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今から五年前。僕は会社を辞めました。

僕は今からちょうど五年前に、大手出版社KADOKAWAを退職しました。
あの頃の僕と、今現在の僕はどう違うんだろう……ふと思い立ったので、また5年後、未来の僕とまた対比するために今現在の自分のことを書きたいと思います。


2016年の3月31日。僕は株式会社KADOKAWA(旧アスキー・メディアワークス)を辞め、そして本日4月1日より、今の会社ストレートエッジを立ち上げました。
そのときに書いた記事はこちらになります。
https://note.com/straightedge/n/n67c2b6cd4f30

せっかくですので、五年前に自分自身が思い描いたビジョンは結局どうなっているのか。今の気分はきちんとやりきっているのかを自己分析風にレポートしたいと思います。

まず五年前の記事で書いていたのは以下のような内容でした。

①社員編集者における『どうしても避けられない事情』によって『作家や創作物にとってのベスト』を尽くすことができなかったから会社を辞めた。
②Youtuberなどの台頭によって既存メディアは弱体の一途を辿る。
③作家がより大きな舞台で勝負するためのパートナー(編集者)を雇う時代が、当たり前に来る。
④自社で携わるコンテンツを世界で通用する最高のエンターテイメント作品に育て上げ、広く、様々な方々に伝えていきます。
⑤10年、20年と、創作者の皆様と共に歩める会社であることを心がけ、邁進する。
⑥最終目標は『マーベルエンターテイメント』のような存在になることです。

……やはり退職時のテンション高いままアップした記事ですからなかなか豪快なことを書いていますね……。

嫌な予感がしますが早速検証していきたいと思います。


①社員編集者における『どうしても避けられない事情』によって『作家や創作物にとってのベスト』を尽くすことができなかったから会社を辞めた。
→これは自分の中では、後悔のない、満足できる結果になったと思っています。今の会社では、『どうしても避けられない事情』はないですし、『作家や創作物にとってのベスト』な選択をできていると思います。ただし、これらは内部要因でそういう障壁がないだけであり、外部要因(例えば出版不況であったり、コロナ禍における発売延期や書店休業であったり)は依然として作家さんたちの悩みの種ですから、一緒に歩んでいきたいと思っています。

②Youtuberなどの台頭によって既存メディアは弱体の一途を辿る。
→これは半分当たって半分外れました。五年後の今、youtuberなどは芸能人やVtuber含めて、参入祭りになっていて大フィーバーですが、既存メディアは弱体していってるわけではないと思ってます。例えば今年は電子書籍の売り上げが前年度から約30%も伸びましたし、映画業界なら前人未到の興行収入400億円の作品が出てきたりしています。既存メディアも活路を見出しつつあるのだと感じています。

③作家がより大きな舞台で勝負するためのパートナー(編集者)を雇う時代が、当たり前に来る。
→これは明確に外れていますね……。例えば、大手出版社を独立した編集者が作家のエージェント会社をどんどん設立していった、というような話は全然聞きませんし、今も作家さんと出版社は良好なパートナーシップを構築しています。ただ、出版社の枠組みを超えたプロジェクト(スマートフォンゲームやオリジナルアニメーション)に作家さんが挑んでいくこと自体は増えています。そういう時の作家と開発チームをつなぐ潤滑油的な役割を担うプロデューサーは常に必要とされています。今までは映像プロデューサーであったりゲームプロデューサーでした。これからは、編集者が担う……かもしれません。あと五年後には!!

④自社で携わるコンテンツを世界で通用する最高のエンターテイメント作品に育て上げ、広く、様々な方々に伝えていきます。
→これについては、手前味噌ではありますが、一定の成果は出せたと思っています。ただ、それは今までずっと展開してきた『SAO』や『とある魔術の禁書目録』といった既存コンテンツばかりでして……。これからは、既存コンテンツだけでなく、SEオリジナルの、新しいコンテンツを世界に広げていくことも目指しています。なので、半分成功、半分失敗、というところでしょうか……。

⑤10年、20年と、創作者の皆様と共に歩める会社であることを心がけ、邁進する。
→年数的にはまだ検証はできないわけですが、五年経っても会社が存続していたことをまずは安堵しつつ、そして創作者と共に歩む会社にも、なっていると思っています。これをあと五年続ければ十年。十五年続ければ二十年です。だったら、楽勝かな!

⑥最終目標は『マーベルエンターテイメント』のような存在になることです。
→なんだろう、あの時は酔ってたのかな……自分に……。でも、これは、この気持ちは、今でも持っています!! ほら、目標は高く設定しておかないと、低い目標の夢が万が一叶ってしまったら燃え尽き症候群みたいになっちゃうじゃないですか! そういうアレです!! でも五年前って、『アベンジャーズ エンドゲーム』も公開してなかったのにマーベルが最強だったんですよね……これからもそうかもしれないですが、絶対にこの目指す目標は高いままで行きたいと思います!! なので未達……ですが、それで構わない、これからも挑み続ける!のです。

■総論

6つ項目があったので一つ約16%の進捗ポイントと仮定して……①16ポイント、②8ポイント(半分達成)、③0ポイント、④16ポイント、⑤8ポイント(半分達成)、⑥8ポイント(意気込み)ということで、合計は、

56%の達成率!!!

なんとか半分超えた……!! 大学なら赤点だけども……!!!!
退職エントリは大言壮語なものですから、お許しください!!

そして以下、もっと細かいところもまとめてみました。



■五年前→現在 変わったこと


【社員数】 1人→14人 
【契約作家数】 7名→23名
【オフィス】 知り合いの家を間借り→市ヶ谷に広々スペース!
【取引先】 1社→12社
【作品数】 9作品→50作品以上
【メディアミックス実績】 アニメ8本、ゲーム(CS&アプリ)8本、コミカライズ多数、生放送チャンネル3つ、ワーキンググループ1つ

などなど、様々な変化があり、自分も成長できました。
これから、この数字をもっともっと増やしていけるように頑張りたいと思います。

そして一方、『変わらなかったこと」もあります。
それは、
『創作は人との繋がりであること』
『創作とは、「これ面白いだろ!!」という想いを送り届けたいという心』
『作家と編集は、夢を追いかけるチームであること』

です。

つまり、何年経っても、エンターテイメントとはプリミティブな体験欲求は変化はないということです。
ただし、『それを送り届けるための手段』は大きく変わっていっています。DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応し、次代の娯楽体験を提供する、その施策や作戦、戦略を考えるのが作家や創作物に寄り添う編集者の役割だと思っています。これからも、この気持ちは忘れないようにしたいと思います。

いかがだったでしょうか。
五年というちょうどいい区切りのタイミングで、過去を顧みてみました。
達成率半分という現状に不甲斐なさを感じるのですが、まだまだこれからと言うことでもある、と前向きに捉えたいと思っています。

もう5年とも思えるし、まだ5年とも思えます。
長いようで短かかったこの期間を、すこし時間が経った後に思い返してみると、あの時の経験が礎となり、自分が成長したことを自覚できたりもします。その成長の成果、結果は、これからの頑張りと進みゆく時間のよって証明していくつもりです。

ところで。
実は今日2021年4月1日は、僕の独立5周年記念日でもありますが、もう1人の編集者の記念日にもなりました。

今日、5年前の僕と同じように、大手出版社を退職し『一人の編集者』として大海原に旅立った人間がいます。

その編集者とは、高橋裕介という人物です。
昨日までは大手出版社の新潮社で新潮文庫nexを統括する立場であった人間が、今日から、ストレートエッジに入社します。

新潮文庫nex在籍時に編集をしていた作品と作家さんもストレートエッジで扱えることになりました。
具体的には、
・河野裕(『いなくなれ、群青』等)
・知念実希人(『天久鷹央の事件カルテ』等)
・竹宮ゆゆこ(『砕け散るところを〜』等)
他、何人かの作家さんのマネジメントと作品の拡張をやってまいります。とくに、海外翻訳営業を今後はどんどんやっていきたいと思っています。

彼の退職についての信念と、今後思い描く、小説家との未来をつづったnoteがちょうど公開されています。五年前の自分と同じように、自分を鼓舞するようにとても熱いメッセージが綴られていますので、もしよければぜひご覧ください。

https://note.com/tkhshy6083/n/n0d0d4c22f8d6

自分自身が五年前に歩んだ道を、今同じように歩み始めた彼を、僕は心から応援したいと思っています。そうして、彼と共に歩む作家さんにも、最高のバックアップをストレートエッジでしていきたいと思います。

たくさんの作家さんと、いろんな仲間が増えていくストレートエッジを、これからもよろしくお願いいたします。

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