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救い難き人。ー赤松利市の世界観ー差別の生み出す地獄の世界

  ネタバレ無しとは行かないかもしれない。
まず、冒頭から「朝鮮人」を連呼するかと思えば性描写も多く、闇の世界の残虐な死闘も描かれるため、全年齢とはいかない。首絞めSEXという文字だけでなく、絵がないだけで、言葉の描写が丁寧故に、世界に呑まれて読み終わってからも呆然とした━━━━━━━━━。




   AVは見ないし、直接的な性描写が苦手な大人の私は、子供も産んでいるので生娘のような事はいわない。いわないが、軽く電話帳、いや電話帳が主流じゃないので、辞書のような厚みの書籍を、読むのに時間がかかるかなと思ったけど、読み始めたら3時間で読み終えた。


   まず、「在日朝鮮人」が日本でどんな目にあったとのかということだ。主人公がどんな待遇化で生きたのか。


  それはもう、目を当てられない。そしてそんな残虐な行為を目の辺りにし、体験し、トラウマになりつつ、逆らえば「死」の恐怖を与えられ、「復讐」に燃えて、権力を得て金を得て、最後どうなるのか、ということである。



   真っ当な愛情が、そこには、ない。


 


 どこかで、この主人公が「愛情」をうけてきたら、無償の愛を、親からでなくてもいい。誰かから気にかけたらまた違ったかもしれないという事だ。



  そして物語を通して私が感じたことは「差別」がどうしようもなく、相互に憎しみや悲しみ怒りを生み、相互にそれがイジメや更なる差別を産むということだ。



  日本人が朝鮮人を差別し、朝鮮人が日本人を差別し、虐められ、自由なく奴隷のようになって、その先に繰り返し、お互いに同じことをしてしまう。闇を生きるものは、弱肉強食で殺られる前に殺るだけで。リスクヘッジしていく。そこに甘さは、ない。光の世界と闇の世界、表の世界と裏の世界それぞれのルールの中を泳いでいく。魚のように。



   それを、一気に書き上げている、というか。まるでなにかに憑依されたかのような、文体が、小難しい文学小説のそれではなく、勢いと感情に任せて筆を走らせた、とでもいうか。



  書道で言うなら一筆書きした文字のような、そんな作品で、文体が美しいとか、この言い回しがいいとか、そんなところは微塵の欠片もなく。荒々しい日本海のように、現実だけを叩きつけてくる作品でした。




  読み終わって、呆然とします。
  ああ、私の考えのなんと甘いことか。こういうことが、あるのだ暗闇の中で。もがく人と、交わらずに生きると、こういう作品を読んで疑似体験するのだ。


  主人公の人生を、読みながら体感していくというか。こんなことが起きていったら、我が身に、どうなる?


   どこかで軌道修正できた、だろうかと。


 人生というのは、ボタンをかけ違えると、直すことができないとそのままエンディングを迎えるのだと。


  なら、どうすれば良かったのだ、と。
考えるキッカケになるといい、と。

  ああ、だから「救い難き人」なのか、と。それは、誰だったのか、と。思った瞬間、お見事だと思った。

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