【古事記まとめ&ツッコミ09】ウサギ、海を渡る

因幡(いなば)のシロウサギ

隠岐の島(おきのしま)という離島に住んでいたウサギさん、ある時、本州の気多の前(けたのさき)に渡りたくなったけど、渡し船もないので、どうしようと思ってある工夫を考えます。

その方法はワニをダマして海に橋をかけるというズルい方法でした。

ウサギはワニを呼んで

「お前の一族と、私達の一族と、どっちが一族の数が多いか比べてみようじゃないか。」

「私がワニさんの頭の上を踏みながら、数えてあげるから、
ワニさん達は、ここから向こう岸まで順番に並んでみておくれよ。」

と言いました。

するとワニの一族がこちらの岸から向こうの岸までずらっと並びました。


ウサギは


「1、2、3・・・」


と数を数えながらワニを踏み台にして向こう岸へ渡っていきます。

ところで、もう向こう岸につく直前に、うまくダマせたのが嬉しくてついつい、「一族の数を数えるなんてウソだよ。向こう側に行きたかっただけだよ」と叫んでしまいます。

するとたちまち、ワニがうさぎにかみついて、ガブリとウサギの着物(毛皮)をはいでしまいました。

その後、ケガをして倒れていたウサギは、通りすがった悪い神様達にケガの間違った治療法を教えられ、さらにひどい目にあわされます。

が、あとでやってきたオオクニヌシに正しいケガの治療法を教わり、

「あなたはヤガミヒメと無事に結ばれるでしょう」

とオオクニヌシに予言を与えて去って行きます。

ツッコミ

動物に幸せの予言をもらってるオオクニヌシのラッキーボーイぶりはさておき、「最後まで気を抜いちゃダメですよ、ウサギさん」という話ですね。

ところで、この話の「ワニ」がどんな生き物については、実は解釈が2パターンあります。

ワニだからワニだろうとずっと思っていたのですが、このワニは海のサメのこととして解釈される場合と、クロコダイル(ふつうのワニ)として解釈される場合とがあるのです。

ワニ=サメ(海の)説は、山陰の方言でサメをさしてワニと呼ぶ地域があることなどが理由でそれなりの説得力はあります。

ただ、ここの物語でのワニは、背中にウサギをのせるので、クロコダイルとして解読するほうがリアリティーがあると私は思います。


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あ、そうそう、ワニって川のイメージがある人もおおいですが、海を泳ぐワニ(海生ワニ)は現実の世界に実在します。1億3000万年前の時代には10メートル級の巨大なワニが海を泳いでいたようです。(マキモサウルス・レックス)

また、50万年前~30万年前のワニ化石は日本で発見されており、古事記の神話に出てくるトヨタマヒメ(正体はワニとされる)にちなんでトヨタマヒメイア・マチカネンシス(Toyotamaphimeia machikanensis)と名付けられたそうです。

現代だとインド南東部~インドネシア~オーストラリア北部に生息するイリエワニというワニが海生です。

この辺

・現代の日本海にワニがいない→神話時代もいないはず

という前提で見てしまうのは、スケールの狭い話だと思います。


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