【グッドプラン・フロム・イメージスペース】 Episode.1 「ジョーカー スマイル」 Last Part (No.0038)
チケットはすぐに完売しました。
たった一夜のイベントですが、彼には夢だったのです。
「ああ良かったああ良かった。」
満員の会場のソデでジョーカーさんは泣いてました。
色々あったのに、今は胸に喜びしかありませんでした。
生演奏が鳴り出すと、彼はいつもの素晴らしい笑顔で登場しました。
拍手喝采で観客はすでに満面の笑顔でした。
その溢れる愛が場内を包みます。
ジョーカーさんは両の手を広げ、皆のくれる愛を全て受け止め続けました。
彼の顔にはさっきソデで溢れていた涙はもう一切ありません。
「ぜったいに見せないんだ。」
ジョーカーさんは溢れていた涙を全て心にしまい込み、こうして自分の為に集まってくれた皆には笑顔だけをあげたいと決めていたのです。
ひとり会の時間、全てが愛に溢れ家族連れも、カップルも、学生たちも、一人の人も、そして彼にアパートの保証金を貰ったり治療費を貰ったりご飯を貰ったりした人達も、皆ずっと幸せでした。涙なんて、もうありませんでした。
いえ、一人だけいました。
会場の隅っこ、警備員よりももっと隅に、影からそっとジョーカーさんを熱く見守る人だけは涙が溢れてました。
バットマンさんです。
ずっとずっと、この二年間ジョーカーさんを心配していた彼だけは、もう涙が止まりませんでした。
「良かったんだ。良かったんだ。」
バットマンさんは周りの人に涙を見られない様に一生懸命に気づかいました。しかしジョーカーさんのパフォーマンスを観て笑っては、彼の胸にはこの二年間の、いえこれ迄のジョーカーさんの苦しい頃の人生も含めた全ての気持ちがやって来てしまい、すぐに顔が崩れ涙が流れてしまうのでした。
ひとり会が最高の時間のまま無事に終わりました。
次の日からジョーカーさんは、自分の活動を内緒にするのを辞めました。
そしてジョーカーさんは街の全ての人に変化を与えました。
その日からゴッサムシティは変わりました。
街の人たちがジョーカーさんの真似をして人助けをし始めたのです。
もう誰も自分の為だけに生きるのを辞めました。
余分なものは全部足りない人にあげました。
お金持ちも真似を始めました。企業もその為にたくさんの手伝いを始めました。
すぐに闇社会の人達も影響され、組の看板を外しました。
そして改めてお花屋さんの看板をかけました。
全てのマフィアはお花屋さんとなり、街中に花を飾りました。
そして金融業者も変わったのです。
虚業で稼いでいた銀行の支店長も、その街の変化に愛を受け、かつてはジョーカーさんに向けたショットガンも捨てました。
彼は家に帰り、家族に銀行を辞めてパン屋になる事を話しました。
高価な車もスーツも処分して、小麦の農家さんと安全な小麦の取引を契約して健康的な全粒粉のパン屋さんを夫婦で始めました。
たくさんたくさん焼きました。そしてわざと余らせて残ったパンは全部人に配ったのでした。
奥さんはわざわざスープを作ってパンを一緒に配ったのでした。
その姿を彼の子どもたちはそれは美しい笑顔で見つめたのでした。
かつては「闇の街」と呼ばれたこの街は、いつしか「花の街」と世界中で呼ばれるようになり、街の名も「ゴッサムシティ」から「グッサムシティ👍」と変わりました。
いつしかジョーカーさんもスマイルさんと名前を変え、いつまでも愛を人々に与え続けたのです。
これは、小さい小さいコーヒーテーブルが生んだ素晴らしい愛のお話なのです。
おわり
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