かなりガン飛ばしている。ここは変わらない。
とにかくサーフィンをいっぱいした日は、戒厳令など関係なく、いつもぐっすり寝るので、普段通りという感じで特にストレスはない。

外に出れない日は、ネットフリックス様にお世話になり、本をネットで読んだり、軽く自分で運動をしている。友人たちからのメールは秒で返せる。
ほんとwi-fiがなければ、自死していたかもしれない。
気が触れて、そこら中に絵を書きなぐっていたかもしれない。爪が深爪になるまでヤスリで削っていたかもしれない。
腱鞘炎になる程、日記を書いていたかもしれない。ホテルからビーチに繋がる地下トンネルを掘っていたかもしれない。
まあどれも、それはそれで充実して良さそうなんだけど、それでも外部と繋がれるインターネットはやはり素晴らしいなと改めて思う。

ホテルのシェフ、セキュリティ、そして従業員の三名とも仲良くなった。
彼らのお陰で生かされている。もう足を向けて寝れません。
ご飯も美味しいし、冷房は効いてるし、シャワーもあるし、インターネットも繋がる、カードも使える。
これでサーフィンさえ毎日出来ればもう数ヶ月我慢できるけどな、なんて思っていた。

しかし、平和はやはり長くは続かない。
私以外の客が全員チェックアウトしてしまい、私が最後一人の客になる。
従業員は三人。
戒厳令で今後も客が来る予定はない。
こんなの頭使わなくても分かる。ホテルは閉めるだろう。
そしてやはりその通りになって、閉める前日の夜に告げられた。この直前の決定がやはり途上国らしくて痺れる。色んな意味で。しかししょうがない。笑顔で今までありがとうと告げ、カードでお金を精算し、荷物をまとめる。

やばい。今度はどこに行こう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?