見出し画像

人生最大にして唯一の趣味を手に入れた日

小学校4年生のある日。私は親戚のおじさんとおばさんに連れられ東京へと向かった。おそらく晴れていた。

新宿のデパ地下で海鮮丼を買い、総武線に乗り水道橋駅に向かう。新宿から水道橋までは電車で10分少々。一つ二つと駅に停車するに連れて、何だか熱気がこもってきたように感じる。

「あの人も同じ場所に向かっているな」
私は心の中で呟いた。水道橋駅に着くと私の予想通り、その人たちは電車を降り、改札口へと向かう。

駅のホームへと降り立った人々が同じ目的を持って歩いている光景に自然と胸が高なった。改札を通ると交通整理が行われていて、赤信号でも横断歩道を渡ることができた。「東京ってすごい」と勘違いをした。

橋を渡り、馬のオブジェを左目に進むとついに見えた。

「東京ドーム」だ。


巨人対ヤクルト
これが私が初めてプロ野球を生で見た試合である。

テレビ中継では何度も見てきた東京ドームにこれから足を踏み入れる。知らない間に私の頭の中では、仮装東京ドームが出来上がっていた。

しかし、そんな私の仮装東京ドームは一瞬にして覆させられる。

回転扉を抜け、気持ちを落ち着かせながら目線を上げると、鮮やかな緑色をした芝生が見えたのだ。衝撃的だった。

私の中の仮装東京ドームは、回転扉を抜けてしばらく歩いた先にグラウンドがあった。回転扉を抜けてすぐグラウンドが見えるなんて想像もしていなかった。

回転扉を境に異国の世界に足を踏み入れた気分だった。

ドーム球場独特のモヤッとした空気感も新鮮だった。物珍しいものばかりで、「瞬間最大情報量」は過去一だった。

気づけばあれから10年以上の時が流れた。あの時の衝撃に今もなお、魅了されている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?