見出し画像

【怪談イベントレポート】秘密の怪談ナイト#6 福岡

2023年7月29日。
九州はあんなに晴れ渡っていたのに、午後17時を過ぎた頃から突然の夕立が降り始めます。
まるで、怪しい何かが足音と気配を消してあの会場に入るためのように…。


ロマンさえ感じる天候と共に始まった「秘密の怪談ナイト」。福岡は大名のど真ん中に立つLiveHouse秘密-HIMITSU-にて行われました。
第1回は2022年2月に始まり、今回でなんと6回目!
怪談の世界に魅了されて間もない私が初めて参加したこのイベントの感想文をここに残しちゃう~~~!
楽しすぎて刺さりまくったんで長い~~~!



怪しいライブハウス秘密

天国と秘密の外観

2020年11月にオープンした、福岡県内ではまだ新しいライブハウス。
表はバー営業スペースで、奥に入るとステージがあるイベントスペースという面白い作りです。

天国と秘密内部図

近くの居酒屋に行く時などに気になりまくっていたお店でした。
中からピンクの照明が煌々と漏れ出て、店名のネオンが大名の夜の街にひと際存在感を放つ外観。
「新しいエッチな雰囲気のお店か??」
正直に言うと私はこう思っていました。本当にすみません。
しかし調べると、音楽ライブのみならずトークライブも行っているめちゃくちゃ面白そうなライブハウス&バーだと知るのです。
オープンから程なく私は鹿児島県に引っ越しちゃったので足を運ぶ機会を逃していましたが、やっと今回初潜入!

ライブハウスはどうしても古き良き歴史が刻まれ、ヤニや傷や落書きのようなサインで塗れるのですが…(それはそれでとても良い☆)。
新しいこちらはもちろんとっても綺麗!!!今回は奥のイベントスペースのみしか入っていませんが、まず匂いが違う!ライブハウス特有の香ばしい(?)匂いがありません。しかもトイレは女性専用も完備!!!
生のイベントやライブを観たいけど、ライブハウス自体が恐かったり緊張するという方にもオススメできる場所です。私も今後何度も遊びに行きたいと思いました。

前置きが長くなってしまいすみません。それぐらいこのライブハウスが良いなと思ったので書かずにいられませんでした。

ちなみに、ここまで読んでアーカイブからライブハウス秘密の雰囲気を味わいたいと思った方はコチラへどうぞ

そこは△▼ヒミツ集会所▼△だった

開演前の会場内

会場内には60名弱の人間が入っていたと思われます。
ステージを覆うカーテンには森の中で遊ぶ小鹿たちが描かれ、すぐ横にはミラーボールも。なんだかサーカスのテント内のような雰囲気もあり、今から見世物小屋営業でも始まっちゃうんじゃないか!?というワクワク感を味わえます。
高すぎないステージと客席も近く、程よい緊張感と高揚感に包まれた会場は△▼ヒミツ集会所▼△とでも言いたい怪しさでした。

ゾクゾクとお客さんが入り気づけば立ち見もいらっしゃる程。これだけ大盛況のイベントが福岡であるって嬉しいです。どうしても地方勢は生イベント参加が難しくなるけんね…。

ヤバイ5人が登壇

そうして始まった秘密の怪談ナイト。
まずは自己紹介のようにひとりずつ怪談を語って登場します。

一番手はオオタケさん
福岡で「怪談収集家」として活動されています。
恥ずかしながら怪談界隈のことを本当にまだ全然存じ上げていないので、このイベントをきっかけにオオタケさんが歩まれてきたことを調べてみました。そこで目にしたZINEがこちら。

元々私が泣き虫だということを抜きにしてもこれはハートに刺さって目から涙が溢れてしまう文章だと思います。怪談が大好きで実直に向き合ってご自身の夢を叶えるための道を作ってきたことが伝わります。

怪談収集家 オオタケさん

そんなオオタケさんがイベント一発目に語るのは「おかじ」の話
とある宗教観を持ったおじいちゃんが信じるものを貫く中で、段々と変になったり不思議なことが起こったりするというもの。しかも今回の話を出演者で民俗学愛好家の江本雄彌さんに聞いてもらったところ、ある事に繋がっていったそうなんです…。それが何ともゾクっとしました。
ただ、家族が困り果てたおじいちゃんの行動は愛する人のためであると最後に知るんですね。怖さと不思議さで面白い怪談なんですが、オオタケさんが語ることで優しさを纏った怪談となります。取材された体験者さんへの敬意と怪談愛が滲み出るようなお話しでした。揺れるピアスが可愛い。


続いては土方幽さん
怪談を語ったり書いたりと熊本で活動されています。
「VRC怪談集会_赤い部屋」を主宰されており、仮想現実空間で怪談集会をするという勢力的かつ積極的に怪談に浸かっているお方!
近々「百物語」イベントを開かれるそうで、百話語るまで終わらない夜が来ます。場所を問わずに怪談集会をするというのは秘境に住んでいる私にとっても理想です。

肥後の怪談書き 土方幽さん

語られたのは「不気味な橋」の話です。
土方さんの聞きやすい声と厚みのある語り口調。「これぞ怪談!」という引き込まれる世界観があります。厭な雰囲気しかないこちらの怪談は、もしかしたら実際に起きた嫌な事件が関係するかもしれないというもの。多すぎず少なすぎずの情報量は、聞き手に丁寧な想像を与えてくれます。しかも畳みかけることはない語りで迎えるクライマックス。それがよけいに怖さを増長させ、終わった後も私は少し考えることになりました。アーカイブで再度聞いてもゾクっとします。衣装と思われる手袋が不思議な不気味さを加えていました。


「箸休めのつもりで聞いてください」
そう話し始めたのは民俗学愛好家の江本雄彌さん。事前にどんな方か調べようとしても情報がなくSNSもされていないようでワクワクしていたところ、爽やかな好青年が出てきて裏切られました!これはズルいぞ!
怪談を好きになり民俗学愛好家として活動するようになったルーツは父親にあったとのこと。江本さんは幼い頃、毎晩寝る前にお父さんが怪談を話してくれたそうなんです。怪談の英才教育羨ましすぎますね。

民俗学愛好家 江本雄彌さん

そう教えてくれた江本さんはお父さんの怖い実体験を語ります。「林間学校で出会った女の子」の話。これを寝かしつけで語るお父さん、センス良すぎて面白過ぎるでしょ!
ちなみに江本さん、今回のイベント後にYouTubeとSNSを始められています。こちらも必見です!!!


続いて4番手は伊勢海若さん
怪談収集家でおばけ座に所属されています。
「ねないこ だれだ」のおばけが描かれたバケットハットと黒のロングコート姿で登場。山から下りてきたボス感がたまりません。
ちなみに、先日行われた最恐戦の振り返りトークがおばけ座で配信されています。ここで話されている伊勢さんの「自身が貫きたい怖さ」「怪談との向き合い方」もとっても面白いんです。是非そちらもどうぞ。

怪談収集家 伊勢海若さん

もうね、まさか怪談でツボにハマって笑うとは思いませんでしたよ…。そんな変わり種怪談の中身は「金縛りで現れた恐ろしいトミーズ雅」の話。体験者の方は金縛りに遭った最中、自身の足元に黒い影がほふく前進ですり寄ってきたそうなんです。「イヤだ!」と思って目をつむると、そこにはめちゃくちゃ笑顔のトミーズ雅がまぶたの裏でこっちを見つめてきたんだと!
え??と、トミーズ雅????!!!!!
思わず会場内は驚きとも笑い声ともつかないどよめきが起こりました。そんな事気にすることなく夢中で語る伊勢さんの勢いがまたすごい。これは本当にアーカイブで体感してほしい!すごい複雑な感情になります!


5人目最後に登場するのは恐不知の怪談師、毛利崇志さん
これはもう天から授かった才能だと思うんですが、毛利さんは顔面から出る説得力が強いと私は思っているんですよね。なんて言うか、語りを聞いている時に顔から眼が逸らせないんですよ。聞き手の集中力を顔が先導してくれる。これは語りをする上で羨ましすぎる魅力のひとつです。って考えている時にふと浮かんだのが「二〇加煎餅」でした。さすが博多の男だ。
最恐戦に勝ち上がった毛利さんといわおさんを私はめちゃくちゃ応援しています。なんとなくSNSでは言えないのでここでコッソリ。

恐不知 怪談師 毛利崇志さん

「九州三県から集まってのイベントですが、、、これは京都のお話です」
と語り始めたのは体験者の方が「恐不知の会話から思い出した記憶」の話。
不意に思い出してしまう不快な記憶、恐い記憶って確かにあるな、と聞いていて思います。体験当時の情景や気温までもが伝わってくるような語りは「さすが」としか言えない勉強になるものでした。いやー、これは恐かった。「うお~」と思わせられた先にもまだまだ続きがあり、今も終わりのない怪談なんですよ(これは聞いた人だけが分かる)。きっと体験者の方自身が一番恐く、いつまでも引きずってしまいそうな話でしたが世に出してくださったことに感謝したいです。


ここまでで開演から約40分程が経過。濃密な怪談の時間でした。

乱れ打ち座談会

小休憩後は5人揃っての座談会になります。

ヤバイ5人の座談会

まずはせっかくなのでと、九州の話から始まりました。地方開催だからこそ観客としてはローカルネタが嬉しいもの。毛利さんが語る箱崎の話は噂で聞いたことがあったので、実体験の不思議な話は更に興奮しました。現地の今を知っていることでリアリティが増すんですよね!

続いて伊勢さんが話す福岡市のクラブBに纏わる不思議な話から、機材トラブル繋がり…ということで土方さんがある楽器演奏時に起きた不思議な話を語ります。これ、その楽器演奏を録音した音源にその現象が記録として残っているんです。そして実際にその音源を聞かせてもらえることに!こちらはアーカイブでも聴けますので是非!
ただ不思議な現象が起きたというだけでなく、その珍しい楽器に纏わる語り継がれた歴史。また、その方でしかこの現象を起こせなかったんではないかと思われる考察など掘れば掘る程出てくる宝の山のような怪談でした。
この話に関して江本さんが民俗学の観点からも考察を挟んでくださり、観客席もホクホクしています。

座談会だからこその、色んな方の観点から成る考えを聞けるのが楽しいんですよね…。こういうの大好き!!!!また5人の皆さんは怪談に精通するヤバイ方々なんですが、だからこそ怪異にも怪異に対する考えも寛容でいらっしゃるんです。だからこの方たちに体験談を話したくなって、不思議な話がゾクゾクと集まってくるんだろうな等と考えていました。


羨ましい金縛り怪談

金縛り怪談を語るオオタケさん

そしてここでオオタケさんにバトンタッチ。伊勢さんの変わり種金縛り怪談に返す話を語ります。
伊勢さんが持つ金縛り怪談の中には、冒頭に語った「恐すぎるトミーズ雅」の他に「東方神起が現れる金縛り」の話があります。黒い影が現れる金縛りに体験者さんが困っていたところ、ご友人のアドバイスで黒い影が推しの東方神起になるよう念じるんです。そうすると、本当に黒い影が東方神起になったと!!夢のような羨ましい金縛り!!今の私だったら、奇妙礼太郎さんに出てきてもらって耳元で歌ってほしいです←
この伊勢さんの話に対して、オオタケさんが「推しのホストが〇〇してきた金縛り」の話を返してきたんです!いや面白過ぎる。

と聞いていたところ、私も自身の金縛りを思い出したんですよね。


10代後半で初めて金縛りにあった時、何日も続いて本当に困ってたんですよ。と言うのも、寝ているベッドに何かが乗ってくるんです。当時軋みやすいベッドに寝ていたので、足元からベッドに何かが上がってきたのがすぐに分かりました。金縛りの最中はもちろん動けず目も開けられず。それが不快でたまらなかったんですが、ある日考え方を変えたんです。
「これは死んだ猫が会いに来たんだ」と。
数年前に亡くなった愛猫も、確かに生きていた頃はそんな風に足下からベッドに上がってきたなと思い起こしたんです。そう考えると怖さが半減されました。そして、その何かの気配は飼っていた愛猫のように私が寝ているわきの下に丸まって一緒に眠ったんです。
「ああ良かった」と安心してからは金縛りに遭う事が無くなりました。


もう忘れていたことだったので、今回の金縛り怪談を聞いて思い出した話です。イベント終了後に伊勢さんにもお伝えさせてもらいました。

毛利さんの怪談じゃないですけど、何かをキッカケに思い出すことってありますよね。もし金縛りの話を思い出した方はぜひ伊勢さんにお寄せください!

ソワっとが嬉しい怪談イベント

終演後の語り手5人

座談会後半は「怪談の醍醐味はソワっとした話!」と毛利さんが切り出しどんどんソワっとした恐さを味わっていきます。外は真夏の暑さと夕立の湿気でバテそうな程ですが、このライブハウス秘密の中は怪談によるヒンヤリ感が体感できるオアシス!心も肌さえも潤います。

ここまで読んでくださった方にはもう伝わってると思いますが、一部分でも感想がこれ程長くなるぐらい濃厚なんです!実際に語られた怪談はまだまだあって、底なしのようなネタの数々に驚きます。約2時間のイベントでしたが体感10分じゃね?というぐらいあっという間です。

実は私、生の怪談イベントは今回が2回目。普段は配信ばかりでした。もちろん配信も充分楽しめますが、生のイベントによるソワっと感は格別ですね。音楽ライブとは違った病みつき感が怪談ライブにはあります。
終演後も出演された方がお話を聞かせてくださったりと満腹度200%のイベントとなりました。ぜひ!ぜひまた次回開催もよろしくお願いします!!

オオタケさんはこちらのライブハウス秘密で定期的に「秘密の怪談BAR」としてオープンマイク有の怪談イベントもされています。私もまた鹿児島から遠征して行きたい!私も怪談話したい!!!

この面白さとソワっと感を味わいたい方はぜひアーカイブからご視聴ください!怪談サイコ~~~~~!


この記事が参加している募集

#イベントレポ

26,232件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?