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【経理】壁に耳あり障子に目あり。~守秘義務の話~

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

今日は、経理部の守秘義務の話をします。


個室でない外食ランチで、仕事の話?

自分が新人の頃に厳しく教わったことで、本当に今でも助かっていると思えることの一つに、「守秘義務に対する考え方」があります。

これは経理部の新人の頃にも丁寧に教わったことでもあるのですが、舞台照明の新人の頃にも厳しく教わったことでもあります。

それは、「個室でない外食で、仕事の話は絶対にするな」ということです。

当時、20代の自分は「固有名詞を話に出すことなどないし、他人に内容がわかることなんてない。細かいことばかり言ってきて、上司って面倒だな。」と思ったこともありました。それでも、とりあえず教えを破ることなく今まで仕事を継続してきて、今さらながらに実感したことがあります。

それは、「個室でない外食で隣の席から聞こえる "どこかの会社の何かの話" は、隣の誰かにしっかり聞かれて、時に細部まで理解されていることもある」ということです。

聞き耳を立てているわけでなくても、うっかり聞こえてしまうときは、本当にげんなりした気持ちになります。

イニシャルトークは、意味がない。

「守秘義務の重要性は理解している。だから、外食ランチで仕事の話をすものの、誰にもわからないようにイニシャルトーク(注:固有名詞を出さず、"P社" "Sさん" などイニシャルで話をすること)をしている。」と言う方もいらっしゃるかもしれません。

確かにイニシャルトークであれば「守秘義務 "違反"」になることは少ないでしょう。

ところが、イニシャルトークは、「会社の信用を守る」という点ではほとんど意味がありません

「皆が聞こえるところで仕事の話をしている」という時点で、守秘義務感覚に厳しい方にとっては既にアウトです。「ああ、この会社は、経理部が外食ランチで仕事の話をするような会社なんだ」と思われています。その会社がどこであるかも、話の内容でおおよそ推測されています。しかも、理解できる人にとっては、ほとんど内容も理解されてしまっていることがあります。(もちろん、その理解が誤っていることも多いと思いますが、「理解したと思われてしまっている」「推測させるような話し方をしている」時点で失敗だと思います。)

業界・情報を知っている人間は、少しの情報だけであらゆるストーリーを組み立てられます。だからこそ、国防の観点から官公庁の情報公開はなかなか進まないわけです。

家族にも友人にも、話すことではない。

仕事上で知りえた内容は、家族や友達にも話すことではありません。

「〇〇で有名な、〇〇さんに評価してもらえた」
「取引先の中に〇〇社(有名企業名)があるのだけれど」
「〇〇さん、実際に会うと性格が悪い人だった」

例えば勤め先が上場企業で、誰でも取引先を調べられる場合などは仕方がないと思うのですが、自分が言わなければ知らない内容は、家族にも友人にも伝えることではありません。

不満や愚痴は、その原因となる職場内で片付けるか、プライベートの趣味で発散できる方法を見つけた方が良いと思います。逆に何か自慢をしたくても、その具体的内容は家族や友達に伝えることではありません。プライベートには持ち込まないような工夫・意識が必要だと思います。

「仕事で評価されて、嬉しかった」「頑張ったけれど失敗して、辛かった」という事実は全力で伝えて良いと思いますが、具体的な内容は伝えるものではないでしょう。

顧客の信頼を失わないために。

このところ、飲食店やカフェで耳に入る会話の内容が「その会社の守秘義務感覚は大丈夫かしら」と思うことが多く、書いてみました。

世の中の全員が「そのくらいなら、守秘義務、関係ないよね?」という感覚なら良いのですが、「このレベルの守秘義務感覚の会社とは、決して取引しないな」と思うタイプの方も少なくないでしょう。

顧客の信頼を失わないために、守秘義務の感覚について、今一度、見直してみてはいかがでしょうか。

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ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。

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