エージェント会社ストレートエッジコラム第一回『ちょっと今から会社やめてくる』

■noteはじめました!

まずは自己紹介から。前職は小説の編集者をしていました、三木一馬と申します。

2016年3月31日をもって、株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局を退社し、新たに作家のエージェント会社『ストレートエッジ』を立ち上げました。

最終職歴は電撃文庫編集部編集長、電撃文庫MAGAZINE編集部編集長です。

2000年に上智大学理工学部を卒業後、現KADOKAWA、旧メディアワークスに入社。以来、16年にわたって小説の編集に携わってきました。

主な担当作は、『とある魔術の禁書目録』、『ソードアート・オンライン』、『灼眼のシャナ』、『魔法科高校の劣等生』、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』などなどです。

僭越ながら、歴代担当作品は約500冊に及び、累計部数は6000万部を突破しました。

去年はその軌跡と、小説創作のノウハウ本を執筆させていただきました。

『面白ければなんでもあり』

このたび、独立して新会社をつくったのは、これだけはしっかりお伝えしておきたいのですが、元の会社とケンカ別れをしたとか、ウマが合わずに離脱したとか、横領がバレてクビになったとか、そういったことではありません。

自分が今できる、今だからこそやらなければならないことを、一度しかない人生だからこそ、勝負してみたいと思ったからです。


■未来の編集者の仕事とは、『媒体を編集』することである。

編集者の仕事とは、なんでしょうか。僕はこう考えています。

作家と共に歩むこと。

そこから生み出される創作物を手助けすること。

生み出された創作物の価値を最大限に高める努力をすること。

そして、価値を高めた創作物を、より多くの読者に、大きく、広く届けていくこと。

漫画家志望者へのハウ・トゥー・コミック『ヘタッピマンガ研究所R』(村田雄介著、集英社刊)では、『創作』という行為についてこうなぞらえています。

――“面白さ”を探し求めるというのは、真っ暗闇でコンパスも何も無いところを彷徨うことに似ている。

――手がかりのない真っ暗闇の道の中、遠くに輝く光を目指し、ただ自分を信じて前に進む。

過酷で不安だらけの旅において、自分を信じて前に進み続けるためには、並々ならぬ意志の強さが必要です。本当にこの道であっているのか、進んだ距離が無駄にならないか、そもそも自分に向いているのか……葛藤と疑心しかないこの一人旅において、隣に立ち、寄り添い、共に暗闇を歩む、そんな存在、編集者に僕はなりたいのです。

しかしながら、理想はそうであっても現実は異なります。編集者は会社員でもありますから、所属する会社(版元の出版社)の利益を追求しなければなりません。

様々な業務をこなす中で、編集部の都合や上層部の指示を優先するときがありました。そんな『避けられない事情』によって、『作家や創作物にとってのベスト』を尽くすことができなかったのは、一度や二度ではありません。

既存のメディア企業が誇っていた『メディアの優位性』はすでに弱体の一途を辿っています。

IT化によって『You tuber』『ニコ生主』など個人ですらもメディア(媒体)となる今、既存メディア企業の既得権益はますます少なくなっていきます。 iTunesなどの音楽の定額制配信サービス、amazonやNetflexなどの映像配信定額制サービスなどによって、コンテンツはプラットフォームに呑み込まれ、安く買い叩かれていくでしょう。

今の市場は、『娯楽はタダ同然と考えるお金をかけないユーザーたち』を囲い込んだプラットフォーム企業が支配しています。そして、 『ユーザーのランキングが売上げと面白さを決める』というトレンドがエンタメ業界を席巻しています。このようなコンテンツに厳しい現状の中では、既存の編集者では太刀打ち出来ません。

これからの編集者は、作家と二人三脚で作品作りをしていくこと……は、もちろん当然として、今の業界に縛られた作品展開を打開していく必要があります。

たとえば、日本のプロ野球選手がメジャーリーグに移籍したいとき、できるだけ有能なエージェントを雇いたいと考えます。それと同じように、作家がより大きな舞台で勝負するためのパートナー(編集者)を雇う時代が、当たり前に来る、と僕は考えています。

作家は魂を削って作品を創り上げています。その魂の作品に寄り添い、親身かつ客観的に意見を伝え、価値のある打ち合わせを提供し、より“面白いほう”を目指してクオリティを上げる。そうして作りあげたコンテンツを、『作品第一主義』で考え最大限にプロデュースしていく機能をもった会社、編集者になりたいと思っています。

そのためには、IT化により無限に生まれつつある『媒体』を有効活用することが不可欠です。

その作家/コンテンツに適合したベストなパートナー、ベストな宣伝施策、ベストなファンサービスを、無限にある媒体から選択し、速やかに、細やかに実行する……。

つまり、『媒体を編集する』のです。

それが、未来の編集者に求められていることだと考えています。


■社名の由来。

社名である『ストレートエッジ』とは、『直定規』という意味です。

暗闇の中を歩く創作者の皆様の進むべき目印となれるように、定規というガイドラインに沿って迷わずまっすぐと、目的の地へたどり着けるように。そんな意味を込めて、社名としました。

すこしでもその手がかり、道標となるべく、創作者の皆様と作品、コンテンツに寄り添うことを心がけ、全ての皆様に『幸せ』を届けることを目指し、実現して参ります。

携わるコンテンツを、世界で通用する最高のエンターテイメント作品に育て上げ、広く、様々な方々に伝えていきます。

10年、20年と、創作者の皆様と共に歩める会社であることを心がけ、邁進してまいります。


■将来の夢。

僕の青春時代の大人気コミック『YAIBA』(青山剛昌著、小学館刊)の中で主人公のヤイバがこういってました。

「夢っていうのは、なかなか叶わないから夢っていうんだぜ」。

なので僕もここで、なかなか叶わない夢の話をしておきたいと思っています。

僕の会社はまだ発足して数日しか経っていませんが、最終目標だけは決まっています。

僕の最終目標……『夢』は、今現在、エンターテイメント業界でもっともメジャーで広く知れ渡り、もっとも売り上げも大きいであろう『マーベルエンターテイメント』のような存在になることです。

『マーベルコミックス』から生まれた、たくさんのスーパーヒーローたちが映画やドラマ、ゲームやグッズ、あらゆるメディア、商品となって全世界で楽しまれている、そんな最強コンテンツを作家とともに創り上げたいと考えています。

より広く、より多く、たくさんの人たちに、『面白い』と『幸せ』を届けたい、それが最終目標です。

大変悔しいのですが、現在の最強コンテンツ、もっとも世に『面白い』と『幸せ』を届けている企業は『マーベル』(親会社的にいうと『ディズニー』ですが)だと思います。

ですが、日本のコンテンツだって、まっっったく負けていません!!

僕は『日本のコンテンツ』で『マーベル』を抜きたいです。

その最初のスタート、第一歩が、この会社なのです。

これから、noteに様々な業務日誌、動向を書かせていただきますので、よろしければお付き合いくださいませ。


■今日のストレートフォト

母校である上智新聞のインタビューを受けました! まったくの落ちこぼれだったのに世の中なんとかなるものだ! なのですが、編集者たちにお詫びです。この新聞の発行日、4月1日なので、もう僕は会社を辞めていますので肩書きが間違っています……本当にすみません……。



■おまけ

記念すべき第一回のnote、タイトルの由来は、我が編集部が発行するメディアワークス文庫のヒットタイトルを引用しました。面白いので読んでみてね。




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