【怪談イベントレポート】「怪奇も過ぎれば毒になる」大阪 ~オープンマイクから得た毒の正体~
2023年9月9日。
まだまだ夏の暑さが肌に張り付く日に私は大阪へ向かいました。そう、注目の怪談師が集結しオープンマイクもあるイベントが行われるから!
遠征してでも味わいたい禁断の毒。そんな「怪奇も過ぎれば毒になる」で体験した感想を綴ります。過ぎたる怪奇を浴びる事で得た毒の正体とは何なのか。怪談にどっぷり魅了されたイソノが解き明かしてみました。
配信無し口外禁止のクローズドイベントを、アウトギリギリラインでお伝えしちゃいますよ〜!
※本文に入る前に※
今後様々なレポートや探訪記を書きたいため一眼カメラを導入しました。しかし!始めたての不勉強のあまり良い写真が全ッ然ありません!その中からどうにか厳選して掲載しておりますが、写真がド下手過ぎる点につきまして皆様大変申し訳ありません。今後もっと頑張りますm(__)m
黒門カルチャーファクトリーへ潜入
大阪の地に降りたのは4年ぶり。コロナが大ニュースになり始めた2019年頭に訪れたのが最後です。それまではよく音楽フェスを目的として来ていましたが、考えてみるとじっくり大阪の街を歩くのはほぼ初めて。そんな事を思い出しながら日本橋を歩いて行きます。
向かったイベント会場の「黒門カルチャーファクトリー」様は一風変わったイベント会場でした。レンタルスペースやスタジオと認識していたのですが、コンクリート造りの入り口から地下へと誘われる階段はいかがわしい施設へ足を踏み入れたようなドキドキ感があります。
秘密基地のような場所へ降りて行くとなんだか異世界に迷い込んだような空間が!なんとも怪しい洋館といった雰囲気で、今から殺人事件でも起こりそう…なんてワクワクな演出をしてくれます。
会場入りした時点でまあ緊張していたため最後の最後で知ったのですが、奥の本棚が隠し扉となりライブ会場へ続いていたんです。何ともグッと来る作り!気づかないなんてもったいなさ過ぎました…。是非皆様にも足を運んで体感していただきたいです。
ちなみに黒門カルチャーファクトリー様は色々な活動者を応援する場所として営業されています。身近にこういった場があると夢や目標の実現に一歩も二歩も近づけられるので羨ましい!!オーナー様は一見コワモテに見えるもののとてもお優しいダンディな方でした。「好きに正直に生きたい!」という方には必見の場所です!
何だかおかしな雰囲気のイベント
入口を入ってすぐはバーカウンターもあり温かみがある落ち着いた雰囲気。しかし実際のイベント会場は無機質さを残したさらに妖しい空間だったんです!怪談イベントに持ってこいだ~!
その奥で開演までのBGMとして今回出演者である武田鳴さんがピアノを弾いていらっしゃいました。事前告知で「ピアノを弾く」と聞いていたので「キターーーーー!」と初っ端から興奮!鳴さんが弾くピアノは、ただ指先から音を鳴らしているというわけではなく鳴さん本体が旋律を纏って表現しているという感覚でした。こういった演出を体感できるのも、黒門カルチャーファクトリー様にピアノがあり武田鳴さんのサービス精神のおかげです。大変ありがたい。
そんなわけで開演前から会場はドキドキわくわくの高揚感に包まれています。ピアノのBGMによるものプラス、やはりオープンマイクが控えていたからではないでしょうか。かくいう私もこの時点で少し緊張していました。
そうして18時ちょうどにイベントがスタート。会場内はほぼキャパいっぱいにお客さまが座っていました。
「どんな怪談が聞けるのか?」「クローズドイベントだからきっとヤバイ…!」そんな期待がひしめくような会場内。しかしいざ始まってみると想像の斜め上を行く笑いの連発!
これは私個人が勝手に想像していた事かもしれませんが、会場の雰囲気やクローズドイベントという情報により重々しい怪談イベントになると思っていたんですね。ただ考えてみると、この3人の出演者で普通の怪談イベントになるはずがなかった!全く異なる個性のぶつかり合いに加えそれぞれの持つヤバさが際立つトークが繰り広げられていったんです。
主催者であるまことさんはこういった面白さが発生するのを見極めてイベントを組んだのか、と後から考えると敏腕過ぎるなと尊敬しかありません。
目が離せない3人の個性
ソファにどっしりと腰を下ろされ、いざ怪談が始まります。
この日最初の怪談を語るのは、京都の音楽家であり怪談師の武田鳴さん。
スクリーンを使い不思議な写真を披露され開始直後から会場を沸かせます。距離がギュッと近い事もあるからか、考察の声が客席からも聞こえます。そして面白いことに会場一体となってどんどん声が上がり、写真のおかしい点が次々に見つかるんです。開始10分程でヒートアップ具合が異常だと感じました。これは良い意味での異常です!
会場の異様な盛り上がりに比例するようにこの日の武田鳴さんは覚醒されていきました。イベントの感想ポストなどを見ていても鳴さんの狂気交じりな魅力にファンになったという方がチラホラいた程。
やっぱり良い声の方っていうのは素敵な発声による印象が初めに大きくついてきます。武田鳴さんも、その聞き取りやすく耳心地良い声から柔らかく可愛げがあるような印象を持つんですよね。その印象がふんわり入ったガラスの器を笑いながらカチ割ってくるような方です。最高です。
そんな武田鳴さんだからこそ奏でられる音楽がココにあります。
続いて語るのは、普段は東京で心理士をされている怪談師の佐伯つばささん。
今日のつばささんはクローズドならではのぶっ込み具合を見せてくれます。ここ最近ご自身の”ヤバさ”が露呈しているという噂があちこちで囁かれていると嘆かれていましたが…。ヤバさを段々とチラつかせる事で怪談界隈を虜にしていく計算された技なんじゃないかと私は思います。だって皆さん、どんどん佐伯つばささんの沼から抜け出せなくなっていますよね?そのヤバさを求めていっていますよね?もちろん私もそうです。
ちょうど1年程前に初めて怪談界を知ってハマっていったキッカケが佐伯つばささんでした。あの頃の印象から考えると怪物感が増し増しになっています。でもきっと、つばささんの怪談が好きな方々は恐らく初めの頃からこのヤバさを嗅ぎつけていたはず。だからもっと!もっとください!!
そういった怪談を語ってくださいました(?)。
もっとハマりたくなる佐伯つばささんの沼はコチラからも体感できます。
時空や空間の歪みが起きてる?と思うぐらいのおかしな雰囲気だったこの会。それを統制していったのが、3番目に語り出した関西の怪談師兼怪談作家のクダマツヒロシさん。
配信では何度も怪談を視聴してきましたが、普段はクールな方なのかな…と感じて実はご挨拶するのが少し恐かったんですよね。でも全ッ然そんな事ありませんでした!ファンサかもしれませんが、快く色々お話ししてくださる気のいいお兄ちゃんという印象。ああ、だからみんなクダマツヒロシさんの名前が欲しくなる程愛されてるんだなとすぐに分かります。(帰ってからイベント「クダマツヒロシ」をまた観ちゃいました)
お会いする前からきっとそうだと思っていた「切れ者」感を直で見せつけられるトーク。そしてこの流れで出してきた〇〇〇〇の話!会場内は笑いで溢れ盛り上がり方が「本当に怪談イベントか?」というぐらいでした。でもこれは後半に繋がる布石だったんですよ…。それは後ほど...。
クダマツさんと言えば文芸。語りとはまた違った顔を見せてくれる文章の数々がとても面白いんです。是非読んでいただきたい。
この後も「聞いたら怪異が起こるかもしれない?!」と言った不穏な話や、専門的視点から考察を挟まれたりと緩める事のない急発進のままイベントは進みます。
つばささんの独特な観点から成るコメントに考えさせられ、鳴さんがバランスを崩しにかかる姿に笑わされ、クダマツさんのキレッキレなツッコミで場をまとめるという凄まじい連携プレーでした。
前半は出演者3名が2話ずつ程語り1時間が経過。ここから後半戦ということでオープンマイクが始まります。
オープンマイクで初語り
「誰からオープンマイク始めるのか?!」その空気で皆さんがどうしようかと迷っている隙に手を挙げたのは、イソノコウヤ!私です!
鹿児島から遠征してきてますからね。語らずには帰れませんよ。という事で切り込み隊長をさせていただきました。
先日路上怪談で直での語りを経験したものの、イベントで直接聞いていただくのは今回が初めて。何の話にするか迷いましたがクローズドでしか出せない重ための話にしました。前半が笑顔なトーク多めだったので、せっかくなら雰囲気壊しに行ってみようかなと☆
私自身の蓋をしたくなるような厭で不思議な体験を、自分事として捉えられないから俯瞰して話している「親友のなっちゃんシリーズ」です。話に対して敬意を持ち真剣さを忘れず語る事を今回は意識できたと思います!
やっぱり人と顔を突き合わせて語るのって良いです。皆さんが前のめりに真っすぐな視線を向けて聞いてくださるのを見ながら楽しくてしょうがありませんでした。あーん、1話だけって足りない!
と、若干の物足りなさはあるもののこれがオープンマイク。控えていらっしゃる方々が沢山います。
この後は続々と語り希望の手が挙がります。神原めぐみさん、meRryさん、黒居ななさんと怪談師の方々が語りを繋ぐ中でどよめきが起こる話を語ってくださったのが怪談師ではないお客様。
これは凄かった!怖さよりも面白さ不思議さが際立つお話で、体験された身近な出来事だからこそのリアリティに惹きつけられます。「こういうのがオープンマイクの良さ!」と出演者3名も唸る程。
ひとりひとりが語る後には出演者が考察や繋がる怪談を挟んでくださり、会場全体で怪談を咀嚼していく状況が楽しすぎました。
5名が語ったところで、当初予定していた終了時間の20時に。しかしまだまだ語りきっていない方が多数…。
「延長します!!!」ということで一旦休憩を挟んで延長戦だー!
延長戦は2時間に及ぶ!!!!
延長戦開始前にサイン入りフライヤーポスターの抽選会が行われます。入場時に手のひらサイズのミニフライヤーが配られ、そちらに抽選番号が記載されているというもの。このミニフライヤーにも終演後サインを貰えるのでどちらにしろ美味しすぎて感謝しかありません!
そして本当の後半戦スタート。まだまだ語り希望の手が挙がる挙がる!
ここから6名の方が語られ、総合計11名の方がオープンマイクに参加されました。マイクを持つと皆さん緊張感はあるものの、楽しんで語っているのが分かります。そして気づいたんですよね。これだけ和やかな雰囲気でオープンマイクが進むのは、前半であれだけ笑いの渦を作ってくださった出演者3名の腕によるものだと!このために会場を温めてくださったんだ、と伏線回収に至ります。
後半では満を持して、東京の怪談師平一辰郎さんがオープンマイクに登場!なんでもたつろーさんは怪談イベントへのフッ軽度合いが凄まじいことで有名らしく、ここ最近何度も関西へ遠征されているそうです。自家用ジェット機で飛んできているなんて都市伝説があったり無かったり…。
この日は他にも遠方から来られているお客様が何名かいらっしゃり、それだけ価値が高いイベントであると分かります。
希望者全員が語り終わった頃には22時近くを迎えていました。なんと4時間ものイベントとなったんです。ほぼ全ての方が最後まで残っていて、着席スタイルとはいえ皆さんの体力と精神力が素晴らしい!それ程までに怪奇による毒に侵されているんですよね...。
毒の正体とは
「怪奇も過ぎれば毒になる」
まさに今回、長い時間の中でたくさんの怪談を浴びるように摂取した我々は毒に侵されたかもしれません。しかしこの毒とは、何か心身に害があるとかそう単純なものではないと思いませんか?
怪談に魅了されて怪談を聞きたい語りたいとなるのは、好きが高じた一種の中毒状態のようなもの。それは想像もつかない不可思議なことを見聞きすることで刺激を受け、知る喜びに脳が震え心がその気持ち良さに喜んでいるような状態だと思うんです。
確かにこれらをもたらす怪奇は毒と言って間違いないでしょう。だけど恐ろしい毒と言うものは一見なんでもないような日常にわんさか潜んでいます。私たちはそれらの毒に、怪談という毒を以て打ち勝とうとしているのかもしれない。まさに毒を以て毒を制するという事なのではないでしょうか。
私はまさしくその状態です。もちろん、ただただ楽しい面白いという気持ちも大いにありますがね。
体験した不思議な事を怪談として語って聞いてもらうのって、その当時の自分を肯定してあげているような感覚があります。「何も変なことじゃない大丈夫、それってすごい体験だよ」って。怪談が好きな方々というのは、不思議な出来事に寛大なだけあって懐が深い人ばかりです。もしあなたが思い出したちょっと変な記憶や不思議な出来事があれば、怪談を語っている誰かに話してみませんか?きっと心に新種の毒を携えるような面白い変化が見られるはずです。
遠征した甲斐があり過ぎる今回のイベント。配信が無いからという事に関わらず、現地へ足を運んで良かったと感じます。私自身が怪談大好きで、怪談師としても怪談ファンとしてもさらにこの「好き」を突き詰めたいと再確認できました。
それもこれも、まことさんが毎回趣向を凝らしたイベントを打ってくださるから!今後も大注目の怪談会が目白押しです。是非チェックしてください!!今後告知されるものもすんごいイベントがあります!!!
またこれからもっと多くの毒を得るべく私は怪談を楽しんでいきます。
イベントを通して交流してくださった方々、会場の黒門カルチャーファクトリー様、会いに来て良かったと幸福を与えてくれた推し怪談師の3名様、そして最高のイベントを開催してくださったまことさん!皆様本当にありがとうございます。