日本人の姓と名はどちらが先?【自治体職員のためのサバイバル英語術#2】
はじめに
自分の名前を相手に伝える。海外との交流は、自己紹介から始まるといっても過言ではないでしょう。
I am XXXXXX XXXXXX.
My name is XXXXXX XXXXXX.
これらの表現は、誰もが知るものですが、近年、少し悩ましい問題が起きています。(少なくとも筆者はそう認識しています。)それは、"I am" や "My name is" の後に続く、「姓」と「名」の順番です。
日本人名のアルファベット表記
日本人名のアルファベット表記は、歴史上の人物の場合、「姓-名」が適用され、例えば「豊臣秀吉」は、日本語と同じ語順のToyotomi Hideyoshiと表記されることが一般的です。
ただ、明治時代の欧化政策により国内外で定着したのは、欧米風の「名-姓」でした。「大谷翔平」ならShohei Ohtaniと順番を逆転させる方法で、誰しも一度は見たことがあるでしょう。
国の公用文は「姓-名」で決着
しかし、国内では時を経て自国の文化や伝統を尊重する機運が高まります。2000年12月、国語審議会は「国際社会に対応する日本語の在り方」を答申し、日本固有の「姓-名」の順が望ましいとしました。
さらに、2019年10月の関係府省庁申合せで、国の公用文は「姓-名」の順で表記することとなり、2020年1月から運用が開始されています。「申合せ」なので、法的拘束力はありませんが、国としての方針はひとまず決着したということとなります。
海外報道機関は「名-姓」のまま
この申合せに先立つ2019年5月21日、当時の河野太郎外相は次の方針を表明しています。
それでは現在、海外報道機関は日本人のローマ字表記を「姓-名」に変更しているのでしょうか。主要英語メディアで岸田夫雄首相がどのように表記されているか、筆者がまとめたのが下表です。
ご覧のとおり、主要なニュースサイトでは、岸田文雄首相は全てFumio Kishidaでした。つまり、日本国としての方針とは裏腹に、海外報道機関は「名-姓」のままです。
ここから言えるのは、メディアにとって、長年に亘り定着したものを変えるのは、難しいということ。The Japan TimesやThe Japan Newsなど日本に拠点を置く英字紙でさえ「名-姓」を使い続けていることを考えると、そもそも変える必要性を感じていないのでしょう。
結局のところ、どうすれば?
以上の「理想」と「現実」を踏まえると、自治体職員としては結局のところ、どうすれば良いのでしょうか。
自らの勤務する自治体が国の方針に倣って既に「姓-名」を採用している場合、当然これに従うこととなります。また、仮に所属する自治体が明確な方針を持っていなくても、国の方針に準じるのは一定の合理性があると言えるでしょう。
ただ、海外の相手方が混乱するのは避けなければなりません。そこで、筆者は次のように対応しています。
①文字情報では姓と名を峻別する
公用文は勿論のこと、Eメール、名刺など文字情報については、姓と名を明確に区別させるために、姓を全て大文字とします。この方法は、前出の関係府省庁申合せでも推奨されています。
②口頭では姓や名に関する情報を提供する
自己紹介の時は、相手が混乱しないよう、できる限り姓や名について情報を提供するようにします。山田春子さんの場合、次のような感じです。
I am YAMADA Haruko. Please call me by my first name, Haruko.
My family name, YAMADA, is pretty common in Japan.
おわりに
今回は、意外に悩ましい「姓」と「名」の順番についてお伝えしました。
日本国内の文化や伝統を尊重し、自国の「姓-名」の順を大切にすることが望ましいですが、海外との交流では相手の混乱を避けるため、柔軟に対応する必要があります。自己紹介では相手が混乱しないよう、姓や名について情報を提供する工夫をしましょう。
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