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夢と現を彷徨う、美しくも苦しい歌のMV

レディー・ガガのMVにドはまりして、狂信的な勢いで彼女の曲を聴いていたのは、わたしが大学生の頃でした。

キャッチ―な衣装とダンス。
全裸に近い状態で歌を歌うガガ。
そして挑発的なストーリーライン。

そんなドはまりしていたガガの曲も、留学が終わり、学生という肩書がなくなり、関東へ帰ってきて、仕事を始めるうちに、全く聴かなくなりました。
アルバムが出たり、映画に出ていたりして、知ってはいました。
けれど、以前のようなぶっとんだMVをあまり見なくなったのは事実でした。

そして昨年末。

久々に昔の曲をApple Musicで聞いていたところ、昨年5月にリリースされた新しいアルバム"Chromatica"を発見。
試しに聴いてみようかしらと思い、MVを色々漁っていたところ、遭遇。

画の撮り方や衣装、カメラの動きが、わたしが好きなターセム監督と酷似していたMVでした。
いや、厳密には、酷似ではなく、彼が手掛けたMVだったんですけどね!

ターセム監督で有名な作品と言えば、ジェニファー・ロペス主演の「ザ・セル」やリー・ペイスの格好良さが遺憾なく発揮されている「ザ・フォール/落下の王国」でしょうか。
両方とも古い作品ですが、「ザ・セル」はサスペンス、「ザ・フォール」は大人のおとぎ話です。
両作品とも衣装を石岡瑛子氏が担当しており、ターセム監督の世界観の中で見る彼女の衣装は、圧倒な美しさと世界観の奥行きを演出していました。
ちなみに2月14日まで東京都現代美術館で石岡瑛子展が開催されております。
とてつもなく行きたい。というか、絶対行く。

―と、ターセム監督の映画について語り始めるとどえらく長くなるので、またの機会にしておきます。

このMV、何が衝撃的だったかって、ほとんどメインとも取れる美しい映像が指し示す最後のオチです。
後半へ行くにつれ、画は少しずつ暗くなり、不穏な雰囲気の中、ガガが泣き叫び始めます。
そして気が付くと現実に引き戻されており、事故にあったガガの意識がAEDで戻り、引き続き泣き叫ぶシーンへ結ばれます。

この曲の題材となっているのは、メンタルヘルスです。
ガガ自身、過去の事象によりPTSDや鬱を患っているという話は有名な話。
そして、それらをコントロールするために服用している薬について、この曲を書いたそうです。

そして以前よりガガのストーリーに共感し、長い間温めてきたアイディアを、ターセム監督が提案したそうです。

ターセム監督の世界観には、果てしない美が大前提にあると思っています。
けれど、美しいはずなのに、様々なスパイスが加わり、見ているこちらはそこはかとない切なさを感じます。
この壊れそうで壊れない、瀬戸際のような世界観がわたしは好きです。

そんな夢と現を彷徨う世界観と、ガガの夢と現の境界が分からなくなる瞬間の安堵と恐怖が美しく混ざり合ったMV。

アーティストとは、本当に偉大だと思うのです。

おしまい

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