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CIAの破壊工作マニュアルに学ぶ、ダメな組織の作り方

第二次世界大戦中のアメリカに「Office of Strategic Services(OSS)」という組織がありました。この組織は現在の中央情報局(CIA)の前身であり、スパイ活動を調整するために設置されました。スパイ活動の他にもプロパガンダ、転覆・破壊、戦後処理に関する企画などを任務としていたそうです。

そのOSSが1944年に作成した「Simple Sabotage Field Manual」というものが一時期CIAのウェブサイトで公開されていました。「Sabotage」とは元々はフランス語で「破壊活動」の意味であり、日本でも労働争議の手段としての「同盟怠業」という意味でサボタージュという単語が使われていました。これがいわゆるサボりの語源です。このマニュアルは今はウェブサイトから削除されていて入手できませんが、私が一部を翻訳していたのが残っていました。

破壊工作マニュアルの内容

マニュアルには、敵国の組織活動や生産性向上を妨害する方法が述べられていて、破壊する対象ごとに章が分かれています。

・建物 (Building)
・工場 (Industrial Production : manufacturing)
・金属 (Production : Metal)
・鉱業 (Production : Mining and Mineral Extraction)
・農業 (Production : Agriculture)
鉄道 (Transportation : Railways)
・自動車 (Transportation : Automotive)
水上交通 (Transportation : Water)
・通信 (Communication)
電力 (Electric Power)
・組織 (General Interference with Organizations and Production)
・モラルを下げ混乱を引き起こすための一般的な手段(General Devices for Lowering Morale and Creating Confusion)

この中で最後の2つの章「組織」と「モラルを下げ混乱を引き起こすための一般的な手段」がいわゆる組織力を弱めることに関わる内容で、この2つの章の内容について簡単に紹介します。

組織の生産性の下げ方(General interference with Organizations and Production)

組織の生産性の下げ方については10の具体的方策があげられています。

1. Insist on doing everything through “channels.” Never permit short-cuts to be taken in order to expedite decisions.

何事も指揮命令系統にこだわること。意思決定を早めるための抜け道を決して認めてはならない。
2. When possible, refer all matters to committees, for “further study and consideration.” Attempt to make the committees as large as possible - never less than five.

さらなる検討と考察のためにあらゆる案件はコミッティー会議にかけること。コミッティーの規模は出来るだけ大きく、必ず5人以上で構成すること。
3. Haggle over precise wordings of communications, minutes, resolutions.

連絡文書や議事録では細かな言葉尻にこだわること。
4. Refer back to matters decided upon at the last meeting and attempt to re-open the question of the advisability of that decision.

前回の結論が正しかったかについてほじくり返して何度も議論すること。
5. Advocate “caution.” Be “reasonable” and urge your fellow-conferees to be “reasonable” and avoid haste which might result in embarrassments or difficulties later on.

注意深さを求めること。決断を急ぐと後々問題が起こったり、後で自分が恥をかくことになるぞと警告する。
6.Be worried about the propriety of any decision - raise the question of whether such action as is contemplated lies within the jurisdiction of the group or whether it might conflict with the policy of some higher echelon.

組織の位置づけにこだわる。本当にその組織の権限内であるのか、他の事案との矛盾がないか、上層部にお伺いをたてるべき内容でないかという疑問を常に指摘する。
7.Insist on perfect work in relatively unimportant products.

重要でない部分にまで完璧な仕上がりを求める。
8.Hold conference when there is more critical work to be done.

重要な仕事がある時にどうでもいい会議を行う。
9.Multiply paper work in plausible ways.
似たような書類をたくさん作らせる。
10.Multiply the procedures and clearances involved in issuing instructions, pay checks, and so on. See that three people have to approve everything where one would do.
手順や手続きを複雑にする。1人の承認でいいものでも3人の承認が必要なようにすること。

ここに来るまでにきっと多くの人が「これって自分の会社のこと?」って思ったと思います。特に大企業に勤めている人は日々こういう場面に出くわしていると思います。苦笑しながら次の章も見てみましょう。

モラルを下げ混乱を引き起こすための一般的な手段

組織や会議の場において

可能な限り頻繁に、可能な限り長いスピーチを行う。要点は出来るだけ長い逸話や個人的な経験談を用いて説明し、愛国的(愛社的)なコメントも忘れないこと。
出来るだけ頻繁に関係のない問題を持ち出す。

組織責任者の立場として

求められた仕事が100%完了するまで提出させない。部分的に完了しても分割して提出することで業務を先に進めてはいけない。
新人教育はいい加減に、不完全で誤解を含んだ指示を与えること。

モラルの下げ方

質問を受けたら、長くて理解困難な説明で答える。
できの悪い従業員を褒め、不当に昇格させる。できの良い従業員にダメ出しをする。
常にイライラして怒りっぽくする。自分はトラブルに巻き込まれないようにする。
人前で立場の弱い者を罵倒する。
あらゆる場面でヒステリックに怒鳴る。

どうでしょう。読んでて恐ろしくなりませんか?戦時中のスパイ組織が敵国を弱らせるためのマニュアル本ですよ。自分の会社の中にCIAのスパイがいるんじゃないかと疑ってしまいます。

強い組織を作るために

では強い組織を作るにはどうしたらいいか。もうこれは明快ですね。この反対をやればいいのです。でもいきなり自分だけこの反対のことをやり始めてもうまくいかないので、まずは仲間を作りましょう。そして上司とも共有しましょう。そしてそれが広がって、いつかこんなことやってたら会社がダメになるとみんなが気付き、変わらなきゃ!となればいいなと思います。私も自分の部署から始めています。会社全体はまだまだCIA状態ですが(苦)。変われる会社であれば変われるとおもいますし、変われない会社はそのうち淘汰されるしかないですね。それも新陳代謝という意味で正しいプロセスなのかもしれません。


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